定価4,840円(本体4,400円)
発売日2023年7月26日
ISBN978-4-7917-7571-2
恐怖の裏側
読者を怖がらせることにほとんどの力点がおかれている“ホラー小説”。その起源はどこにあるのか。いかにして発展してきたのか。読者を怖がらせる仕組みはどこにあるのか。18世紀のゴシック小説から21世紀のポスト・ミレニアルホラーまで時代の流れを俯瞰し、ホラージャンルをベストセラーにしてきたものたちの妙技を読み取り、ホラー小説たるものの全貌を明らかにする。
第51回日本推理作家協会賞(評論部門)を受賞したホラー・ガイドの名著、大幅増補し、待望の復刊!
[目次]
まえがき
第1部 西洋ホラー小説小史
1 一八世紀――ゴシック小説とは何か
ゴシック・ロマンスの誕生/二一世紀――ゴシック=ハッピーゴス/ゴシック・ロマンスにおける〈分身〉のテーマ
2 一九世紀――ゴースト・ストーリーと科学
ゴシック・ロマンスが衰退した理由/心霊主義の興隆/ヴィクトリア朝の幽霊探究/最新科学思想/英国正調幽霊碑の代表作「緑茶」
3 二〇世紀――モダンホラーからポスト・モダンホラーへ
二〇世紀初頭――オカルト探偵登場/二〇年代から三〇年代――クトゥルー神話誕生/四〇年代から五〇年代――日常生活の中の異次元/六〇年代から七〇年代――スティーヴン・キング登場/八〇年代――ポストモダン・ベストセラー・ホラー/ニュー・ゴシック/スプラッタパンクとダーク・ファンタジー/九〇年代――二〇世紀末女流ホラー作家の台頭/世紀末英国モダンホラーの状況
4 二一世紀――ポスト・ミレニアル・ホラー
文芸系ホラー/スパニッシュ・ホラー文芸系/人種系ホラー/エクストリーム/ハードコア・ホラー/ビザーロ・フィクション/八〇年代モダンホラー系ニュー・タイプの作家たち
第2部 近代が生んだ三大モンスター+コンテンポラリーゾンビの誕生
5 フランケンシュタインの怪物
エディソンとフランケンシュタイン/メアリー・シェリーの生涯/『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』について/断片としての怪物/フランケンシュタイン神話
6 吸血鬼ドラキュラ
吸血鬼のフォークロア/吸血鬼小説史――『吸血鬼ドラキュラ』以前/文学的吸血鬼と民間伝承における原型との違い/『吸血鬼ドラキュラ』について/モダン・ヴァンパイアーズ!
7 狼男
人狼伝説/小説について/映画について
8 ゾンビ
「WORDS WERE Z」――マックス・ブルックス『WORLD WAR Z』/ゾンビ・カルチャー現象の一翼を担ったアメコミ――ロバート・カークマン『ウォーキング・デッド』/海外では小説版『バイオハザード』も大人気――S・D・ペリー『バイオハザード』/ネット世代の語り部に中毒者続出!――スコット・シグラー『殺人感染』/ヘイト・ウィルス発生!――デイヴィッド・ムーディ『憎鬼』/トロマ映画も顔負けの悪趣味エログロ・ホラーの怪作――ジョー・ネッター『ブッカケ・ゾンビ』/海外ゾンビ小説入門① 基本作品10選/海外ゾンビ小説入門② 未邦訳ゾンビ小説10選
第3部 スティーヴン・キングの影の下に
9 モダンホラー盛衰記
八〇年代/九〇年代/英国の状況
10 帝国と魔女たちの宴
帝国の興亡/魔女たちの逆襲
11 コンテンポラリー・ゴシック万華鏡
モダンホラー界の職人――ディーン・クーンツ/モダンホラー界〈第三の男〉――ロバート・R・マキャモン/モダンホラー界の貴公子――クライヴ・バーカー/『不滅の愛』/悪魔祓いとしての暴力小説――デイヴィット・マレル/モダンホラー界の紳士――ピーター・ストラウブ/『きみの血を』――ニュータイプ・ヴァンパイアの鼻祖/『ヴァイオレット・アイ』――ロマンチック・ホラー?/『ジグソーマン』――王道パルプ・ホラーの最先端!/『無名恐怖』――英国モダンホラー界の大御所ラムジー・キャンベル/『アンダー・ザ・スキン』――ジャンル越境型予測不能ホラー/『白墨人形』――英国版女性スティーヴン・キング登場!/『黒い玉』――一九世紀末象徴主義者の末裔/異色作家短編=ミステリーゾーン系――ぼくはこれで柔らか頭になりました
第4部 サイコとエログロ・スプラッタ
12 二〇世紀末アメリカン・ホラー事情
13 魔性の子どもたち
恐るべき子どもたち/〈子ども〉ものホラーについて
14 サイキック・サスペンス
アメリカ的な、あまりにアメリカ的な作品/病んだ現代アメリカを語る作品
15 スプラッタパンク現象
スプラッタパンクって、なに?/スプラッタパンクの作家たち/スプラッタパンクの系譜と影響/スプラッタパンクの現在
16 悪趣味鬼畜ホラー
リチャード・レイモンのデビュー作/ジャック・ケッチャムのデビュー作
17 エロチック・ホラー
18 ボディ・ホラー
昭和の子どもたちにマイコフォビアを拡散させた映画/フロイト流「無気味なもの」とは?/キング、クーンツのボディ・ホラー/悪趣味スプラッタ映画の真の恐怖/女性器、はらわた、クライヴ・バーカー/デヴィッド・クローネンバーグ監督作品の隠れた社会性/バッファロー・ビルの本当の悲劇/ボディ・ホラーの基本は変容=メタモルフォーシスにあり!
第5部 古典・名作・傑作ホラー・ベスト
19 モダンホラー・ベスト――テーマ別ベスト長編60
悪魔/いじめ/SFホラー/エロチック・ホラー/カルト宗教集団/狂気/ゴシック・ミステリ/サイコ・ホラー/自我分裂/邪悪な子供/ゾンビ/超能力/動物パニック/ニューロティック・ホラー/呪い/化け物/メタホラー/黙示録ホラー/幽霊/幽霊屋敷
20 アンソロジーと個人短編集別ベスト中短編40
基本的な傑作集/ミステリーゾーン・タイプの傑作短編/ベストセラー作家の短編/モダンホラーの傑作アンソロジー/テーマ別モダンホラー・アンソロジー
21 ゴシックホラー・ベスト50
22 ふるえて眠れ――少年少女のためのベスト60
あとがき
初出一覧
作品索引
人名索引
[著者]風間賢二(かざま・けんじ)
1953年生まれ。武蔵大学人文学部卒業。幻想文学研究家。翻訳家。1998年『ホラー小説大全』(角川書店)で第51回日本推理作家協会賞を受賞。主な著書に『スティーヴン・キング論集成』(青土社)、『怪異猟奇ミステリー全史』(新潮社)など。訳書にスティーヴン・キング『ダーク・タワー』シリーズ(KADOKAWA)、ホセ・カルロス・ソモサ『イデアの洞窟』(文藝春秋)、ジェフ・ニコルスン『装飾庭園殺人事件』(扶桑社)、カレン・テイ・ヤマシタ『熱帯雨林の彼方へ』(新潮社)、第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品ロバート・カークマン『ウォーキング・デッド』(飛鳥新社)シリーズなど多数。