フキダシ論

-マンガの声と身体-

細馬宏通 著

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フキダシ論

定価2,200円(本体2,000円)

発売日2023年6月26日

ISBN978-4-7917-7563-7

こんな読み方があったのか!
平面に一色で、主に単線で描かれるマンガ。時に登場人物の顔は簡略化され、時にコマに発話者が描かれず、時に発されていない言葉までも描かれる……。わたしたちはいかにしてマンガのなかの出来事に注意を向け、物語を読みとっているのか。一コマ一コマ、一つひとつのフキダシ・記号たちをていねいに紐解き、わたしたちがマンガの世界観に入り込めるカラクリに迫る、新しい見方を提示するマンガ論。

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[目次]



第一部 フキダシにどう向かうか

三項関係と関係分析
関係分析の試み――手塚治虫・酒井七馬『新宝島』
独り言、内言――藤子不二雄Ⓐ『まんが道』
環世界を視覚化する――ユクスキュル、クリサート『生物から見た世界』
マンガは環世界の変化を視覚化する――くらもちふさこ『天然コケッコー』
ゆるやかな規則とそこからの逸脱
読み流せないこと――こうの史代『夕凪の街』


第二部 作品論

第一章 話者はどこにいるのか
1 話者を探す――藤子・F・不二雄『ドラえもん』
2 話者の不在――吾峠呼世晴『鬼滅の刃』

第二章 環世界のなかの三項関係
3 三項関係の速さ――宍戸左行『スピード太郎』
4 「あ」の対象――樺島勝一・織田小星『正チャンの冒険』宍戸左行『スピード太郎』大城のぼる『汽車旅行』
5 隠される対象――手塚治虫・酒井七馬『新宝島』
6 「オーイ」の聞き手――田河水泡『のらくろ』宍戸左行『スピード太郎』手塚治虫・酒井七馬『新宝島』
7 環世界を係留するものたち――手塚治虫・酒井七馬『新宝島』

第三章 対象の描き方
8 スリップする紙片――藤子不二雄Ⓐ『まんが道』藤本タツキ『ルックバック』
9 対象のそばのフキダシ――白土三平『忍者武芸帳 影丸伝』
10 話者と対象の揺れ――高橋葉介『腹話術』
11 料理を語る声――牛次郎・ビッグ錠『包丁人味平』
12 紙の上の調理――ラズウェル細木『酒のほそ道』
13 複数の機能を担うフキダシ――オノ・ナツメ『リストランテ・パラディーゾ』

第四章 聞き手の拡がり
14 ゆうれいの声――赤塚不二夫『もーれつア太郎』
15 フキダシは誰にきこえているか――高橋留美子『めぞん一刻』
16 はみだすフキダシ――志村貴子『放浪息子』
17 宛先を誤読する――尾田栄一郎『ONE PIECE』
18 声と手話の時間――大今良時『聲の形』

第五章 内言と語り
19 コマに放たれる内言――水木しげる『河童の三平』
20 フキダシの消失と再生――樹村みのり『こうふくな話』藤本タツキ『ルックバック』
21 内言の多層化――ろびこ『となりの怪物くん』
22 フォントの横溢と分岐――羽海野チカ『3月のライオン』
23 語りを破る声――楳図かずお『漂流教室』『神の左手悪魔の右手』『おろち』

第六章 視覚装置の視認
24 フキダシに気づく――宍戸左行『スピード太郎』手塚治虫・酒井七馬『新宝島』
25 テレパシーのマンガ表現――手塚治虫『来るべき世界』
26 無声伝心の法――白土三平『忍者武芸帳 影丸伝』
27 内言を読む人――遠藤達哉『SPY×FAMILY』
28 別のコマを見る――三原順『はみだしっ子』
29 マンガの直接話法――高橋真琴『パリ〜東京』
30 沈黙と饒舌――ヤマザキマリ、とり・みき『プリニウス』

第七章 フキダシの産み出す環世界
31 フキダシの作る奥行き――田河水泡『のらくろ』
32 フキダシの3D空間――大童澄瞳『映像研には手を出すな』
33 花とフキダシ――美内すずえ『ガラスの仮面』
34 触覚的内言――高橋真琴『さくら並木』
35 韻と漫符――こうの史代『ギガタウン  漫符図譜』
 

付 論 画中スピーチの歴史
 


あとがき
初出一覧
引用図版一覧
参考文献

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[著者]細馬宏通(ほそま・ひろみち)
1960 年生まれ。行動学者。早稲田大学文化構想学部教授。著書に『絵はがきのなかの彦根』(サンライズ出版 2007)、『浅草十二階 増補新版』(青土社 2011)、『今日の「あまちゃん」から』(河出書房新社 2013)、『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか』(新潮選書 2013)、『介護するからだ』(医学書院 2016)、『二つの「この世界の片隅に」』(青土社 2017)、『いだてん噺』(河出書房新社 2020)、『絵はがきの時代 増補新版』(青土社 2020)、『うたのしくみ 増補完全版』(ぴあ 2021)など多数。