水谷豊論

-テレビドラマ史の相棒-

太田省一 著

  • はてなブックマークに追加
  • LINEでシェア
  • Google+でシェア
水谷豊論

定価1,980円(本体1,800円)

発売日2021年10月25日

ISBN978-4-7917-7423-4

不良少年はいかにして教師になり、そして刑事となったのか。
芝居には、それを演じる者の生き様が露呈する。『傷だらけの天使』『熱中時代』から『相棒』にいたるまで、歴代の出演作を跡づけながら、日本のテレビドラマ史の“相棒”の素顔にせまる。孤独と情熱のあいだを揺れる、俳優人生五〇年の全軌跡。

line2.gif

[目次]

はじめに
一四歳で出会った『傷だらけの天使』/水谷豊のどこに魅せられたのか/
〝二つの私〞をつなぐために――『相棒』というドラマの独特な魅力/
水谷豊という俳優の稀有さ/水谷豊は、「日本テレビドラマ史の相棒」である


第1章 子役と不良――水谷豊、テレビドラマと出会う
テレビという箱のなかに入りたい――子役・水谷豊の誕生/
初主演作となった『バンパイヤ』/特撮の時代と『バンパイヤ』/  
水谷豊少年と『バンパイヤ』の共鳴関係/  
家出のすすめ――再びテレビという箱のなかへ/学園ドラマの時代と水谷豊/  
水谷豊が演じた不良――学園ドラマの異色作『泣くな青春』/  
演技には生き様が露呈する――水谷豊にとっての俳優とは?  
 

第2章 若者のすべて――彷徨する魂
一九七〇年、水谷豊は「若者のすべて」を演じた/  
『太陽にほえろ!』から『傷だらけの天使』へ/兄弟分としてのバディ/  
孤立無援の青春――根無し草の二人/  
「探偵ものでロードムービー」――亨の死が意味するもの/  
「親殺し」というモチーフ――『青春の殺人者』/「ウロウロ」する魂/  
順と亨/無所属であるということ――「しらけ世代」が選んだもの/  
シリーズ方式ドラマの誕生――『男たちの旅路』/「俺は――若い奴が嫌いだ」/  
〝しらけてはいない「しらけ世代」〞の肖像/  
「親」を生かす――俳優・水谷豊の自立/上目遣いが終わるとき

  
第3章 職業に生命を吹き込む――仕事としての俳優
水谷豊は時代の寵児になった/「大映ドラマ」の過剰な世界/  
『赤い激流』が描いた師弟愛/「親殺し」のモチーフ再び/  
「水谷豊ショー」を狙った『熱中時代』/なぜ、『熱中時代』は成功したのか?/  
水谷豊、テレビスターになる――先生役に生命を吹き込む/  
親代わりになること――『熱中時代 教師編Part2』が描いた成長/  
ポップな刑事ドラマ、『熱中時代 刑事編』/  
「カリフォルニア・コネクション」と歌手・水谷豊/『相棒』へ

 
第4章 だれの「相棒」か――杉下右京になる
二時間ドラマから読み解くテレビドラマ史/二時間ドラマ事始め/  
水谷豊、二時間ドラマの世界へ/二時間ドラマの中心的俳優として/  
トレンディドラマの時代/俳優・水谷豊の彷徨/  
いかにして『相棒』は誕生したか/二時間ドラマ時代の『相棒』/  
脚本分担制の意味、「反-刑事ドラマ」としての『相棒』/  
「バディもの」としての魅力と特色/キャラクタードラマとしての『相棒』/  
二つの正義/警察ドラマの系譜/〝もうひとりのバディ〞/  
甲斐享の〝犯罪〞から見えるもの/「ボーダーライン」/  
誰の『相棒』か?――杉下右京の「静かな怒り」


第5章 孤独と情熱のあいだ――無表情の美学
新しいスター俳優たち/  
萩原健一――「主役は殴られる。涙も流せば、血も流す」/  
萩原健一のアナーキー志向/松田優作の足跡、アクションスターとしての出発/  
松田優作の目指した〝普通のひと〞/水谷豊は「さびしい人」/  
「孤独」と「情熱」の弁証法――水谷豊にとっての演じること/  
〝無表情の美学〞――俳優・水谷豊の到達点


第6章 テレビドラマの申し子――ジャンルを極める
テレビドラマの申し子、水谷豊/学園ドラマはどのように始まったのか/  
水谷豊が演じた不良生徒の新しさ/  
『熱中時代』が示したラディカルなユートピア/  
水谷豊の刑事役、その歴史/『相棒』と刑事ドラマの革新/  
ホームドラマ『あんちゃん』――水谷豊と松田優作、再び/水谷豊の覚悟

 

第7章 スターにも苦悩あり――戦後日本社会と水谷豊

スターの条件/スターは不死身なのか?――石原裕次郎の不満/  
映画産業の陰りと石原プロモーション/テレビスター・水谷豊と一九七〇年代/  
「大人に問いかけるドラマ」としての『熱中時代』/  
高度経済成長期と石原裕次郎、そして『憎いあンちくしょう』/  
苦悩するスター、水谷豊と〝曇りの時代〞/  
国に見捨てられた人間――『相棒 劇場版Ⅳ』から/杉下右京の〝孤独〞 

 
おわりに
水谷豊と映画/映画『幸福』から見えてくるもの/  
演者というステータス/フィクションとリアルを等価に生きる


あとがき  
参考文献  
主要出演作品

line2.gif

[著者] 太田省一(おおた・しょういち)
1960 年生まれ。社会学者・文筆家。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。著書に『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)、『すべてはタモリ、たけし、さんまから始まった』(ちくま新書)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』『ニッポン男性アイドル史』(青弓社)、『平成アイドル水滸伝』(双葉社)、『芸人最強社会ニッポン』(朝日新書)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『平成テレビジョン・スタディーズ』(青土社)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)ほか多数。