定価1,980円(本体1,800円)
発売日2022年8月29日
ISBN978-4-7917-0421-7
日本の“映画”は“Jホラー”である
『リング』『呪怨』の公開から20年あまり、いまも“Jホラー”の文脈はたしかに息づき、ジャンル映画以上の形式を確固としたものとしながら、さらなる実験をつづけている。9月には片岡翔監督『この子は邪悪』(9月1日公開)、高橋洋監督『ザ・ミソジニー』(9月9日公開)、中田秀夫監督『“それ”がいる森』(9月30日公開)の公開が控え、今秋には『貞子DX』が待っている……。Jホラーはいまもたしかにここにある。そこではなにが起きているのか、恐れずふり返ってみるとしよう。
【目次】
特集*Jホラーの現在——伝播する映画の恐怖
❖インタビュー
恐怖の感覚のありか / 高橋洋 聞き手=宮本法明
❖どこから来たのか、どこへ行くのか
母娘と「うつす」こと——高橋洋の映画世界における女性性の考察 / 木下千花
生まれることは呪われること——Jホラーの妊娠をめぐる表象 / 宮本法明
「復興運動」としてのJホラー——幽霊映画の埋もれた水脈とシネマの妄想 / 横山茂雄
〈怖れるもの〉から〈怖れられるもの〉へ——『霊的ボリシェヴィキ』の霊術的根拠 / 栗田英彦
❖Jホラーは見つめ返す
『ほんとにあった怖い話』——再発DVD、再認識、その真価! / 鶴田法男
霊的マイノリティーが問う「体感的霊障はJホラー作法で表現可能なのか?」問題 / 三宅隆太
呪いのその先を歩く / 中川奈月
❖マンガ
はじまりのJホラー / 椎名うみ
❖貞子と伽椰子に導かれて
『リング』という希望 / 郡司ペギオ幸夫
怨霊たちのいるところ——『リング』と『呪怨』のリメイク比較 / 小澤英実
「呪怨シリーズ」と永遠回帰の思弁的再解釈 / 仲山ひふみ
「災厄」としての妊娠・出産——ドラマ『呪怨 呪いの家』におけるジェンダー / 橋迫瑞穂
❖創作
『幽霊菌』と密室の謎 / 大島清昭
❖Jホラーよ、憑依せよ
映画版の貞子が幽霊の目撃に影響があった? / 田辺青蛙
ホラー映画に何が求められているのか / 芦花公園
❖日本の映画はおそろしい
仄暗い水の底からの叫——団地映画としてのJホラー / 今井瞳良
上半身と下半身の「あいだ」——黒沢清『予兆 散歩する侵略者』における歩行と手 / 早川由真
「生き返り」の幻視——ホラー映画の手前で / 川崎公平
蜂起せよ、と女優霊は言った / 田村千穂
Jホラーにおけるいくつものジェンダー化された空間(gendered spaces)——映画『劇場版 零 ゼロ』の〝女子だけの世界〟 / リンジー・ネルソン 訳=吉田育未
Jホラーとゾンビが接するところ / 福田安佐子
❖いまここにある恐怖
今もなお 無気味なもの / 小中千昭
〈恐怖〉にアクセスするための回路——『リング』『残穢』そして『裏バイト:逃亡禁止』へ / 佐々木友輔
❖戦慄の領域へ
地理学で読み解く『呪怨』と「恐怖の村」 / 鈴木晃志郎
村と駅——ネット怪談における異界的儀礼と異世界的バグの存在論 / 廣田龍平
解放区 / 逆卷しとね
Jホラーの何が心霊実話なのか?——実話怪談、ドキュメンタリー、心霊写真 / 高田敦史
❖座談会
恐怖の果ての果てまで / かぁなっき×寺内康太郎×皆口大地
❖Jホラーを観測する
「呪いのビデオ」の現在地——氾濫する心霊ビデオたち / 鈴木潤
「Jホラーゲーム」は可能か?——メタ・インターフェースと降霊としてのプレイ / 向江駿佑
『真景累ケ淵』と『怪談』における恐怖の語り——Jホラーは怪談噺の夢を見るか? / 斎藤喬
霊と籤——写真と霊のあらわれの演劇性または意図性について / 大岩雄典
死の投影者(projector)による国家と死——〈主観性〉による劇空間ならびに〈信〉の故障をめぐる実験場としてのホラーについて / 山本浩貴(いぬのせなか座)
❖資料
Jホラーの現在をめぐる作品ガイド / 藤原 萌+宮本法明
❖忘れられぬ人々*11
故旧哀傷・小林昭 / 中村稔
❖物語を食べる*20
二本足の豚たちが動物農場をゆく /赤坂憲雄
❖詩
ここにいる人たちはみんな回転するものが、自動的に回転するものが好きだ / 山田亮太
❖今月の作品
たかすかまさゆき・小川芙由・奥山紗英・広橋山羊 / 選=大崎清夏
❖われ発見せり
赤子と青豆 / 秋元陽平
表紙・目次・扉……北岡誠吾
表紙図版……『ザ・ミソジニー』9月9日(金)シネマカリテほか全国順次ロードショー ©︎2022『ザ・ミソジニー』フィルムパートナーズ