定価1,650円(本体1,500円)
発売日2022年2月26日
ISBN978-4-7917-1427-8
コロナ禍以後の憲法論
コロナ禍以後「緊急事態条項」創設を謳う声が勢いを増すなか、先の衆院選では「改憲勢力」が与野党の枠を超え躍進する結果となった。また夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲とする最高裁判決も、憲法の問題を改めて切実に考える気運を高めている。九条を中心とした改憲論議から、婚姻制度、表現・学問の自由、そして「国民」という枠組みを超えた人権保障の課題まで――本特集では憲法にかかわる喫緊の論点を、国際的な知見や思想史的な視座も踏まえつつ多角的に考察したい。
[目次]
特集*憲法を考える
【改憲問題の現在地】
憲法改正論・考――不誠実な国家安全保障論と脱国家中心主義の可能性 / 青井未帆
【岐路に立つ〈人権〉】
近代人権論の再編と「ジェンダー憲法学」――ジェンダー平等は世界を救えるか / 辻村みよ子
憲法と家族法――憲法二四条の意義 / 二宮周平
外国人は「人」ではないのか?――外国人の権利をめぐる「国籍」と「在留資格」 / 安藤由香里
学問の自由をめぐって / 池内了
「表現の自由」のワインディング・ロード――「自由」をめぐる、ねじれと理路 / 志田陽子
【「緊急事態」とは何か】
歴史に学ぶ緊急事態条項の危険性――ワイマール憲法下ドイツの事例から / 石田勇治+木村草太
例外のないルールはない、が。――緊急事態条項論議に寄せて / 石川健治
【情況を読む】
コロナ時代の日本政治の対立軸――対立争点から合意争点への交錯と移行 / 大井赤亥
フェミニズムは右傾化したのか?――ネオリベラル・フェミニズムの世界 / 菊地夏野
【コミットメントの継承と展開】
「五日市憲法」が時をこえて放つ光――憲法は何のためにあるのか / 新井勝紘
「九条の会」と戦後民主主義の脈流――批判的継承のための試論 / 山本昭宏
憲法判例と最高裁裁判官国民審査――いくつかの事例を通して考える / 山田隆司
【根本から問う】
多様な人々の自由が共存する体制――イマヌエル・カントの憲法論 / 寺田俊郎
規範的概念の論争性と憲法解釈――憲法理論への言語哲学的アプローチ / 伊藤克彦
憲法改正と〈法〉の理念 / 嘉戸一将
国民投票は直接民主制か? / 早川誠
人民民主における中華人民共和国憲法の遠景 / 羽根次郎
【連載●科学者の散歩道●第八四回】
新語「サイエンティスト」への抵抗――自然哲学と自然愛 / 佐藤文隆
【連載●ポスト・ヒューマニティーズへの百年●最終回】
思弁的実在論の後で――ユク・ホイ / 浅沼光樹
【研究手帖】
翻訳としての聞き書き / 大畑凛