定価2,640円(本体2,400円)
発売日2025年5月26日
ISBN978-4-7917-7714-3
世界の見方を広げるための九つの科学講義
「「科学的」とはどういうことか」という問いかけから、松尾芭蕉が天の河の美しさを詠んだ俳句の考察まで。わたしたちの生きる世界にある大小さまざまな事柄を科学の視点から捉え直す。
[目次]
はじめに
第1話 新しい博物学とは?――「文系知」と「理系知」を結びつける
自己紹介(私の人文学へのアプローチ・「科学知」と「人間知」・新しい「博物学」)/文学+科学=人文学/寺田寅彦――人文学的発想の科学者/江戸の「科学」――人文学的科学の展開/文明を見直す
第2話 「国語」で事物をくくるとは?――諸科学を結ぶ言葉の役割を考える
言葉のはじまり(言葉の「はたらき」の広がり)/国語という科目(高校生と「言葉」・「新しい博物学」と国語教育)/科学教育のささやかな試み(教育者に求めたいこと)
第3話 「科学的」とはどういうことか?――日常に科学を見つける
「科学的知見」とは――「黒い雨訴訟」を巡る三つの疑問(「科学的知見」と言われても・「科学的知見」のチェックポイント)/「科学的」ではない議論とは?(「科学的」でない議論の背景・「科学的」である条件)/「文化」とは何か(科学は「文化」であるという意識・文学、映画、マンガにおける科学のイメージ・「科学的」であるためには倫理が問われる)
第4話 「教養」ある人の科学とは?――論理性と想像性を結合する
「教養」とは何か?(「教養」の始まり・大学とは何か?)/科学の持つ力(なぜ科学を学ぶのか?)/科学には二つの側面がある(科学の社会的受容――効用vs弊害・科学の社会への役立ち方――経済vs文化・科学の使用形態――民生vs軍事・科学の対象――単純系vs複雑系)/複雑系の特徴(複雑系とどう付き合うか?)
第5話 「時間」は客観的な指標なのか?――歴史が刻んだ時の歩みを点検する
時間のアレコレ/芸術作品の時間/科学の時間(物理時間・生物時間)/体重と寿命の関係(動物の体内時計・植物の体内時計)/なぜ、年を取ると時間が短く感じるのか?/「すすむ」時間と「めぐる」時間(ラセン状の時間)
第6話 科学者はなぜ「神」に反抗するのか?――神と科学の相性を探る
科学者と神(「神」の称賛・アインシュタインにとっての神)/科学の歴史と「神」の変遷(世界を律する唯一の神・神から独立する近代科学の始まり・神に反抗する悪魔の登場・神と悪魔のあいだ・サイコロ遊びをする神・神は「賭博師」)/宇宙論における神の変遷(神が創りし宇宙・神の二つの顔――東洋と西洋の神・宇宙はフラクタル・無数の宇宙の無数の神・神は一つか? 多数か?・私の研究過程で予感した神)/科学と芸術の共通性・相補性/人間は全てを知りつくせない(神と訣別する処方箋・神と調和する処方箋)
第7話 科学による「人類滅亡」はあるのか?――人間の野放図な振舞いを省みる
「種」とは?(「種」の絶滅・人類の絶滅?)/第六の大絶滅(地球環境問題・戦争技術の拡大・資源獲得競争・遺伝子改変技術・新型ウイルスの出現・一様化した人類)/人類絶滅の危機を招かないために
第8話 科学者の「歴史の見方」とは?――播磨国の歴史から私の歴史散歩を試みる
播磨の地政学(播磨という土地柄・古代の播磨・播磨という土地・播磨の三つの抗争・稲作と鉄器・播磨の慎ましい女性と逞しい気性の女性・民俗芸能が豊かな播磨・播磨人気質・権力関係からの播州人気質の変転・「かちん染め」の話)/科学と歴史を考える(「文化の波及」を辿る民俗学・「非・常民」としてのハンセン病患者)
第9話 三〇〇年前の天の河は特定できるのか?――芭蕉と越後と天球の回転
「荒海や 佐渡に横たふ 天河」(『おくのほそ道』の原文・曽良『奥の細道随行日記』の記述)/「荒海や」を詠ったのは何処か?(直江津説・出雲崎説・両案の折衷と残る問題)/実際に、天の河は佐渡に横たわって見えたのだろうか?
あとがき
[著者]池内 了(いけうち・さとる)
1944年、兵庫県生まれ。総合研究大学院大学名誉教授、名古屋大学名誉教授。専門は宇宙論、科学技術社会論。世界平和アピール七人委員会の委員でもあり、長年にわたり科学者の立場から平和を呼びかけ続けている。『お父さんが話してくれた宇宙の歴史(全4冊)』(岩波書店、1993)で産経児童出版文化賞JR賞、日本科学読物賞を、『科学の考え方・学び方』(岩波ジュニア新書、1997)で科学出版賞(講談社)、産経児童出版文化賞推薦を、『科学者は、なぜ軍事研究に手を染めてはいけないか』(みすず書房、2019)で毎日出版文化賞特別賞をそれぞれ受賞。そのほかの著書に『ふだん着の寺田寅彦』(平凡社、2020)、『寺田寅彦と現代 新装版』(みすず書房、2020)などがある。