新・空海論

-仏教から詩論、書道まで-

竹村牧男 著

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新・空海論

定価4,620円(本体4,200円)

発売日2023年6月9日

ISBN978-4-7917-7558-3

真言と曼荼羅から、その壮大な人間観と世界観をあきらかにする。
即身成仏や曼荼羅思想といった深い哲学性をおびた密教思想を日本にもたらし、さらにはその詩や書によって文化にも多大な影響をあたえた空海。空海とはいったい何者なのか、そしてその哲学の核心とは何か。奇蹟のような生涯と圧倒的な思想の深淵を紐解くと、そこには現代にも通じる「共生」の思想を高らかにうたいあげる豊穣なる宇宙が広がっていた。仏教思想研究の第一人者がのめりこむようにしてすくいとった巨人の思想、その結晶。

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[目次]

はじめに

第Ⅰ部 空海という人
第一章 長安往還の旅について
空海の生涯/遣唐使に随行する/大陸への渡海/長安に入る/
般若三蔵にインド仏教を学ぶ/恵果阿闍梨に入門/密教の大法を受けついで/
帰朝の途へ/むすび

第二章 もう一人の師・般若三蔵
はじめに/般若三蔵との縁/『守護国界主陀羅尼経』に関して/
『六波羅蜜経』に関して/『大乗本生心地観経』に関して/
四十巻『華厳経』に関して/むすび

第三章 最澄との交流と別離
はじめに―日本仏教の源流としての最澄と空海/最澄の生涯/
最澄と空海の出会い/最澄、空海に接近する/最澄、空海から灌頂を受ける/
最澄と空海との関係は変化へ/空海の不惑と詩の贈答/
最澄の弟子・泰範帰山の要請をめぐって/別れの時とそれぞれの道/むすび

第Ⅱ部 空海の密教思想
第四章 空海の著作の概要
はじめに/『三教指帰』/『御請来目録』と『秘密漫荼羅教付法傳』/
『弁顕密二教論』/『即身成仏義』/『声字実相義』/『吽字義釈』/
『秘密曼荼羅十住心論』と『秘蔵宝鑰』/『般若心経秘鍵』/『三昧耶戒序』/
他の著作

第五章 十住心の思想
はじめに/『秘蔵宝鑰』の序の詩について/『秘蔵宝鑰』に見る十住心/
『十住心論』の九顕十密の立場

第六章 真言密教とは何か―顕教と密教
秘密ということ/密教とは、どういう教えなのか/
真言とは何か―果分可説の言語/法爾常住の言語/一字に無辺の義がある/
字相と字義について/種子(種字)としての字/
法身説法について―『大日経』「住心品序分」の内容/
『大日経疏』の解説の特色/空海の「序分」解釈の特色/三密による説法/
「平等句の法門」の世界/法身説法と他受用身等の説法/むすび

第七章 曼荼羅思想の核心
曼荼羅の意味/胎蔵曼荼羅と金剛界曼荼羅/自己の心の中の曼荼羅/
『即身成仏義』が明かす曼荼羅世界/
『吽字義釈』、『秘蔵宝鑰』に見る曼荼羅構造/
「即身成仏」の「成仏」の意味/空海における「成仏」の意味/
四種曼荼羅とは何か/四種曼荼羅の交響/『十住心論』の「帰敬頌」の世界

第八章 密教の行の諸相
結縁灌頂について/『五秘密儀軌』の修法の内容/阿字観について/
三密行について/三密加持の世界/五相成身観について/密教の覚りとは/
真言の受持―『十住心論』の秘密釈/むすび

第Ⅲ部 空海の学芸
第九章 空海の詩の宇宙

空海の名文の世界/無常観から仏道へ/空海四十歳時の感興の詩/
空海の詩才について/密教教理の詩的表現/空海の詩論について/
詩情の身体性について/空海の詩の根源―法身説法の詩境

第十章 空海の書の境涯
はじめに―空海と書について/長安における書の学修/
空海の書における中国能筆の影響について/空海の草書について/
嵯峨天皇の書道/空海の書論の背景/
空海の書論「勅賜屏風書了即献表并詩」/空海の書に対する根本姿勢/
むすびに代えて

おわりに

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[著者]竹村牧男(たけむら・まきお
1948 年東京生まれ。1971 年東京大学文学部卒業、75 年同大学院印度哲学専修博士課程中退。三重大学助教授、筑波大学教授、東洋大学教授、東洋大学学長を歴任。東洋大学名誉教授。専門は仏教学、宗教哲学。唯識思想研究で博士(文学)。著書に『唯識の構造』(春秋社、1985)、『華厳とは何か』(春秋社、2004)、『西田幾多郎と鈴木大拙』(大東出版社、2004)、『入門 哲学としての仏教』(講談社現代新書、2009)、『『大乗起信論』を読む』(春秋社、2017)、『空海の哲学』(講談社現代新書、2020)、『空海の言語哲学』(春秋社、2021)、『唯識・華厳・空海・西田』(青土社、2021)『空海の究極へ』(青土社、2022)、『井上円了 その仏教思想』(青土社、2022)ほか多数。