現代思想2022年7月臨時増刊号 総特集=遠野物語を読む

  • はてなブックマークに追加
  • LINEでシェア
  • Google+でシェア
現代思想2022年7月臨時増刊号 総特集=遠野物語を読む

定価2,860円(本体2,600円)

発売日2022年6月14日

ISBN978-4-7917-1432-2

「語り」が「物語」になるとはどういうことか
いまから112年前、佐々木喜善という若者が語り、柳田國男が筆録してなった『遠野物語』。日本民俗学の記念碑的史料として、ときに巨大な背景をもつ文学作品として読まれ続けてきたこのテクストに、いまなお多くの人びとがひきつけられている。語り継ぐとはなにか、物語とはなにか、そして私たちはそれとどのように向き合えばいいか――。岩手の遠野につたわる伝承が「物語」として私たちの前にあらわれた奇跡を、いまあらためて考える。
line2.gif

【目次】

 

総特集*遠野物語を読む

 

【遠野物語へ】
赤坂憲雄 山人とはだれか
吉増剛造 ト―ノ=ノ―ト
近衛はな 声と文字のあいだに目を凝らす
大橋 進 一遠野人の『遠野物語』観――佐々木喜善はたんなる話し手か
鵜野祐介 『遠野物語』の人間学へ――「きくこと」をめぐる断想
安藤礼二 遠野(トー・ナイ)、山に囲まれた高原の湿地――考古学と人類学の交点

【討議】
赤坂憲雄×小田富英×三浦佑之 『遠野物語』という小さな奇跡――「語り」が「物語」になり語り継がれること

【かたり・ものがたり・ことば】
永池健二 柳田国男はなぜ『遠野物語』を書いたのか
兵藤裕己 『遠野物語』の文体――この書は「現在の事実」なり
藤井貞和 『遠野物語』と「今は昔」
新井高子 女と土地ことばから『遠野物語』を考える

【遠野物語の可能性】
藤原辰史 官僚文学論――『遠野物語』の報告書的性格について
平藤喜久子 比較神話学から読む『遠野物語』
メレック・オータバシ 世界文学としての『遠野物語』
岩宮恵子 『遠野物語』と心理療法――異質なものとの遭遇という思春期心性の視点から
岡安裕介 『遠野物語』を読む――感じたるままに

【遠野物語と出会う】
瀬尾夏美 その姿勢を引き継いで、旅をする
寺尾紗穂 山姥 曖昧な境に立つ女
新井卓 炭取をまわす死者たち――『遠野物語』とモノ、イメージ、浦田穂一をめぐる覚書

【遠野物語をどう読むか】
小田富英 謎解き「原本 遠野物語」
三浦佑之 三島由紀夫と廻る炭取り
福嶋亮大 近代文学としての『遠野物語』――独歩から柳田へ
岡村民夫 宮沢賢治と遠野物語的世界
斎藤英喜 折口信夫は『遠野物語』をいかに読んだのか――「先生の学問」、あるいは平田篤胤・宮地厳夫・心霊研究

【歴史・記憶・深層】
北原モコットゥナ アイヌ文化と『遠野物語』
石井匠 遠野と「縄文」/遠野物語
今石みぎわ 『遠野物語』の死と野生――序文の「獅子(しし)踊り」をめぐって
川野里子 空間の運動体としての『遠野物語』――「山」、「家」、「遠野」
リンジー・モリソン 野が叫ぶテクスト――『遠野物語』とノスタルジアをめぐって

【遠野物語の世界】
鈴木正崇 早池峯山と『遠野物語』
岩田重則 怪談として読む『遠野物語』――増殖する共同幻想
菱川晶子 『遠野物語』の中の狼――その実像を追って
石橋直樹 ザシキワラシ考――不在を〈語る〉ということ

 

装丁=水戸部功
表1・2写真=柳田國男「毛筆草稿」第六三話・第六四話(部分)
写真提供:遠野市立博物館