定価2,420円(本体2,200円)
発売日2022年4月19日
ISBN978-4-7917-7461-6
95歳の詩人の瞠目すべき
みずみずしく緊迫した心情と
深沈たる声調の詩篇
ファンタスティックな「冥土」の光景を描いた第Ⅰ部、日常の中において生と死、自然、社会を凝視し、想念をめぐらした詩篇を収める第Ⅱ、Ⅲ部、東日本大地震の災害と被災者に思いを寄せた第Ⅳ部に分かち収めた七六篇からなる新詩集。
[目次]
Ⅰ 冥土
冥土(一)
冥土(二)
冥土(三)
冥土(四)
冥土(五)
冥土(六)
冥土(七)
冥土(八)
冥土(九)
冥土(一〇)
Ⅱ 樹
二〇二一年一二月の風景
集中豪雨
ケヤキ枯葉との対話
日没の海辺で
樹
カワセミ街道
ぼく自身
集団的自衛権
蜂蜜のある人生
コブシの咲くころまで
ある別れの風景 フランク、「ヴァイオリン・ソナタ」に触発されて
Ⅲ 寂かな場所へ
晩秋悲歌 磯輪英一さんの死に
那須高原・一月
晩夏悲傷
初冬感傷
葬列の続く日々 岸薫夫のための挽歌
風が立つと、私はいつも
挽歌 萩原雄二郎のために
自戒のために
私・十月の風景
玄冬沈思
文明のさいはてのとき
わが生の行方に
晩秋小閑 カワセミ街道
晩秋小閑
初冬感懐
三月、ヤブツバキの散るころ
四月・大宮公園
鳥の眼に映る風景
雨蕭々
雪
晩秋小感
五月の那須高原
晩秋感懐
月の光 ドビュッシーに寄せる
月明り
蟻たちの群がる風景
梅雨の明ける前
晩夏、渡りゆく風に
ハギの花々に
二〇二〇年五月
黄金期
凩にしごかれながら
寂かな場所へ
精霊との別れ
カワセミのはばたき
ヤブツバキ・二月
四月・満開のサクラの根方で
四月下旬・若葉の行方
夕映えのケヤキに
生のこっち側で
吾ひとり生きながらへて
満開のミモザに
ある川の一生
Ⅳ 三・一一東日本大震災のかたみとして
三陸海岸風景
私は物言うのを止めねばならぬ
駅前広場・未来風景
原発建屋のある風景
三月、海のほとりに
浮遊する原発建屋
めぐりくる三月十一日に
三・一一を前に
また三・一一のために
群青の海に
三陸海岸・未来風景
永遠の旅人
後記
[著者]中村稔(なかむら・みのる)
1927年、埼玉県大宮生まれ。詩人・弁護士。一高・東大法学部卒。『世代』同人。1950年、書肆ユリイカから詩集『無言歌』を処女出版。詩集『鵜原抄』(高村光太郎賞)、『羽虫の飛ぶ風景』(読売文学賞)、『浮泛漂蕩』(藤村記念歴程賞)、『言葉について』(現代詩人賞)、伝記『束の間の幻影 銅版画家駒井哲郎の生涯』(読売文学賞)、自伝『私の昭和史』(朝日賞、毎日芸術賞、井上靖文化賞)ほか、著書多数。