定価2,090円(本体1,900円)
発売日2023年5月29日
ISBN978-4-7917-1447-6
私たちを〈無知〉へ追いやるものは何か
科学は知識を生み出すものでありながら、同時に無知も作り出してきたのではないか――こうした反省から出発した無知学は、従来の科学史の再解釈を試みる。それは私たちを無知でいさせようとする有形無形の圧力を明らかにする学問であり、それに対抗するための運動でもあるのだ。本特集では無知学から広がり、様々な分野から知と無知のあり方を問う。
[目次]
特集*無知学/アグノトロジーとは何か――科学・権力・社会
【討議】
無知の力と新しい啓蒙 / 隠岐さや香+塚原東吾
【無知学とは何か】
無知学(アグノトロジー)の現在――〈作られた無知〉をめぐる知と抵抗 / 鶴田想人
無知が作られているとき――対談 / P・ギャリソン+R・プロクター(村瀬泰菜+岡本江里菜訳・解題)
【〈知らないこと〉の科学】
無知をめぐる断想 / 野家啓一
「ポスト・ヒューマン」の無知学 / 樋口敏広
無知の大海に目を凝らす――一九五〇年代の生物学的知の軌跡 / 飯田香穂里
原爆後障害をめぐる「無知」と「知識」――ABCCの疫学研究と研究材料としての被爆者 / 中尾麻伊香
結核患者のバイオソシアリティと選択的無知――大正末期の患者雑誌に集う人々 / 宝月理恵
【エッセイ】
星占いのブラックボックス / 石井ゆかり
【生存の不均衡】
消されたパンデミック――「スペイン風邪」と女性参政権運動 / 小川眞里子
強制収容所の女性同性愛者を掘り起こすこと――クィア・ヒストリーとアグノトロジー / 弓削尚子
無知としての道徳と自由――啓蒙期フランス博物学における女性と猿 / 大橋完太郎
無知学からみた沖縄の基地問題と課題 / 西山秀史
「新鮮な果物と野菜」で肥満問題は解決できるか?――食と健康をめぐる知識のポリティクス / 碇陽子
【社会実装を試みる】
無知学と科学政策と科学哲学の接続 / 清水右郷
RRIの哲学に向けて――ドゥルーズを手がかりに / 得能想平
知らないでいることの恩恵と価値――規範的非知論の挑戦 / 井口暁
解釈的不正義という無知 / 飯塚理恵
世界の暗さと緩慢さ――市民科学の方向性 / 吉澤剛
【問い直される知のかたち】
知らないということ――ソクラテスの哲学を究める / 納富信留
知の共異性をめぐって――アグノトロジーと存在論の人類学 / 石倉敏明
法における知と無知の配置 / 吉良貴之
【連載●科学者の散歩道●第九三回】
「真の」理論と「良い」理論――概念の「粒度」と個物 / 佐藤文隆
【連載●「戦後知」の超克●第二九回】
見田宗介の「近代」と「現代」 1 / 成田龍一
【連載●社会は生きている●第一一回】
主体の生態社会学 9――主体の階層性 / 山下祐介
【研究手帖】
美・健康・絶対なるもの? / 足立恵理子