スピノザ考

-人間ならざる思考へ-

上野修 著

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スピノザ考

定価3,960円(本体3,600円)

発売日2024年5月11日

ISBN978-4-7917-7643-6

スピノザとともに、人間が消える。
モノとその真理だけが残る。

われわれを魅惑するとともに恐怖へと陥れるスピノザの思想。
その核心に迫るとともに、哲学者たちとの交差を描き出す。
全集の編者を務めるスピノザ研究の泰斗による集大成。

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[目次]

はじめに

序章にかえて——亡びについて

 スピノザ哲学の核心へ

第1章 スピノザと真理
1 対応説か整合説か(?)/2 問題の諸次元/3 考察と総括

第2章 『エチカ』は定義で始まる
1 単なる名目的定義でいいのか/2 『知性改善論』の行き詰まり/3 定義のスピノザ的な区別/4 それ自身が吟味されるために立てられる定義/5 結論

第3章 現実性と必然性
1 スピノザの必然主義/2 真なる観念の内的規定/3 神ないし自然/4 認識の三種の区分/5 考察——必然性と強い現実性概念

第4章 永遠の相のもとに
1 スピノザの永遠/2 現実は神だった/3 スピノザからの挑戦/4 精神の眼は証明そのもの

第5章 〈ある〉のすべて
1 チャーマーズの反実在論/2 〈ある〉のすべて(omne esse)/3 実体の論証/4 様態の論証/5 (討議)/6 スピノザの存在論的実在論(結論)

第6章 二つの「あたかも」
1 契約の「あたかも」——ホッブズの契約説/2 スピノザ『神学政治論』のアノマリー/3 群集の「あたかも」——スピノザ『政治論』/4 結論——二つの「あたかも」と政治的理性

第7章 自然権と自然の権利
1 予備的考察/2 自然権の定義/3 自然権の停止問題/4 国家の定義/5 戦争の法

 

Ⅱ 哲学史を通過するスピノザ

第8章 近現代哲学の虚軸スピノザ
1 最初の遭遇——ライプニッツ/2 第一のルネッサンス——汎神論論争からドイツ観念論へ/3 虚軸スピノザ/4 第二のルネッサンス——現代フランス/5 必然主義という問題/6 終わりに——石像の宴の謎

第9章 現実性をめぐって——ライプニッツとスピノザ(1)
1 様相論の二つの系譜/2 ライプニッツの現実概念/3 スピノザの現実概念/4 可能的なものと潜在的なもの/5 結論

第10章 スピノザという崖っぷち——ライプニッツとスピノザ(2)
1 崖っぷち/2 可能世界/3 真理の分析/4 スピノザの深淵/5 世界の奥行き/6 魂の深さ/7 パースペクティヴの消滅に抗して/8 結論

第11章 一九世紀フランス社会主義におけるスピノザの不在
1 社会主義者たち/2 汎神論?/3 汎人類論/4 スピノザの不在

第12章 シモーヌ・ヴェイユとスピノザ、酷薄の哲学のために

第13章 アンリとスピノザ、近さと遠さ
1 アンリから見た近さと遠さ/2 スピノザから見た近さと遠さ/3 スピノザの幸福/4 パラドックス

第14章 ラカンにおけるスピノザのプレゼンス
1 第一の手がかり——デカルト的主体、スピノザ的定式/2 第二の手がかり——数学化、主体と真理/3 第三の手がかり——縫合と排除、科学とパラノイア/4 第四の手がかり——サントーム、分析の終了

第15章 マルチチュードの転覆性について——ネグリとスピノザ
1 問題としての「群集」/2 統治の定義項としての群集の力能——「残りの者」再訪/3 ネグリのマルチチュードとスピノザの群集/4 スピノザの転覆性——結論

終章にかえて——人間ならざるものに向けて

あとがき


スピノザ著作索引
事項索引
人名索引
初出一覧

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[著者] 上野修(うえの・おさむ)
1951年、京都府生まれ。国際基督教大学教養学部卒業、大阪大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。専門は哲学・哲学史。山口大学人文学部教授、大阪大学大学院文学研究科教授を経て、現在、大阪大学名誉教授。著書に『スピノザの世界──神あるいは自然』(講談社現代新書、2005年)、『デカルト、ホッブズ、スピノザ──哲学する十七世紀』(講談社学術文庫、2011年)、『哲学者たちのワンダーランド──様相の十七世紀』(講談社、2013年)、『スピノザ『神学政治論』を読む』(ちくま学芸文庫、2014年)がある。『スピノザ全集』(岩波書店、2022年—)の編者を務める。