定価3,080円(本体2,800円)
発売日2025年3月24日
ISBN978-4-7917-7691-7
『昭和残侠伝』、『遠山の金さん』、『極道の妻たち』——刺青を“描く”仕事の舞台裏
東映の映画やドラマで鮮烈な印象を残すあの刺青の数々は、一人の「刺青絵師」によって描かれていた。京都撮影所の一角に構えた「刺青部屋」で名だたる俳優の肌に向き合い、80歳まで絵筆を振るいつづけたパイオニアが、その舞台裏を余すところなく語る。
[目次]
まえがき
第一章 刺青を描く、映画をつくる——俳優に刺青(すみ)を描く(流す)方法
第一回のインタビュー点描
刺青を描く
図案を決めるのは私
道具について
いよいよ、撮影
メイクでも仕事
刺青と演技
『徳川いれずみ師 責め地獄』のエピソード
さまざまな「本職」の人々と映画
再現——テレビ時代劇「遠山の金さん」撮影の一日
刺青の落とし方
第二章 俳優と生きる、撮影所を生きる――スターたちとの交遊
藤純子(現:富司純子)さん——京撮の挑戦、京撮の変化
鶴田浩二さん——笑いあり涙ありの「鶴の一声」
美空ひばりさん——夜な夜な遊んだ「ひばり御殿」
高倉健さん——東映任俠・やくざ映画時代を駆け抜けた一〇年
若山富三郎さん——刺青好きの名役者
北大路欣也さん——俳優会館での刺青裏話
松方弘樹さん——裏街道をいくお兄ちゃん
渡瀬恒彦さん——生粋の東映俳優
高島礼子さん——一人前になった「観音菩薩」
渡辺謙さん——映画最後の仕事
コラム 俳優・高橋英樹さんに聞いた「刺青」を描かれること
第三章 刺青絵師まで、刺青絵師のあとで——毛利清二のライフヒストリー
繊維会社に入る
東映京都撮影所に入所
芸名の由来と結婚
近衛十四郎の付き人時代
大部屋俳優の生活
東映歌舞伎のドタバタ
ロケの楽しみ
テレビプロの仕事と組合活動
やくざ映画全盛時代の京都撮影所
サラリーマン「森清二」
日本アカデミー賞特別賞と幻の映画企画
元気の源はラブの散歩
解説1 刺青が物語を駆動する——「映画的刺青」のナラトロジー 原田麻衣
解説2 時代劇・任俠・実録——東映と刺青映画の三〇年史 山本芳美
解説3 刺青映画・刺青絵師の変遷と日本社会 山本芳美
あとがき——毛利清三の謎
注
毛利清二 略年譜
フィルモグラフィー
図版クレジット
[著者]山本芳美(やまもと・よしみ)
都留文科大学教養学部比較文化学科教授。政治学修士、学術博士(論文)。専門は文化人類学。跡見学園女子大学文化学科卒業後、明治大学大学院政治経済学研究科博士前期課程修了、昭和女子大学大学院生活機構研究科生活機構学専攻博士後期課程単位取得退学。台湾・中央研究院民族学研究所に訪問学員として留学後、都留文科大学専任講師、准教授を経て、現職。1990年代より日本社会と刺青の関係を研究している。化粧文化研究者ネットワーク世話人。刺青に関する著書に『イレズミの世界』(河出書房新社、2005年)、『イレズミと日本人』(平凡社新書、2016年)。共著に『コスプレする社会——サブカルチャーの身体文化』(せりか書房、2009年)、『イレズミと法——大阪タトゥー裁判から考える』(尚学社、2020年)、『身体を彫る、世界を印す——イレズミ・タトゥーの人類学』(春風社、2022年)ほか。職人仕事に関しては、稲川實との共著として『靴づくりの文化史——日本の靴と職人』(現代書館、2011年)がある。
[著者]原田麻衣(はらだ・まい)
京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程。専門は映画史、映画研究(フランス映画)で、主にフランソワ・トリュフォー作品に関する研究をおこなっている。主要論文に「物語る「私たち」——フランソワ・トリュフォー『あこがれ』(1957)における文学作品の映画的変換」(『映像学』第108号、2022年)。2021年1月より東映太秦映画村・映画図書室の学芸員として、資料収集、保存、研究に取り組む。