定価1,650円(本体1,500円)
発売日2022年5月27日
ISBN978-4-7917-1431-5
肉を食べることはイデオロギーか?
前世紀の終わりに肉食の問題は動物実験や工業畜産を背景に、動物の解放ないし動物の権利の問題として論じられた。しかし最近では「肉食主義」という概念に基づく議論が注目を集め、また環境主義的菜食主義の登場や培養肉の開発など、状況は大きく変わりつつある。本特集では〈肉を食べること〉の行方を問う。
[目次]
特集*肉食主義を考える――〈ヴィーガニズム・培養肉・動物の権利…人間-動物関係を再考する
【討議】
なぜ私たちは肉を食べることについて真剣に考えなければならないのか / 伊勢田哲治+井上太一
【動物倫理の最前線】
肉食主義(カーニズム) 「そういうことになっているから……」 / M・ジョイ(玉木麻子訳)
動物のウェルフェアをめぐる理解と肉食主義 / 久保田さゆり
肉を食べないことと哲学的な生活への問い――思考と生活1996–2022 / 池田喬
【新たな〈肉〉のゆくえ】
コオロギは肉食のジレンマを解決するのか / 大森美香
「肉を食べる/食べない」のこれまでとこれから――“新しい肉”の受容とおいしさ / 石川伸一
セルフィリア――〈培養サケ〉が問う食の情動とドメスティケーション / 吉田真理子
培養肉的生と付き合う / 福永真弓
食をめぐる言葉と思想――殺生禁断の現在 / 小泉義之
肉食言語批判 / 伊藤潤一郎
静寂の理由――ドキュメンタリー映画『いのちの食べかた』(二〇〇五)と屠畜をめぐる語り / 信岡朝子
食べられるものたちから世界の見方を学び直す――個体主義的世界観から多元的コスモロジーへ / 黒田昭信
【伴侶か隣人か、それとも…】
人と動物をめぐる揺らぎと対等性についての一考察 / 一ノ瀬正樹
培養肉についての考察 / 藤原辰史
「普通」で「自然」な人間と動物の関係とは? / 熊坂元大
【飼育──この奇妙な関係】
動物嫌悪と肉食主義の共生成――いのちと再び出逢い直すために / 比嘉理麻
ポスト・ドメスティケーションの時代――野生性を保持する思考 / 卯田宗平
動物園・水族館と「肉食」――歴史でたどる「見ること」と「食べること」のかかわり / 溝井裕一
持続可能な食肉からエコロジー社会へ――マリー=モニク・ロバン『パンデミックの生産』の世界 / 太田悠介
【〈食う〉ことの人類誌】
つながりとしての肉食 / 山口未花子
肉食にもとめられる開かれた議論 / 野林厚志
【連載●タイミングの社会学●第一七回】
根こぎ 1――強制撤去の日々 / 石岡丈昇
【研究手帖】
自然主義の徹底としての汎心論 / ジミー・エイムズ