定価3,080円(本体2,800円)
発売日2021年12月22日
ISBN978-4-7917-7438-8
日常茶飯事の総体こそが歴史である
生きていくうえでもっとも重要なことのひとつである「食」。しかし、それは日常のことであるがゆえに記録に残りにくく、歴史学のテーマとしては軽視されてきた。伝統や信仰における食の役割、生食や肉食といったテーマ、さらには米や茶や菓子といった特定の食べ物、そして和食文化をめぐる歴史まで。食生活・食文化の歴史を考究し続けてきた著者が、丹念な調査と史料の詳細な検討によって、人びとがいかに生きてきたのかを明らかにする。あたらしい歴史学の誕生。
以下の通り、本書に誤りがありましたことをご報告いたします。
深くお詫び申し上げるとともに、謹んで訂正いたします。
[目次]
はじめに
Ⅰ 和食文化の歴史的特質
第1章 『万葉集』の職と和食の原型
一、はじめに/二、瓜/三、口噛み酒と黒酒・白酒/四、調味料/五、鹿と蟹/六、おわりに
第2章 生食の伝統――膾から刺身へ
一、はじめに/二、火と調理/三、日本の生食と膾・鱠/四、膾から刺身へ/五、おわりに
第3章 日本における稲作と魚――海・里・山
一、はじめに/二、海/三、里/四、山/五、そして川/六、おわりに
第4章 宮中におせちと菱葩――統治の象徴
一、宮中のおせち/二、菱葩
第5章 菓子と日本の米文化
一、はじめに/二、菓子の原義と果物/三、菓子の登場と性格/四、菓子と米/五、おわりに
Ⅱ 食と進行
第6章 祭祀と饗宴の庭
一、はじめに――神人共食の庭/二、祭りの場Ⅰ――山から庭へ/三、祭りの場Ⅱ――庭から社へ/四、祭りと饗宴――神饌と仏供/五、料理様式と庭――饗宴を演出する庭/六、おわりに――祭祀と饗宴の分離
第7章 村々の神饌
一、神々の恵みと神人共食/二、予祝と収穫の祭り/三、宮座の構造と歴史的背景/四、宮座の祭祀と神饌/五、宮座における神仏習合
第8章 肉食をめぐる思想――道元と親鸞
一、はじめに――神道と仏教/二、仏教と肉食/三、日本仏教の特質/四、道元の立場――修行としての食/五、親鸞の立場――凡夫の救済/六、おわりに――肉食をめぐる二つの立場
第9章 陰陽道・修験道と食
一、はじめに/二、陰陽五行説から陰陽道へ/三、陰陽五行説と食文化/四、修験道と神仙思想/五、修験道の食/六、おわりに
Ⅲ 江戸における食文化の展開
第10章 料理と百人一首
一、はじめに/二、料理本‟百珍者”の成立――料理と知識/三、料理と古典教養/四、百人一首と食の周辺/五、おわりに
第11章 文人社会と料理文化
一、結社と飲食/二、『豆腐百珍』と混沌詩社/三、文人と料理文化/四、文人と大酒大食の会
第12章 江戸の小さな旅と食――雑司ヶ谷鬼子母神を中心に
一、はじめに/二、江戸の行楽と情報――その一年と『東都歳時記』/三、小さな旅の様相――『十万庵遊歴雑記』と『世事見聞録』/四、郊外型盛り場の形成と繁栄――雑司ヶ谷の沿革/五、郊外型盛り場の様相と遊興――雑司ヶ谷の実態/六、おわりに
Ⅳ 和食文化の周辺
第13章 アイヌ民族の肉食文化――「肉」の確保と保存・調理を中心に
一、問題の所在/二、北東アジアの肉食文化/三、アイヌ民族の肉食文化/四、比較史的考察
第14章 琉球弧の食文化
一、はじめに/二、食文化の歴史的特質/三、食文化の様相/四、食文化の変容
第15章 米文化における朝鮮半島と日本
一、はじめに/二、米文化という共通性/三、統一国家の成立と米文化/四、日本の肉食禁忌と食文化/五、水田稲作と動物供犠の変化/六、おわりに
第16章 アジアのお茶・日本のお茶
一、はじめに/二、アジアのなかのお茶/三、日本におけるお茶文化の発達/四、日常茶飯事と山茶
第17章 飢餓・飢饉という現実――中世・近世から近代へ
一、はじめに――日本社会の特質/二、中世の飢餓と飢饉/三、近世の飢餓と飢饉/四、おわりに――近代の飢餓と飢饉
付 章 和食文化研究のこれまでと今後
一、はじめに/二、和食文化研究の前段階/三、食文化研究の展開と研究環境の整備/四、和食文化研究の本格化/五、和食文化研究の今後と課題
あとがき
参考文献
典拠一覧
初出一覧
索引
[著者]原田信男 (はらだ・のぶお)
1949年栃木県宇都宮市生まれ。専攻は日本生活文化史。国士舘大学21世紀アジア学部教授を経て、現在、国士舘大学名誉教授・京都府立大学客員教授・和食文化学会会長。ウィーン大学客員教授、国際日本文化研究センター客員教授、放送大学客員教授、を歴任。89年『江戸の料理史』でサントリー学芸賞受賞、95年『歴史のなかの米と肉』で小泉八雲賞受賞。著書に『江戸の食生活』(岩波現代文庫)、『日本の食はどう変わってきたか』(角川選書)、『神と肉』(平凡社新書)、『「共食」の社会史』(藤原書店)など多数。