革命的知識人の群像

-近代日本の文芸批評と社会主義-

木村政樹 著

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革命的知識人の群像

定価3,080円(本体2,800円)

発売日2022年2月4日

ISBN978-4-7917-7445-6

ことばで社会を変えることはできるか
有島武郎、大杉栄、平出修、堺利彦、室伏高信、広津和郎、吉田一、山川均、福本和夫、宮本顕治、平野謙、中野重治、中村光夫、荒正人、本多秋五――。社会主義が厳しく取り締まられた時代に、未来の革命を思想し、論争を重ね、もうひとつの言論空間を織りなした知識人たち。砕け散ったことばの断片を渉猟し、その信念と葛藤を活写する。

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[目次]


序章 革命的知識人とことば
1 はじめに
2 革命的批評について
3 丸山真男「近代日本の知識人」を再考する
4 「知識人」関連語群について
5 本書の構成


第Ⅰ部 隠された伝統


第1章 大逆事件前後 ロシア文学と社会主義
1 知識人論としてのロシア文学史――チェーホフの位置
2 文学史との接続――自己歴史化する自然主義
3 「知識階級」のディレンマ――文芸領域と『近代思想』
4「日本の「智識ある者」 」――平出修とロシア文学の読者
5 大逆事件と発禁――平出修と『太陽』の読者


第2章 曖昧な思想の積極性 雑誌『月刊新社会』の論脈
1 階級論のゆくえ――堺利彦と社会運動出版
2 社会主義者とその知識――『月刊新社会』の登場
3 「面白い地位」――堺利彦の中等階級論
4 「ツナギ」 「ボカシ目」――曖昧な文学者たち
5 「面白い傾向」――思想と文学の関係
 

第Ⅱ部 知識階級の意味


第3章 更新される概念 「宣言一つ」論争
1 「知識階級」をめぐって――論争の意義
2 批判と応答――堺利彦
3 概念の整理――室伏高信
4 立場と論理――広津和郎
 

第4章 海を越える革命 有島武郎とアナ・ボル提携
1 運動史と有島武郎――アナ・ボル提携という問題
2 アナ・ボルの臨界――有島と吉田一
3 理論を利用する――知識階級排斥論という文脈
4「指導者」を利用する――アナ・ボルのなかの有島
 

第5章 残された課題 マルクス主義と「有島武郎」
1 「語義の曖昧」と「思想の混乱」――階級論の流行
2 もうひとつの宣言――山川均
3 有島の書簡と「無産階級」論――福本和夫
4 「有島武郎」で考える――藤森成吉「犠牲」


第Ⅲ部 文学史の整理

第6章 出版企画と存在証明 刻印される『太陽のない街』
1 解釈環境の編制――プロレタリア文学のリテラシー
2 メディア実践と対抗的文学史――日本プロレタリア作家叢書』
3 《運動史》の論理――状況論的文学史
4 錯綜するふたつの論理――《近代文学史》と《運動史》


第7章 亡霊の棲む書棚 宮本顕治「「敗北」の文学」
1 文学史としての「「敗北」の文学」――「芥川龍之介」という「遺産」
2 革命の陰画――ロシア文学と芥川
3 「書棚」の組み換え――知の接合とジャーナリズム


第8章 文学研究という橋頭堡 平野謙「プティ・ブルヂョア・インテリゲンツィアの道」
1 研究運動体を歴史化する――『クオタリイ日本文学』
2 文学史生成の場――プロレタリア科学研究所と明治文学談話会
3 宮本顕治の過去と現在――「プテイ・ブルヂヨア・インテリゲンツイア」
4 中野重治という主人公――「プロレタリア・インテリゲンツイア」


第9章 社会認識と文学論 一九三五年の中村光夫
1 文学史を再考する――中村光夫という問題
2 「資本主義」と「封建制度」――日本社会認識
3 「封建文学」と「ロマン主義」――「体系」的文学論
4 「講座派」理論との関係――中野重治との論争


第Ⅳ部 反語的な批評

第10章 ロシア文学を読む 戦時期の荒正人
1 ロシア文学と知識人論――読書会と批評方法
2 戦時期の世田谷三人組――読書会の回想
3 批評の材源――ルカーチとロシア文学史
4 「小市民文学」の批判的更新――国民文学論 
5 「余計者」の客観化――国民文学論と『浮雲』

第11章 概念を縫い合わせる 平野謙「昭和文学のふたつの論争」
1 文学史のなかの論争、論争のなかの文学史――論争的文学史
2 小林秀雄と中野重治―文学史のふたつの「中心」
3 中野重治と「民主主義文学」概念――戦後「政治と文学」論争と文学史
4 曖昧、齟齬、辻褄合わせ――概念論という問題提出


第12章 後退戦の軌跡 本多秋五のプロレタリア文学論
1 概念の重大な微調整――術語としての文学史
2 「ブルジョア」という登場人物―宮本百合子論と「私小説論」
3 朝鮮戦争と「知識人」――『白樺』派論と「風俗小説論」
4 「統一戦線」と文学史――転向文学論と「頽廃の根源について」
5 後退戦と政治参加――文学史の再構築

終章 革命的知識人の群像


あとがき
初出一覧
索引

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[著者]木村政樹(きむら・まさき)

1986 年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程修了。博士(学術)。現在、東海大学文学部日本文学科講師。専門は日本近代文学。著作に、「一九一九年、ヴ・ナロードをめぐる概念連関―雑誌『デモクラシイ』と知識階級論」(『湘南文学』第56 号、2021 年3 月)、「「知識人」と「知の巨人」―二〇二一年、立花隆から考える」(『ユリイカ』第53 巻第10 号、2021 年9 月)などがある。