行為する意識

-エナクティヴィズム入門-

吉田正俊、田口茂 著

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行為する意識

定価3,300円(本体3,000円)

発売日2025年5月26日

ISBN978-4-7917-7715-0

神経科学者×現象学者の冒険!
「「意識」研究の今もっともホットな話題を明快かつ深く掘り下げた解説本。専門知識を噛み砕き、幅広いトピックを網羅して伝えるその手腕に驚いた。骨の通った筋のよい本だけに心して読んで欲しい。意識を単なる受動的な現象ではなく「行為」として捉え、多角的な視点で描くこの本は、意識の神秘に迫る知的探求の旅へと読者を誘うだろう。」
――池谷裕二(脳研究者)

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著者によるサポートページはこちら → 「行為する意識」のサポートページ

[目次]

はじめに 神経科学と現象学をつなげるわけ

Ⅰ 表象することから自律性へ──意識は外界のコピーではない
1 進歩する意識の科学
2 「意識とは、出来合いの現実があって、それに対する表象を作ること?」
3 意識のなかの「予測」――環境への働きかけによる結果を予測する脳
4 生物の基礎としての自律性――予測によって作動する感覚と運動のループ

Ⅱ 自律性とはなにか──開きつつ閉じている、われわれと環境
1 わたしたちはなぜ環境と同一化しないのか──自律性をひもとく
2 オートポイエーシス――生物における自律性の原理
3 生物学的自律性、生命と精神の連続性
4 脳における自律性――脳は何もしていないときでも活動を止めない
5 開きつつ閉じる――われわれと環境は入出力関係とは異なる形でつながっている

Ⅲ 世界を経験するとはどういうことか──切ることによってつながる、行為による媒介
1 主観的世界と客観的世界の間に境界線はない
2 主観的世界から観察できない外へ向かう「行為的関わり」
3 媒介とはなにか──切ることによってつなぐ
4 オートポイエーシスとは行為的媒介である
5 不安定さ──「閉じていること」と「外」の経験
6 「外を生きる」ことと「予測」

Ⅳ 「予測」を展開する
1 予測的な処理――生物は環境についての予測を知覚と行動によって更新してゆく
2 予測にもとづいた安定性――アロスタシス
3 神経科学・神経計算論における「予測」――予測誤差最小化
4 知覚、運動、情動を統一する自由エネルギー原理
5 能動的推論

Ⅴ エナクティヴィズム――行為的媒介による相互決定
1 エナクティヴィズムとは
2 感覚運動随伴性
3 予測誤差は消せない。差異を食らうネットワーク
4 エナクティヴ・アプローチから自由エネルギー原理を見直す
5 現在から過去へ、意味づけする意識

Ⅵ 意識の謎に挑む──諸学問が融け合うとき
1 「意識を理解する」ことの意味とは
2 神経科学と現象学をつなげる
3 具体的問題に挑む1――意識の問題への提言
4 具体的問題に挑む2――精神疾患などの意識経験の変容の理解へ
5 人文知、脳科学、AIがつながる

補論1 北海道大学 人間知・脳・AI 研究教育センター(CHAIN)について

補論2 エナクティヴ・アプローチと生態学的心理学と認知科学

あとがき 吉田正俊

主要参考文献(日本語書籍のみ)

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[著者]
吉田正俊(よしだ・まさとし)
東京大学大学院薬学系研究科博士課程を中退後、東京大学大学院医学系研究科統合生理学教室特別推進研究員、生理学研究所発達生理学研究系助教などを経て、現在、北海道大学人間知・脳・AI 研究教育センター(CHAIN)教授。盲視、半側空間無視、統合失調症のヒト及び動物モデルを対象とした研究を通して、意識の問題に迫る研究をしている。

田口 茂(たぐち・しげる)
早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程にて単位取得後、ドイツ・ヴッパータール大学にて哲学博士号取得。現在、北海道大学大学院文学研究院教授、同大学人間知・脳・AI 研究教育センター(CHAIN)センター長を務める。専門は、西洋近現代哲学(特に現象学)、近代日本哲学など。単著に『現象学という思考』(筑摩選書、2014)など、共著に『〈現実〉とは何か』(筑摩選書、2019)などがある。