定価1,760円(本体1,600円)
発売日2021年10月28日
ISBN978-4-7917-1421-6
「見た目」をめぐる倫理を問う
近年「ルッキズム(外見に基づく差別や偏見)」という言葉が急速な広がりを見せている。本特集では「見た目」をジャッジする暴力の問題を、レイシズムなど様々な差別とのかかわりとともに、また美をめぐる私たちの欲望の両義性や、視覚中心的な社会のあり方などについても問い直しながら、広く深く検討することを試みたい。
[目次]
特集*ルッキズムを考える
【討議】
外見に基づく差別とは何か――「ルッキズム」概念の再検討 / 西倉実季+堀田義太郎
【交差し複合するルッキズム】
「障害があるように見えない」がもつ暴力性――ルッキズムと障害者差別が連動するとき / 飯野由里子
ルッキズムとレイシズムの交点――「ハーフ」表象をめぐる抑圧と対処 / ケイン樹里安
移住家事労働者から考える、「らしさ」の境界線 / 小ヶ谷千穂
キャスター・セメンヤと大坂なおみとルッキズム――黒人女性アスリートのジェンダーとセクシュアリティ / 山本敦久
「どんな見た目でもいいじゃない、LGBTの人たちみたいに」 / 森山至貴
可視化か不可視化か――トランスジェンダーのパスの経験におけるジレンマ / 山田秀頌
【まなざしの坩堝のなかで】
ままならない交差点――ジェンダークィアのボクが生きてきたこの身体について / 古怒田望人/いりや
都市の骨を拾え / 高島鈴
【メディアの〈目〉を問い直す】
脱毛広告観察――脱毛・美容広告から読み解くジェンダー、人種、身体規範 / 小林美香
娯楽と恥辱とルッキズム / 田中東子
男性身体とルッキズム / 北村匡平
ルッキズムの解毒剤――ブサイク女子マンガについて / トミヤマユキコ
「ことば」からルッキズムを揺さぶる――もっと多様な容姿の基準を! / 中村桃子
【日常を覆う「見た目」の政治】
雇用の入口、「番兵」としてのルッキズム / 栗田隆子
感情知と感情資本――アンガーマネジメントの社会学 / 山田陽子
差別と侮辱――ルッキズムとメタ倫理学 / 奥野満里子
【インタビュー】
目で見るものが全てではない――視覚中心の社会をほぐすために / 広瀬浩二郎
【美──この両義的なるもの】
女性の外見的魅力をめぐるフェミニズムのポリティクス / 高橋幸
自分を美しく見せることの意味――ルッキズム、おしゃれ、容姿の美 / 筒井晴香
エンハンスメントとしての美の実践 / 飯塚理恵
【異他なる身体のエステティクス】
受肉した肌をみる痛み――現代日本におけるイレズミと身体の感性学的受容論 / 大貫菜穂
ラブドールの「見た目」に関するいくつかの覚書 / 関根麻里恵
【ルッキズムの奥底へ】
現れる他者との向き合い方――現象学の立場から / 鈴木崇志
連載●「戦後知」の超克●第一五回
柄谷行人における「日本」の問いかた 中・4――その「起源」と「構造」 / 成田龍一
連載●タイミングの社会学●第一二回
レジリエンス 下・2――〈貧困・時間・疲れ〉の連なりへ / 石岡丈昇
【研究手帖】
眼に見えて分かるこの眼について / 辰己一輝