定価1,980円(本体1,800円)
発売日2023年7月27日
ISBN978-4-7917-0435-4
詩書出版とはなにか
戦後詩とそれをなす同人誌の興隆のあとに「現代詩」の基底を定めていくプラットフォームかのように現れたのが小田久郎による『現代詩手帖』であった。1959年創刊、それは詩壇ジャーナリズムを自ら定義しようとする歩みの始まりである。「現代詩」を問う、それも小田久郎というひとりの出版人の名とともに、いかにも反時代的な振る舞いによって企てられる批評とはなにか、これは現代詩の外部からの試みなのか――いま一度の検証である。
特集*小田久郎と現代詩の時代
❖遺された言葉
二〇二一年度第五九回歴程賞受賞スピーチ / 小田久郎
❖昭森社ビルのころ
小田久郎・断章 / 中村稔
小田さんありがとう / 三木卓
手習い / 中江俊夫
❖詩〈1〉
小田久郎さんを送る / 谷川俊太郎
❖『現代詩手帖』という始点
現代詩手帖と私――小田久郎と『現代詩手帖』 / 高橋睦郎
小田久郎と『現代詩手帖』の時代 / 粕谷栄市
小田久郎の戦後詩への貢献と功績 / 渡辺武信
❖小田久郎を読む
時代を読む力 〈詩と批評〉の両輪を支える――小田久郎と『現代詩手帖』 / 北川透
小田久郎と鮎川信夫 / 近藤洋太
「貴重人間」――小田久郎を憶う / 田原
詐欺師の楽園――『戦後詩壇私史』再読 / 森本孝徳
みんなマジで現代詩を読まなければならない――思潮社の本から学ぶ、崩壊に抗うサバイバル / 小笠原鳥類
❖詩書の群像
現代詩への使命感――小田久郎追悼 / 八木忠栄
思潮社の青春期、幻想文学の火付け役 / 桑原茂夫
詩と詩書出版の魔力 / 高橋順子
『現代詩ラ・メール』の一〇年 / 中本道代
❖出版史における詩誌
『文章倶楽部』時代の小田久郎 / 加藤邦彦
「手帖」に書き込まれた「発見!」――伊達得夫と小田久郎 / 疋田雅昭
『詩学』から照らす――『現代詩手帖』への階梯 / 宮崎真素美
『詩と思想』をめぐって――中心は二つ、あるいはそれ以上なくてはいけない / 神谷光信
❖座談会
詩史/詩誌の途上に――孤絶と共同体 / 久谷雉 佐藤雄一 鳥居万由実
❖詩〈2〉
トカトントン / 松本圭二
❖残影
柱石、小田久郎 / 吉増剛造
遠くからの思い出 / 荒川洋治
いつも傍らにあった『吉本隆明詩集』(思潮社版)――小田久郎さんとの出会い / 倉田比羽子
❖詩史=私史
詩は無力か? / 究極Q太郎
明日は、時の立体 / 中尾太一
詩の名のもとに / 菊井崇史
TOLTAと『現代詩手帖』 / TOLTA
媒体の媒体、それとも単に媒体 / 髙塚謙太郎
❖詩に向かって
小田久郎さんの思い出に至るまでの雑感 / 朝吹亮二
グローブの中に / 和合亮一
生きかえると思って三日間ヤモリを看病した / 藤原安紀子
❖星図としての詩
かたちについて――近代詩をめぐるエスキース / エリス俊子
現代詩と生活――画一性に対峙するものとしての現代詩 / 野崎有以
エフェメラと永遠――詩書と詩誌を巡る断章 / カニエ・ナハ
英語翻訳からふりかえる現代詩 / 吉田恭子
❖忘れられぬ人々*22
故旧哀傷・楠川徹 / 中村稔
❖物語を食べる*30
妖婦は食べるために殺す / 赤坂憲雄
❖詩
寄物陳思歌 三首 / 呉基禎
❖今月の作品
のもとしゅうへい・宮田実来・山内優花・吉田譜雨・小杉山立夏子・西野いぶき / 選=大崎清夏
❖われ発見せり
鏡としての庭 / 小宮りさ麻吏奈
表紙・目次・扉 北岡誠吾