定価2,090円(本体1,900円)
発売日2023年2月27日
ISBN978-4-7917-1443-8
世界の描き方を変える思想
昨年10月に惜しくも逝去したブルーノ・ラトゥール。20世紀後半以降の社会科学のあり方を刷新した「アクターネットワークセオリー(ANT)」の提唱者の一人としても知られる彼の思想は、科学・宗教・戦争・法など多様な領域を超えて、私たちの生きる「近代」を常にラディカルに問い直し続けるものだった。本特集ではその歩みの全貌をたどりなおすとともに、諸分野におけるANTの最新の展開を一望することを通じ、ラトゥールの遺したインパクトとアクチュアリティを多角的に検証したい。
[目次]
特集*ブルーノ・ラトゥール――1947-2022
【翻訳】
地球に住む(抄) / B・ラトゥール+N・トリュオング(聞き手)/池田信虎+上野隆弘訳
ブリュノ・ラトゥール──近代の妄想 ブリュノ・ラトゥールの哲学的遺産 / G・ハーマン/飯盛元章訳
【肖像】
ラトゥールとは誰か──総説 / 福島真人
媒介子・フラット・ポストモダン――ラトゥールとフランス哲学 / 檜垣立哉
現代のエコロジー危機とブルーノ・ラトゥール / 村澤真保呂
ノンモダン・ノーマンズランド / 久保明教
【軌跡】
ラトゥールの戦争――存在の政治性と「政治を不可能にする」意志について / 田中祐理子
フェティッシュ・フェティシズム・ファクティッシュ / 佐々木雄大
『存在様態探求』に照らして呪術の実践を考える / 春日直樹
ラトゥールの『地球に降り立つ』を読む――「テレストリアル」の科学と特異なるものの多様体 / 近藤和敬
「地球への私たちの帰属を再物質化せよ」――ブルーノ・ラトゥールの警告 / 川村久美子
テレストリアルたちのパンデミック / 浜田明範
【共鳴】
「とんでもなくもつれあっているのに全然違うし」――フェミニストにして動的協働体、ブリュノ・ハラウェイ / 逆卷しとね
ミシェル・セールから見るブリュノ・ラトゥール――科学的精神からハイブリッドへ / 縣由衣子
タルドのモナド、ラトゥールのプラズマ――アクター・ネットワークの外部に残るもの / 中倉智徳
非ネットワーク的外部へ――ラトゥール、ホワイトヘッド、ハーマンから、破壊の形而上学へ / 飯盛元章
〈媒介〉が開く知の光景――ラトゥールと田辺哲学と現象学の交叉点 / 田口茂
ラトゥールの〈形而上学〉――アクターネットワーク理論と社会システム論 / 大黒岳彦
【展開】
一介のアリ(ant)であり続けることの意味と意義――運動体としてのアクターネットワーク理論の現在とこれから / 栗原亘
生命の薄膜――ラトゥールとマルチスピーシーズ人類学 / 奥野克巳
アクターネットワーク理論と記述的社会学の復権 / 伊藤嘉高
何とも言えぬ何かの群れに囲繞される(こともある)私たち――プラズマ、無関係、妖怪、怪奇的自然、幽霊、ぞっとするもの、エクトプラズム、タンギー / 廣田龍平
書記技術のマテリアリズム――ブリュノ・ラトゥールのメディア論のために / 岡澤康浩
アリのラトゥール化(再帰ループ一周分の遅れ) / 中井悠
応用領域会計学の世界から――ラトゥールを偲ぶ / 堀口真司
【特別寄稿●追悼*磯崎新】
歴史を現代と接続させ、未来に解き放つ / 五十嵐太郎
境界線を引く場所――磯崎新のパートナーシップ / 松井茂
翁の後髭(うしろひげ) / だつお/青柳菜摘
【連載●科学者の散歩道●第九〇回】
量子力学の観測者に見るマッハ残照――アインシュタインとマッハの四つの時期 / 佐藤文隆
【連載●「戦後知」の超克●第二六回】
柄谷行人における「世界史」の問い方 9――その「起源」と「構造」 / 成田龍一
【連載●社会は生きている●第八回】
主体の生態社会学 6――主体の系譜 / 山下祐介
【研究手帖】
日常に潜む畏敬の念と心理学実験 / 高野了太