水晶宮としての世界

-資本とグローバル化の哲学のために-

ペーター・スローターダイク 著,高田珠樹 訳

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水晶宮としての世界

定価6,820円(本体6,200円)

発売日2024年8月27日

ISBN978-4-7917-7666-5

現代ドイツを代表する哲学者の重要著作、待望の邦訳。
資本主義が地球全体を覆い尽くしつつある現在、あたかも世界全体が一つの巨大な「水晶宮」になったかのように、剥き出しの自然の牙は抜かれ、グローバル化の敗者は排除され、勝者は快適な生活を享受している。この天蓋の下で起きている事象を、哲学や文学を縦横無尽に渉猟しつつ、皮肉とユーモアをまじえて饒舌に論じ尽くした壮大な哲学理論。

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[目次]

第一部 世界システムの成立
第一節 大きな物語について
第二節 惑星
第三節 地球への帰還
第四節 地球儀の時代、世界像の時代
第五節 東方に背を向けて――均質空間への進入
第六節 ジュール・ヴェルヌとヘーゲル
第七節 水の世界、近代における自然界の主役の交代
第八節 幸運の女神フォルトゥーナ、または好機の形而上学
第九節 リスクを冒す行為
第十節 妄想と時間——資本主義とテレパシーについて
第十一節 主体性の発明――第一次自制放棄とその助言者たち
第十二節 非反省的エネルギー――率先の存在論
第十三節 洋上の陶酔
第十四節 公海上のコーポレート・アイデンティティー――人心の分裂
第十五節 根本運動――お金が返ってくる
第十六節 確たる証拠と保険のあいだ――陸地思考と海洋思考について
第十七節 探検と真理
第十八節 発見者の徴――地図製作と帝国に関わる名称の魔力
第十九節 純粋な外部
第二十節 海賊の理論――白い恐怖
第二十一節 近代と新大陸症候群――アメリカ学、その一
第二十二節 グローバル化の五つの天蓋――ヨーロッパの空間輸出の諸相
第二十三節 船内空間の詩学
第二十四節 船上の聖職者――宗教のネットワーク
第二十五節 列副王記
第二十六節 グローバル化の図書室
第二十七節 翻訳者たち

第二部 巨大な室内
第二十八節 同時世界
第二十九節 第二の居住域(エクメーネ)
第三十節 免疫学的転換――薄壁「社会」への途上
第三十一節 信と知——この徴(球体)にて汝、勝つべし
第三十二節 ポストヒストリー
第三十三節 水晶宮
第三十四節 密な世界と第二次自制放棄――純然たる攻撃のロマン主義としてのテロリズム
第三十五節 実行者の黄昏と責任倫理学――サイバー空間にうごめく復讐の女神たち
第三十六節 資本主義的な世界内部空間――ライナー・マリア・リルケがあわやアダム・スミスに遭遇しそうになる
第三十七節 厚遇空間の中での変異
第三十八節 あらゆる価値の転換――豊かさの原理
第三十九節 例外――ある誘惑の解剖、アメリカ学、その二
第四十節 圧縮しえざるもの、あるいは延長の再発見
第四十一節 非対称性を讃えて
第四十二節 天上の左翼と地上の左翼

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[著者]ペーター・スローターダイク(Peter Sloterdijk)
1947年、ドイツ、カールスルーエ生まれ。現代ドイツを代表する哲学者の一人。『シニカル理性批判』(1983年)で一躍有名になり、1998年から2004年にかけて、三部作の大作『球体圏』を発表。1992年にカールスルーエ造形大学の教授に就任、2017年、定年で退職した。2000年代以降、政治や宗教に関連する発言が目立つ。2022年に『灰色をば考えずして』、2023年に『プロメテウスの悔恨』などを発表、執筆意欲に衰えを見せない。

[訳者]高田珠樹(たかだ・たまき)
1954 年、福井県生まれ。現在、大阪大学名誉教授。著書に『ハイデガー 存在の歴史』(講談社学術文庫、2014 年)。訳書に、スローターダイク『魔の木』(岩波書店、1988 年、共訳)、『シニカル理性批判』(ミネルヴァ書房、1996年)、ハイデガー『存在と時間』(作品社、2013年)など。『フロイト全集』(岩波書店)の編者を務める。