定価3,080円(本体2,800円)
発売日2021年11月26日
ISBN978-4-7917-1422-3
「200歳のドストエフスキー」像に迫る
本年はドストエフスキー生誕200年という記念すべき年にあたる。われわれはドストエフスキーからいかなる思想的課題を引き継ぐことができるのか。超一級の布陣にて難渋な作品を迎え撃ちながら、その魅力に迫る。
亀山郁夫・望月哲男・番場俊・越野剛責任編集
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[目次]
【エッセイ】
東 浩紀 ドストエフスキーと偽物の世界
石沢麻依 ドストエフスキーの月と蛾
大澤真幸 ドストエフスキーの二つにして一つのテーマ――神と金
河野通和 『未成年』との再々会
小森陽一 文学的な父と子――ドストイェフスキイと二葉亭四迷
斎藤 環 「ポリフォニー」の臨界域
佐藤 優 時代状況の悪化がドストエフスキー・ブームをもたらしている
杉田俊介 ドストエフスキー・マルクス・ダーウィン
野田秀樹 『贋作・罪と罰』の罪と罰
三田誠広 ドストエフスキーと埴谷雄高
四方田犬彦 ドストエフスキーの余白に
【討議1】
中村文則+亀山郁夫 ドストエフスキーは生き残れるか?
亀山郁夫 運命論の罠――中村文則『カード師』書評
【ドストエフスキー・テクスト】
F・ドストエフスキー/亀山郁夫訳 商人スコトボイニコフの物語――ドストエフスキー『未成年』第三部第三章より
【討議2】
望月哲男+越野 剛+沼野充義+番場 俊+亀山郁夫 二〇〇歳のドストエフスキー
【研究の前線から――世界からのメッセージ】
S・アローエ/赤渕里沙子訳 現代人の意識の《風土病》
C・アポローニオ/泊野竜一訳 第三世紀の間際で
N・アシンバーエワ/桜井厚二訳 われらが永遠の同時代人
I・エサウーロフ/金沢友緒訳 ロシア文化の大きな時間におけるドストエフスキー
P・フォーキン/赤渕里沙子訳 使徒としての務め、その現代性をめぐって
B・バロス=ガルシア/桜井厚二訳 ドストエフスキー文学の普遍性
A・A・ゴンサレス/内田兆史訳 答えのないままの問い
T・カサートキナ/齋須直人訳 「人格」による世界の変容
R・F・ミラー/桜井厚二訳 私にとって(あなたたちにとっても)親密なドストエフスキー
E・ノヴィコワ/桜井厚二訳 現代ポストコロニアル概念の文脈におけるドストエフスキーの「東方」の多義的問題L・サラスキナ/田中沙季訳 「新しい旋毛虫のようなものが現れて……」
B・チホミーロフ/桜井厚二訳 ドストエフスキーの道筋と、その現代的需要
V・ヴェトロフスカヤ/田中沙季訳 「ある究極の一点で……」
V・ザハーロフ/齋須直人訳 ドストエフスキーの新しい言葉
【越境するドストエフスキー】
甲斐清高 『罪と罰』、「マーカイム」、そして『ジキルとハイド』
白井史人 ドストエフスキー・オペラの男たち――救済なき時代の戯画
林 良児 フランス文学とドストエフスキー
高橋健一郎 ドストエフスキーと音楽
S・アローエ/甲斐清高訳 黒澤明『白痴』に関する覚書
大平陽一 越境する『白夜』の夢想家――アダプテーションによる原作の(過剰)解釈について
梅垣昌子 ドストエフスキーの文学遺伝子――映像表現における表層の反復と融合
【研究と批評――新たな古典】
T・カサートキナ/木寺律子訳 世界を救うのは美である……
S・フォルティ/伊藤達也訳 新-悪霊(抄)――悪と権力の再考
【ドストエフスキー研究の歴史をつなぐ】
木下豊房 ロシア民衆の宗教意識の淵源――正教思想の伏水脈「ヘシュカスム(静寂主義)」とドストエフスキー
高橋誠一郎 「大審問官」のテーマと核兵器の廃絶――堀田善衞のドストエフスキー観
福井勝也 未来からの挨拶 Back to the Future――堀田善衞のドストエフスキー
萩原俊治 ありのままに生きる――引きこもりとドストエフスキー
乗松亨平 ドストエフスキーと共住の思想史――他者との非対話的な関係によせて
齋須直人 ドストエフスキーのキリスト教的価値観と対話的小説世界
長縄光男 ドストエフスキーとゲルツェン――問題の所在
越野 剛 ドストエフスキーにおける病気と火事――『白痴』のナスターシャの身振りを再考する
【作品論】
金沢美知子 『分身』とその構想――バルザック的世界からの展開を読む
高橋知之 小さな暴君の来歴――『ステパンチコヴォ村とその住人たち』の主人公について
望月哲男 アクーリカの周辺――『死の家の記録』の風景から
安岡治子 『地下室の手記』と「キリストの楽園」
D・マルティンセン/諫早勇一訳 ドストエフスキーの『罪と罰』における恥と罪の意識
G・S・モーソン/望月哲男訳 時学(テンピクス)と『白痴』
L・グロスマン/番場 俊訳 スタヴローギンの文体論――『悪霊』の新しい章の研究のために
亀山郁夫 瓦解と再生のヴィジョン――ドストエフスキー『未成年』における「境界」の想像力
C・アポローニオ/甲斐清高訳・越野 剛解題 カラマーゾフの母たち