孤独社会

-現代日本の〈つながり〉と〈孤立〉の人類学-

小澤デシルバ慈子 著,吉川純子 訳

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孤独社会

定価3,960円(本体3,600円)

発売日2024年8月27日

ISBN978-4-7917-7669-6

日本社会の孤独を見つめる
人びとの心に巣くい、時に死に至らしめる孤独という「病」。孤独は個人の問題に留まるものではなく、社会全体で取り組むべき問題である。居場所のなさや生きづらさの根源はどこにあるのか。インターネット掲示板や東日本大震災の被災地、映画・アニメにいたるまでのフィールドに踏み込み、心理学・人類学の専門知から現場をみつめる。

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[目次]
 

日本語版への序文――日本の読者の皆さんへ 
謝辞

はじめに――つながりを失った人々と孤独な社会(「ロンリー・ソサエティ」)
世界に蔓延する孤独/孤独と自殺/孤独な社会/本書の構成/広範な学問分野との接点/孤独についての誤解/孤独の定義

第一章 主観性と共感
二つの顔を持つ神ヤヌスのような主観性の二面性/主観性は、自己、サバイバル、情動を構築する/主観性は、可塑的(plastic)である/相互主観性と社会/主観性、孤独、そして社会/主観性をめぐる研究の課題/社会と情動/誰が主体と見なされるのか?/主観性にアプローチする方法としての共感と三角法(triangulation)/共感の定義/ネオリベラリズムと物質主義/政治経済と主観性

第二章 一人で死ぬのは寂しすぎる――インターネット集団自殺
ご迷惑をおかけして申し訳ありません/一九九八年―転機/理由を探る/性別と年齢/「完全自殺マニュアル」/川の字に横たわる死体/ドクター・キリコの診察室/インターネット集団自殺の形態/座間九人殺害事件/自殺に対する伝統的な考え方/心中―一緒に死ぬこと/無責任な自殺/インターネットの危険性と青少年のインターネット集団自殺/インターネット自殺に対する自殺予防の取り組みの出現/共感と主観性

第三章 社会とつながっていない人々をつなぐ――自殺サイト
自殺サイト/自殺サイトを構成するもの/ある自殺サイトの分析/テーマ/一時的な居場所としての自殺サイト/「なんとなく」死にたい/誰かと一緒に死にたい/死後の生/テーマの分析/苦痛からの逃避としての自殺/『自殺サークル』と『妄想代理人』――インターネット集団自殺の大衆文化的表象/エピクロス的自殺

第四章 生きる意味――日本の若者の「必要とされたい」気持ちを探る
カオリ/コウジ/生きる意味と生きがい/ミエ/生きづらいと感じること/さらに他の学生たち/学生インタビューと自殺サイト訪問者の比較/必要とされたいという欲求と生きる意味のなさをつなぐ/幸福、ウェルビーイング、意味づけ

第五章 三・一一東日本大震災を生き抜いて三・一一の悲劇の広がりを見る/沈みゆくボート/被災地の調査/社会から不可視化されているゾーン/取り残された人々との出会い/タテノさんの話/石巻から来た三・一一の被災者

第六章 レジリエンスの分析
モラル傷害/孤独の社会的アフォーダンス/レジリエンスのいくつかの側面/積極的な社会的役割とコミュニティ・ケア/絆/親密さの商品化/社会的、文化的レジリエンス

第七章 孤独が教えてくれること 
世界を分かち合うこと、そして見られる自己/死ぬための許可と死ぬ勇気/人生における関係論的な意味/万引き家族/社会と思いやり(compassion)/共感と方法論/孤独から何を学べるのか?/孤独を受け入れる/他者を受け入れる/自分自身を受け入れる/自分の居場所を見つける/受容するシステムの構築/言葉にすることが可能であり、対処することが可能である

脚注 
訳者あとがき 
参照文献 
索引

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[著者]小澤デシルバ慈子Chikako Ozawa-de Silva

専門は医療人類学、心理人類学、社会人類学、日本研究。エモリー大学人類学部教授を経て、現在同大学ロシアおよび東アジア言語文化学科教授。単著にPsychotherapy and Religion in Japan: The Japanese Introspection Practice of Naikan (Routledge, 2006、未邦訳)がある。編著にToward an Anthropology of Loneliness (Transcultural Psychiatry, 2020、未邦訳)がある。なお本書『孤独社会』はVictor Turner Book賞、Stirling Book賞、Francis Hsu Book賞の受賞作である。

[訳者]吉川純子(よしかわ・じゅんこ

専門はアメリカ文学、アメリカ文化、ジェンダー研究。法政大学、中央大学他講師。お茶の水女子大学大学院修士課程英文学専攻修了。ラトガース大学大学院修士課程英文学専攻修了。共著に福田敬子他編『憑依する英語圏テクスト――亡霊・血・まぼろし』(音羽書房鶴見書店、2018年)がある。共訳書に、サラ・サリー『ジュディス・バトラー』(竹村和子他訳、青土社、2005年)がある。