定価2,860円(本体2,600円)
発売日2023年12月25日
ISBN978-4-7917-7612-2
「泣ける映画」はどこから来て、どこへ行くのか
メロドラマの想像力は過ぎ去った流行ではなく、現在の表象のなかにも確実に息づいている。その射程はどこまで届くのか。稀代の書き手が遺した、可能性に満ちあふれたテクストたち。解説・木下千花
[目次]
Ⅰ メロドラマの力――概念と受容
「メロドラマ」映画前史――日本におけるメロドラマ概念の伝来、受容、固有化
メロドラマ映画研究の現在
訳者解説 ジョン・マーサー、マーティン・シングラー『メロドラマ映画を学ぶ――ジャンル・スタイル・感性』
Ⅱ メロドラマに輝くもの――日本映画、あるいは幾人かの女優
「わたし、ずるいんです」――女優原節子の幻想と肉体
変化(へんげ)する顔、蝶の身体――京マチ子のスター・イメージに見る倒錯的従順さ
『君の名は』とは何か――ブームの実態とアクチュアルな観客
語らざる断片の痺れ――メロドラマとして見た清順映画
渋谷実の異常な女性映画――または彼は如何にして慣例に従うのを止めて『母と子』を撮ったか
上原謙と女性映画
映画『その日のまえに』論――メロドラマ的、あまりにメロドラマ的な「A MOVIE」
傷口と模造――北野武の映画にとっての「涙」あるいは「泣くこと」
岩井俊二の映画を巡る四つの断想
からっぽの女の子が〈映え〉な世界でキラキラしてる。――『ホットギミックガールミーツボーイ』論
映像メディアにおける同性愛表象の現在
Ⅲ メロドラマは拡散する――作家性とエスニシティ
映画における「仕方がないこと」のすべて?――『ヴァンダの部屋』について
思春期、反メロドラマ、自己言及性――ソフィア・コッポラの作家性にかんする二、三の事
ハイパー・メロドラマ――映画『バーフバリ』の凄まじさに見る雑種性、抽象性、超政治性
「初恋」の行方――現代韓国恋愛映画論
「メロ」と「悪女」――韓国宮廷時代劇についての覚書
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中村秀之『特攻隊映画の系譜学――敗戦日本の哀悼劇』
変貌するペルソナ――北村匡平『スター女優の文化社会学――戦後日本が欲望した聖女と魔女』書評
解説 木下千花
[著者]河野真理江(こうの まりえ)
1986年東京生まれ。映画研究。立教大学大学院現代心理学研究科映像身体学専攻博士課程修了。博士号(映像身体学)取得。立教大学兼任講師、青山学院大学、早稲田大学、東京都立大学、静岡文化芸術大学非常勤講師を歴任。著書に『日本の〈メロドラマ〉映画──撮影所時代のジャンルと作品』(森話社、2021年、第13回表象文化論学会賞奨励賞を受賞)がある。2021年死去。