定価1,980円(本体1,800円)
発売日2025年4月28日
ISBN978-4-7917-1481-0
それは誰のための、いかなる「自由」なのか
表現の自由はいま、岐路に立たされている。政治的「中立性」を盾に介入や自粛が横行する一方、ヘイトスピーチ対応はなおも多くの課題を抱え、公共空間における性表現や「ポリティカル・コレクトネス」をめぐる相克も根強い。本特集ではこれら多様で錯綜する議論を法、倫理、政治、メディアなどさまざまな視点から解きほぐし、一面的ではない問題の核心に迫る。
[目次]
特集*「表現の自由」を考える――ヘイトスピーチ、ネット炎上、そして「トランプ2.0」…
【討議】
表現をめぐる自由と自律 / 志田陽子+成原慧
【いま再び根本から問う】
表現の自由の保障の意義と課題 / 市川正人
表現の自由の耐えられない軽さと重さ / 江藤祥平
ヘイト・スピーチ規制について考える――表現の自由のジレンマ / 桧垣伸次
名誉毀損と表現の自由 / 吉野夏己
【来たるべき公共のために】
いま〈面白い〉を問い直す / 山田健太
人類総メディア時代の表現の自由――その現状と未来 / 山口真一
謳歌の後に来るものは?――「自由すぎる表現」の爆発的増加とその始末 / 田中東子
【表すことの在りようの現れ】
ジェンダー表現をナナメに生きる――あるドラァグ・ジェンダークィアの語り / 古怒田望人/いりや
性表現規制の対決線――「過激なポルノ」の取締まりをめぐって / 河原梓水
「表現の自由戦士」たちの戦い、その背景とイデオロギー / 伊藤昌亮
【ねじれゆく自由と不自由】
反DEIにおける「弱者男性」と「表現の自由」をめぐるポリティクス / 海妻径子
PC批判は反差別でありうるか――ジジェクとバトラーの場合 / 高橋若木
ヘイトスピーチ概念の悪用に抗する / 明戸隆浩
デジタル時代の部落差別と「アウティング」――「全国部落調査」裁判を通して考える / 阿久澤麻理子
【表現の行き交う空間】
「芸術の自由」の達成度――日本の芸術文化振興施策の歴史と現状をめぐって / 小林真理
図書館現象の時代における「知る権利」と「知る自由」 / 福井佑介
京大タテカン訴訟から見た表現の自由・知る権利 / 髙山佳奈子
企業は表現の自由を有するべきか――企業・団体献金を背景にして / 杉本俊介
【連載●社会は生きている●第三三回】
社会と自我 9――そのむこうにいる他者たち / 山下祐介
【連載●京都〈移民〉紀行●第六回】
「五条楽園」の変容とトランスナショナル・ジェントリフィケーション / 森千香子
【連載●現代日本哲学史試論●第一七回】
近代的な哲学の反復を抜け出すこと――濵田恂子と藤田正勝 / 山口尚
【研究手帖】
〈石油をめぐる出会い〉を描く文学 / 中村峻太郎