これからの社会を考えるための科学講義

-天と地と人のあいだで-

池内了 著

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これからの社会を考えるための科学講義

定価2,640円(本体2,400円)

発売日2025年2月25日

ISBN978-4-7917-7701-3

宇宙、地球、人間の歴史から、トランスサイエンス問題、科学者と軍事研究、
そして日本最初の稼働差し止め訴訟、原発再稼働の議論の最前線まで…
科学と倫理の問題を問い続けてきた著者がおくる最終講義

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[目次]

はじめに

第1話 天と地と人のあいだで――かけがえのない地球で世界の子どもたちに平和を!
自己紹介(母親大会への最初の参加・子どもの「成長の法則」・その後の単身赴任生活)/天の部――宇宙一三八億年の営み(宇宙における物質の転生輪廻・「私たちは宇宙の子ども」であるわけ)/地の部――地球は素晴らしい循環系(現代の環境危機・コップ一杯の水に――原子の循環・地球の浄化――水の循環・海と植物の働き――炭素の循環・地球の進化――酸素の増加と多様な生命の出現)/人の部――宇宙の利用(「宇宙」の二つの意味・宇宙ビジネスの流行)/人の部2――戦争に抗する(なぜ、戦争に負けたか?・国権よりも人権・日本国憲法の三層構造・立憲主義の二つの精神・民主的法制の改悪の歴史・軍事化が進む日本の危険性・軍事力ではなく「人間力」による戦争の抑止を!・あくまで戦争に抗する!)


第2話 トランスサイエンス問題――科学の限界と原発の安全性
原発を巡る諸問題/科学技術の限界(複雑系・複雑系としての原発)/トランスサイエンス問題と原発/新たな原理・原則の適用(原発事故の状況・「絶対的安全論」から「相対的安全論」へ・電力会社の隠蔽体質と技術者の職業倫理・東電の事業者としての問題点・原子力ムラの専門家たち)/放射能を巡る問題(放射能と人間の関係の歴史・線量限度の概念変化・国際組織)/原子力規制委員会の問題点(原子力規制委員会の「新基準」・原子力規制委員会の限界・原子力規制委員会の審査・原子力規制委員会の「まだまし論」)/メディアの問題


第3話 日本最初の稼働差し止め訴訟――伊方原発訴訟とその後
伊方最高裁判決を巡って/伊方原発の概観/伊方原発の最初の訴訟/伊方原発最高裁判決の詳細/伊方原発「一号機訴訟」の意義と影響/並行して戦われた「二号機訴訟」/伊方原発運転差止裁判瀬戸内海包囲網/多数の伊方訴訟の意味/近年の最高裁の偏った判決


第4話 再稼働の議論の最前線で――新潟から原発問題を問いかける
新潟の挑戦/私が考えた検証総括の中身/県との対立/県との決定的な決裂とその背景/私の解任そして県の「総括報告書」/解任後の私の活動/今後の日本社会への提言


第5話 なぜ原発が止められないのか?――無責任な日本の原発行政
原発問題を見直す(安全保障戦略に打つ手なし・テロ対策もお手上げ)/原発推進の手法――「国策」/原発立地場所選定の問題点/なぜ原発が止められないのか?/核燃料サイクルの問題/なぜ核燃サイクルは止められないのか?/このまま行けば....../今後の私たちの心構え


第6話 科学者と戦争――軍事化する日本と科学の動員
軍事化する日本/安全保障戦略の四つの弱点/軍拡の三つの要因/軍事研究について(安全保障技術研究推進新制度・応募、採択状況の推移・軍事研究の言い訳)/軍事研究の新しい動き(防衛イノベーション技術研究所・経済安保推進法にからむ軍事研究・国際卓越研究大学と福島イノベーション・コースト構想・日本学術会議への攻撃・軍事研究の新たな許容論)


第7話 今、新しい戦前を迎えているのか?
「軍拡バブル」の日本/二つの戦前/「二つの戦前」の比較(国際情勢・日本の状態――憲法と経済・科学者の軍事研究への動員)/「新しい戦前」を克服するために

あとがき

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[著者]池内 了(いけうち・さとる)
1944年、兵庫県生まれ。総合研究大学院大学名誉教授、名古屋大学名誉教授。専門は宇宙論、科学技術社会論。世界平和アピール七人委員会の委員でもあり、長年にわたり科学者の立場から平和を呼びかけ続けている。『お父さんが話してくれた宇宙の歴史(全4冊)』(岩波書店、1993)で産経児童出版文化賞JR賞、日本科学読物賞を、『科学の考え方・学び方』(岩波ジュニア新書、1997)で科学出版賞(講談社)、産経児童出版文化賞推薦を、『科学者は、なぜ軍事研究に手を染めてはいけないか』(みすず書房、2019)で毎日出版文化賞特別賞をそれぞれ受賞。そのほかの著書に『ふだん着の寺田寅彦』(平凡社、2020)、『寺田寅彦と現代 新装版』(みすず書房、2020)などがある。