定価2,200円(本体2,000円)
発売日2022年4月19日
ISBN978-4-7917-7462-3
エルヴィス・プレスリーの完全復活、そのはじまりの物語——
1968年12月3日に放送された伝説のテレビ番組『’68カムバック・スペシャル』。長い空白期間を越えて、かつての野性的で挑戦的なロックンローラーの姿がそこに映し出された。この番組の根底には、人類の苦悩と悲しみを越える、エルヴィスの平和への普遍的なメッセージが流れていた。番組の舞台裏を、あらゆる資料と、ディレクターへの取材を通して描き出す。エルヴィスは何を思い、どこへ向かおうとしたのか。撮影の日々の知られざるエピソード、そしてエルヴィスの完全復活のはじまり。
[目次]
プロローグ 伝説のテレビ番組
大型トリビュート番組/『カムバック・スペシャル』、三三歳のエルヴィスが世界に放つ愛と平和のメッセージ
第1章 メイキング・オブ・カムバック・スペシャル——番組制作を支えた人々
伝説の番組の舞台裏へ/エルヴィス・ワンマン・ショーの構想/プロデューサー/エルヴィス、ビンダーと会う
第2章 撮影の日々を追いかける——一九六八年六月
六月二日/六月三日/六月五日/六月一〇日/六月一一日/六月一二日/六月一七日/六月一九日/六月二〇日/六月二一日/六月二二日/六月二三日/六月二五日/六月二六日/六月二七日/六月二八日/六月二九日/六月三〇日
第3章 トム・パーカーをめぐって——大佐と番組制作者たちのかけ引き
パーカー大佐とビンダーとエルヴィス/パーカー大佐とフィンケル/大佐とビンダー/“If I Can Dream”をめぐって/パーカー大佐のマジック・パワー/知られざるパーカー大佐の素顔
第4章 エルヴィスの生まれた場所——ミシシッピの小さな村から
ルーツをたどる/エルヴィス誕生物語/誕生の地イースト・テュペロ/親都市テュペロと南北戦争/復興と不況/巨大トルネード/事件/教会/エルヴィスのルーツ/母方の家系図/父方の家系図
第5章 テュペロ時代——エルヴィス、音楽に目覚める
歌と出会い、ギターと出会う/テュペロの電波事情/シェイク・ラッグの世界との遭遇/音楽への目覚め/メンフィスへの旅立ち
第6章 エルヴィス・クレイズの爆発——こんなにすごい光景は見たことがない!
全米ヒットのカギはテレビにあり?/「反エルヴィス」の声/エド・サリヴァン・ショー/「谷間の静けさ」/アメリカ文化のなかのエルヴィス/「こんなにすごい光景は見たことがない!」
第7章 大地のリズム、メンフィスに轟く——ビール・ストリートから聞こえる音
戦後アメリカの構造転換/農業移民、都市へ移住/農民たちがもたらしたもの/ローダーデイル・コーツ/はじめてのレコーディング/「シットダウン・ショー」/ふたたび、一九五四年/サン・スタジオでの熱い夜/「これはデカいヒットになる!」
第8章 ゴスペル・メドレーにこめられたもの——宗教歌に育てられ、見送られたエルヴィス
評価が分かれるゴスペル・セグメント/ゴスペル・セグメントの構想/エルヴィスの信仰/ゴスペル歌手を夢見て/ディキシーと過ごした日々/エルヴィスとJ・D・サムナー/人生最大の試練と祝福と/コンサートに捧げる人生/突然の死/ゴスペルに育てられ、ゴスペルに見送られた生涯
第9章 “If I Can Dream”——分断されたアメリカ社会に捧げる祈り
番組のメッセージが立ち上がったとき/ロバート・ケネディ暗殺の衝撃/一九六〇年代のアメリカ
キング牧師暗殺の衝撃/謎につつまれた事件のその後/ビンダーの回想
エピローグ エルヴィスが社会を動かした——その声は今日のBLM運動に
「こんな危険な音」がはじまりだった!/ブラウン判決、そして時を同じくして生まれたロックンロール/草の根の公民権運動/エルヴィス革命のはじまり/ロックンロールを〝発明した〟男/抜き取られたゴスペル、ブルースの魂/公民権運動の本格化/ロックンロールと南部社会/エルヴィスが社会を動かした/“If I Can Dream”再考
参考文献
あとがき
[著者]前田絢子(まえだ・あやこ)
東京都生まれ。フェリス女学院大学名誉教授。専門は現代アメリカ文学・文化、とくにアメリカ南部研究。早稲田大学文学部卒業。同大学院文学研究科博士課程修了。フェリス女学院大学文学部教授として教鞭を執った。日本におけるエルヴィス・プレスリーの研究家としても知られ、1998年にミシシッピ大学で開催されたエルヴィス・プレスリー世界会議にゲスト・スピーカーとして招かれている。主な著書に『エルヴィス、最後のアメリカン・ヒーロー』(角川選書)、『エルヴィス雑学ノート』(ダイヤモンド社)など、主な訳書にピート・ダニエル著『失われた革命』、マイケル・T・バートランド著『エルヴィスが社会を動かした』(いずれも青土社)などがある。