窓の環境史

-近代日本の公衆衛生からみる住まいと自然のポリティクス-

西川純司 著

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窓の環境史

定価3,080円(本体2,800円)

発売日2022年3月25日

ISBN978-4-7917-7458-6

住まいの生権力からうかびあがる、日光・空気・紫外線の統治
人びとは自身の生をケアするために、環境に依存して生きている――。そして住まいという場こそ、人間/非人間をめぐるポリティクスをとらえる磁場となるのだ。人びとと医療をめぐる忘れ去られた歴史がここにひらかれる。人新世時代にとらえなおす、エコロジーをめぐる人文学。

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[目次]

序章 人新世の歴史を呼び覚ます
1 人新世の歴史と生の歴史
2 近代日本の公衆衛生と生政治

第1章 近代日本の公衆衛生研究をひらく 統治性研究の射程
1 制度・規律・統治からみる公衆衛生
2 人間ならざるものたちのざわめき
3 エコロジーのなかに人びとの生を問う
4 統治性研究の新たな展開

第2章 曝される身体 サナトリウムにおける日光療法
1 医学と建築と化学が交差するところ
2 自然のなかのサナトリウム
3 日光療法――正木不如丘の試み
4 日光療法の問題
5 分子の世界における抵抗――紫外線・煤煙・ガラス
6 多元的な世界で生きる

第3章 日光の供給 国家なき統治としての都市計画
1 排除から包摂へ
2 社会的なものの浮上と都市計画
3 「暗さ」の発見
4 日光の供給
5 都市と統治
6 自然の保健力と都市計画の技法
7 大地のなかの都市――社会と自然を越えて

第4章 空気の灌漑 健康住宅の試み
1 統治の技法としての健康住宅
2 環境工学的知識の生産
3 自然の動員
4 健康住宅の拡大
5 多孔的な住まい――生命と非生命を越えて

第5章 住まいのエコロジー ケアの実践と人間ならざるもの
1 家族と統治
2 自宅療養とケア
3 ガラス・テクノロジー
4 家庭の統治とメンテナンス――定期利用(サブスクライブ)する主婦
5 住まいというエコロジー

第6章 健全なる精神 書斎と精神衛生
1 大正デモクラシーの物質性
2 精神上の工場
3 健全なる精神
4 光の均質化
5 精神の統治

終章 生の環境史に向けて
1 人類と感染症――現代への展望
2 エコロジカルな住まい
3 自然の統治
4 生の環境史に向けて

あとがき
参考文献
索引

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[著者]西川純司(にしかわ・じゅんじ)

1983年滋賀県生まれ。専門は社会学。2013年に京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員DC2、同PDを経て、現在、神戸松蔭女子学院大学文学部准教授。主な業績として、「感染症とともに変わる住まいのかたち――気候を統治する」(『現代思想』第48巻10号、2020年)、「イメージからみる近代日本の窓ガラス受容」(五十嵐太郎・東北大五十嵐太郎研究室・市川紘司編『窓から建築を考える』彰国社、2014年)など。