定価1,980円(本体1,800円)
発売日2025年3月27日
ISBN978-4-7917-0460-6
喪の作業として
デヴィッド・リンチという名前が想起させる疼きとはいったいなにか、それはある種の悪趣味の境域に、しかしあえかな夢をみせるようにお話を紡ぐ、リンチのお話はまさに脳裏の映像を照らし出す、『ツイン・ピークス』の再演は必然であったといえるだろう、だが、すべての必然が当然叶うわけではない。リンチの天啓である。いまひとたび、「夢みる部屋」の主人の語りに耳を傾けるとしよう。
特集*デヴィッド・リンチ――1946-2025
❖未邦訳インタビュー
デヴィッド・リンチとの対話――回顧録、自作を読み解くヒント、そして世界一美味しいチップスについて、監督自身が語る / デヴィッド・リンチ 聞き手=デヴィッド・マーキージー 訳=篠儀直子
❖メモワール
天国より野蛮な場所で / 山中瑶子
いつからか気づけばリンチを観なくなっていた / 木澤佐登志
❖エニグマを追って
変奏と解体――迷宮としてのデヴィッド・リンチ映画 / 北村匡平
耳・鍵・穴 / 佐々木敦
「変」な映画――考察と陰謀論の時代におけるデイヴィッド・リンチ / 入江哲朗
デヴィッドがひとり、またひとり / 柳楽馨
❖詩
デヴィッドは一体何をした? / 広瀬大志
❖(無)意識の彼方
デイヴィッド・リンチ 強度のモノフォニー / 斎藤環
「夢みる部屋」を超えて、あるいはデヴィッド・リンチ劇場 / 宮田勇生
異世界の存在を告げるものたち――恐怖、笑い、そして頼もしさ / 藤原萌
未生の幻視者デヴィッド・リンチ / 宮本法明
❖オマージュされるもの
シュルレアリスムの彼方へ / 風間賢二
ポップカルチャーにいきわたる「リンチ風」の魔法 / 辰巳JUNK
❖手触りについて
ボタン・維納ウィーン・ハツカネズミ・アクアリウム etc... / 丹生谷貴志
デヴィッド・リンチの「拡張されたメロドラマ」 / 鷲谷花
貫く眼差し、歪んだ顔――『エレファント・マン』のナルシシズム / 長尾優希
ビデオ作品としての『イレイザーヘッド』の可能性 / 鈴木潤
❖わたしたちとリンチ
記憶の中のデヴィッド・リンチ / 金井冬樹
デイヴィッド・リンチを引き裂く――フェミニズム/クィアの経験と、神秘的なミソジニー / 近藤銀河
❖マテリアル・セリー
胎児よ 胎児よ 何故躍る――デヴィッド・リンチ『イレイザーヘッド』の音風景 / 長門洋平
ミュージックヴィデオ映画としてのデヴィッド・リンチ / 荒川徹
魔法の夜へ――『ブルーベルベット』における声の剥落と同性愛的欲望 / 髙村峰生
デヴィッド・リンチとファッションのアコード――ファッション表現のなかから「リンチ的」なものを嗅ぎ取る / 関根麻里恵
❖夢がはじまる
In Heaven, Everything is Fine――デヴィッド・リンチ主要作品解題 / 冨塚亮平
❖忘れられぬ人々*42
故旧哀傷・中川一朗・五中D組群像 / 中村稔
❖詩
たいせき / ローレル・テイラー
❖第30回中原中也賞発表
高村而葉『生きているものはいつも赤い』
受賞詩集より――パプーシャの家 山の目 絞める手を疑うこと 光の墓場に根を伸ばして
選評=カニエ・ナハ 川上未映子 野崎有以 蜂飼耳 穂村弘
❖今月の作品
安原瑛治・ながさきふみ・有門萌子・柴田爽矢 / 選=井坂洋子
❖われ発見せり
歴史、あるいは彼女の物語 / 松本夏織
表紙・目次・扉=北岡誠吾
表紙写真=Richard Dumas / Agence Vu / アフロ