定価5,940円(本体5,400円)
発売日2022年11月21日
ISBN978-4-7917-7512-5
テクノロジーは社会主義の夢を描けたのか?
1970年代前半、民主的選挙によって選ばれたチリの社会主義政権は、サイバネティックスを使って国家経済を統制するという未知の挑戦に乗り出した。チリ独自の社会主義という政治的な理想と、「サイバーシン計画」という技術革新とが交差するところに、いったい何が生じたのか。そして、米国の「見えざる封鎖」の中、どのような運命を辿ったのか。関係資料や関係者への聞き取り調査から、歴史の裏側で進行したテクノロジーの試みの全貌を引き出し、数々の学術賞を受賞した圧倒的労作。
[目次]
序文
謝辞
略称とその正式名称
プロローグ
序章 政治的および技術的ヴィジョン
チリのサイバネティックス/本書の構成
第一章 サイバネティックスと社会主義
スタッフォード・ビア/サイバネティックス/経営サイバネティックス/サイバネティックスとチリの社会主義/ビアの新しいモデル/サイバネティックスと社会主義を結びつける
第二章 生産闘争におけるサイバネティックス
アジェンデ最初の年/チリにおけるコンピューティングの文脈/科学的文脈
第三章 ネットワークの設計
適応的経済の技術/社会主義の技術/ビアとアジェンデ/プロジェクト発進/エル・アラヤン/一九七二年三月/サイバーシン計画/サイバーフォーク計画/ヴィジョンを実現する
第四章 「自由機械(リバティ・マシン)」の構築
文化の創造/技術移転/社会主義をデザインする/政治と実践/大衆化のテクノロジー/「時間厳守(ビート・ザ・クロック)プログラム」/政治的課題と技術的課題
第五章 十月ストライキ
政治とサイバーシン・チーム/十月ストライキ/サイバーシンとストライキ/新大臣/ビアの「〈再帰〉の新たな水準」/矛盾の技術
第六章 サイバーシンの公開
「サイバーシン計画」を巡る論争/政治的な生存可能性と技術的な生存可能性/革命の道具/ラス・クルーセス/民主主義への道程の終焉/技術と政治
第七章 結論――技術・政治・歴史
エピローグ サイバーシンの遺産
付録一 チリ国営経済の構造
付録二 コンピュータとチリ国家に関する年表(一九二七〜六四年)
原註
書誌情報
訳者解説
索引
[著者]エデン・メディーナ Eden Medina
1976年生まれ。マサチューセッツ工科大学(MIT)でPh.D.を取得。現在、MIT科学技術社会論(STS)准教授。同校で「社会情報学」「コンピュータと情報倫理」「テクノロジーの地理学」などの講義科目を担当している。本書『サイバネティックスの革命家たち』は、技術史関連の優れた研究に贈られるエーデルスタイン賞、コンピューティングの歴史分野における傑出した仕事に贈られるコンピュータ歴史博物館賞、ラテンアメリカ研究協会「近代史と記憶」部門の書籍賞(佳作)を受賞している。
[訳者]大黒岳彦(だいこく・たけひこ)
1961年香川県生まれ。哲学者。東京大学教養学部卒業。同大学院理学系研究科(科学史・科学基礎論専攻)博士課程単位取得退学。1992年日本放送協会(NHK)に入局、番組制作ディレクターを務める。退職後、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専門は哲学、情報社会論。現在、明治大学情報コミュニケーション学部教授。主な著書に『情報社会の〈哲学〉――グーグル・ビッグデータ・人工知能』(勁草書房)、『ヴァーチャル社会の〈哲学〉――ビットコイン・VR・ポストトゥルース』(青土社)などがある。