定価3,740円(本体3,400円)
発売日2025年3月24日
ISBN978-4-7917-7704-4
出会いと隔たりの戯れ
映画とはひとつの理論に収斂されない、「隔たりの体系」である。「表象的体制」と「美学的体制」が絡み合い、織り上げる交錯の場としての映画が巧緻にして綿密な筆致によって描き出される。それは映画という体験をランシエール自身がたどりなおすものでもある。アルフレッド・ヒッチコック、ジガ・ヴェルトフ、ロベール・ブレッソン、ヴィンセント・ミネリ、ロベルト・ロッセリーニ、ジャン゠マリ・ストローブ/ダニエル・ユイレ、そしてペドロ・コスタ…哲学者はいかに映画と交わるのか、その論理をみよ。
[目次]
序言
第一部 文学の後で
映画的なめまい――ヒッチコックからヴェルトフへ、そしてまたヒッチコックへ
『少女ムシェット』とイメージの言語の逆説
第二部 芸術の境界
芸術のための芸術――ミネリの詩学
哲学者の身体――ロッセリーニの哲学的映画群
第三部 映画作品の政治学
火を囲んだ会話――ストローブと何人かの映画作家たち
ペドロ・コスタの政治学
初出一覧
訳者あとがき
映画作品名索引
[著者]ジャック・ランシエール(JacquesRancière)
1940年アルジェ生まれ。パリ第8大学名誉教授。政治思想と美学・芸術論の両面にわたって独自の哲学を展開している。邦訳された主な著書に、『不和あるいは了解なき了解――政治の哲学は可能か』(インスクリプト、2005年)、『民主主義への憎悪』(同、2008年)、『アルチュセールの教え』(航思社、2013年)、『平等の方法』(同、2014年)、『哲学とその貧者たち』(同、2019年)、『感性的なもののパルタージュ――美学と政治』(法政大学出版局、2009年)、『無知な教師――知性の解放について』(同、2011年)、『解放された観客』(同、2013年)、『詩の畝――フィリップ・ベックを読みながら』(同、2024年)、『イメージの運命』(平凡社、2010年)、『言葉の肉――エクリチュールの政治』(せりか書房、2013年)、『マラルメ――セイレーンの政治学』(水声社、2014年)、『文学の政治』(同、2023年)などがある。
[訳者]堀潤之(ほり・じゅんじ)
1976年生まれ。映画研究、表象文化論。関西大学文学部教授。編著書に『映画論の冒険者たち』(共編、東京大学出版会、2021年)、『越境の映画史』(共編、関西大学出版部、2014年)、『ゴダール・映像・歴史――『映画史』を読む』(共編、産業図書、2001年)。訳書にレフ・マノヴィッチ『ニューメディアの言語――デジタル時代のアート、デザイン、映画』(ちくま学芸文庫、2023年)、アンドレ・バザン『オーソン・ウェルズ』(インスクリプト、2015年)、ジャック・ランシエール『イメージの運命』(平凡社、2010年)、コリン・マッケイブ『ゴダール伝』(みすず書房、2007年)、ランシエール『美学的無意識』(『みすず』2004年5月号)など。ジャン゠リュック・ゴダールやロベール・ブレッソン関連のDVD・BD付属冊子に多数寄稿。