定価3,520円(本体3,200円)
発売日2024年2月14日
ISBN978-4-7917-7613-9
この時代を、この人生を、誰とともに生きるのか
戦後を代表する哲学者、鶴見俊輔。隔離政策下にあった1950年代に療養所を訪れ、終生にわたり、ハンセン病の詩人やそれに連なる人びとと親密な関わりをつづけた。隔たりの自覚を手放すことなく、ともに生きることの意味を考えつづけた哲学者の姿が、初公開の講演録をはじめとする貴重なテクストから浮かび上がる。
[目次]
Ⅰ 「むすびの家」物語
はじめに
五十年・九十年・五千年
「むすびの家」の人びと
Ⅱ 病いと社会とのかかわり
戦争のくれた字引き(抄)
日本社会をはかる規準
病者の眼
根拠地を創ろう
病気の観念の変革
『隔絶の里程』に寄せて
『国の責任―今なお、生きつづけるらい予防法』解説
隔離の中に生きた人たち―畑谷史代『差別とハンセン病』
Ⅲ 深い場所から届くことば
島比呂志の世界
この詩集に
この時代の井戸の底に
個人的な思い出から―『ハンセン病文学全集』刊行によせて
『ハンセン病文学全集4 記録・随筆』解説
『ハンセン病文学全集10 児童作品』解説
伊藤赤人の作品
Ⅳ 回想のなかのひと
若い友の肖像(抄)
山荘に生きる帝政ロシア―亡命貴族三代記
大江満雄の肖像
神谷美恵子管見
能登恵美子さん
Ⅴ 評論選評
長島愛生園『愛生』(一九五五年十一月‐一九六九年一月)
長島愛生園盲人会『点字愛生』(一九五六年五月‐一九七二年十月)
菊池恵楓園『菊池野』ほか九州三園合同全国文芸特集号(一九七〇年十二月)
Ⅵ 講演
らいにおける差別と偏見
もう一つの根拠地から
内にある声と遠い声
ハンセン病との出逢いから
解説 未来への根拠地
編者あとがき
鶴見俊輔ハンセン病関連文献一覧
人名索引
[著者]鶴見俊輔(つるみ しゅんすけ)
1922-2015年。戦後日本を代表する哲学者・思想家。1942年、ハーバード大学哲学科卒。日米交換船で帰国したのち、海軍通訳としてジャカルタで従軍。1946年、『思想の科学』を創刊。1960年に市民グループ「声なき声の会」、1965年に「ベ平連」を結成。2004年、大江健三郎らと「九条の会」呼びかけ人となる。著書に『アメリカ哲学』『転向研究』『限界芸術論』『戦時期日本の精神史』『夢野久作』『アメノウズメ伝』など多数。
[著者]木村哲也(きむら てつや)
1971年生まれ。神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科博士後期課程修了。博士(歴史民俗資料学)。専門は歴史学、民俗学。現在、国立ハンセン病資料館学芸員。鶴見俊輔らとともに『大江満雄集―詩と評論』(思想の科学社)の編にあたる。著書に『宮本常一を旅する』(河出書房新社)、『来者の群像―大江満雄とハンセン病療養所の詩人たち』(編集室水平線)など。