「ピアノを弾く少女」の誕生

-ジェンダーと近代日本の音楽文化史-

玉川裕子 著

  • はてなブックマークに追加
  • LINEでシェア
  • Google+でシェア
「ピアノを弾く少女」の誕生

定価2,640円(本体2,400円)

発売日2023年9月26日

ISBN978-4-7917-7586-6

なぜ少女たちはピアノを習うのか
日本に西洋音楽がもたらされ普及していくなかで、ほかの楽器に比べて一般の家庭に積極的に受け入れられていったピアノ。その習い手は、多くの場合には妻、そして娘であった。なぜほかの楽器ではなく、ピアノなのか。なぜその習い手は女性なのか。ピアノが普及していく黎明期の日本社会を丹念に追い、その背景に迫る渾身の書。

line2.gif

[目次]

序 章 近代日本のピアノと女性

第 I 部 「ピアノを弾く女性」という記号――イメージの生成


第1章  「ピアノを弾く女性」――少女たちが夢見たもの
1  憧れのイメージ「ピアノを弾く女性」
2 『少女の友』にみる「音楽のある風景」
3  楽器とジェンダー
4  良家の子女の楽器
5  ピアノとヴァイオリンのヒエラルキー

第2章  琴から洋琴(ピアノ)へ――近代日本の知識人男性が音楽に託したもの
1  夏目漱石作品のなかの音楽
2  和楽器の響きがもたらす世界
3  西洋音楽を奏でる男たち、女たち
4  ヴァイオリンを弾く女学生、ピアノを弾く令嬢

Intermezzo 1 「ピアノを弾く少女」と《乙女の祈り》――ドイツの場合

第II部 家庭と音楽――イメージと現実の交差するところ

第3章  百貨店と音楽――音楽と商業は手に手をとって
1 「日本の新流行は三越より出づ」
2  アメリカのデパートメントストアにおける音楽活動
3  音楽のある風景――新しい都市住民のための理想の生活スタイル
4  商品としての音楽
5  楽器とジェンダー――三越の場合
6  「芸術は芸術の園」へ――商業は芸術から身を引いたのか?

第4章  近代日本における家庭音楽論――「一家団欒」という未完の夢を越えて
1 「家庭音楽」とは?
2  一九一〇年前後の「家庭音楽」をめぐる言説
3  和洋折衷の音楽
4  家庭音楽の不可能性
5  女性たちがピアノを奏でる場

Intermezzo 2 ドイツの家庭音楽

第III部 音楽を奏でる女性たち――近代日本の音楽愛好家と職業音楽家

第5章  音楽に親しむ少女たち――女子学習院の場合
1  女学校の音楽会
2  学習院と音楽
3  音楽の鳴り響く場1――儀式の音楽
4  音楽の鳴り響く場2――修辞会
5  音楽の鳴り響く場3――音楽会
6  ピアノを奏でる女性皇族

第6章  女性職業音楽家の光と影――音楽はジェンダー規範の解放区?
1  活躍する女性職業音楽家
2  音楽を学ぶ明治の女性たち――音楽取調掛および東京音楽学校の女子学生
3  教壇に立つ明治の女性たち――音楽取調掛および東京音楽学校の女性教員
4  明治期におけるジェンダー規範の再編成と音楽

終  章 規範の流動性と「ピアノを弾く女性たち」


あとがき

女子学習院『おたより』発行年月日一覧
女子学習院 修辞会及び音楽会にみられる主な楽曲
「学習院女子」音楽会開催一覧表

line2.gif

[著者]玉川裕子(たまがわ・ゆうこ)
1959年生まれ。桐朋学園大学(ピアノ専攻)を経て、東京大学大学院総合文化研究科比較文学比較文化修士課程修了。現在、桐朋学園大学教授。主な研究領域は近代ドイツおよび日本の音楽文化史、ジェンダー視点による音楽史。編著に、『クラシック音楽と女性たち』(青弓社、2015)。共著に、『女性作曲家列伝』(平凡社、1999)、『ドイツ文化史への招待』(大阪大学出版会、2007)。訳書に、フライア・ホフマン『楽器と身体』(春秋社、 2004)、モニカ・シュテークマン『クララ・シューマン』(春秋社、2014)などがある。