犬神家の戸籍

-「血」と「家」の近代日本-

遠藤正敬 著

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犬神家の戸籍

定価1,980円(本体1,800円)

発売日2021年10月12日

ISBN978-4-7917-7395-4

その系図に刻まれた欲望と不条理。
飛び散る血しぶき、耳をつんざく悲鳴、謎かけを込めて“展示”される死体――。犬神家を襲った怪奇な連続殺人事件の背景には、何があったのか? 物語を読み解くカギは「戸籍」にあり。血で血を洗った一族の系譜を丁寧にたどりながら、社会に根強く残る「血」や「家」の秩序と価値観を炙り出し、近代日本の陰に光をあてる。

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[目次]

序章 『犬神家の一族』の読み方 

第1章 「犬神家」とは誰か 家族制度の転換期の物語
 1 「犬神家」とは誰か?――「家」すなわち「戸籍」なり 
 2 犬神家と死亡届――届け出るのは誰の義務?
 3 事件が起きたのはいつか?――敗戦から民主化へ、という激動 
 4 犬神家の戦前・戦後――日本製糸業のあゆみとともに 


第2章 犬神佐兵衛の戸籍 孤児に始まり、家長に終わる
 1 佐兵衛は〝捨て子〞?――親も生まれも知らぬ身で 
 2 佐兵衛の戸籍はいかにつくられたか?
 3 「犬神」姓のルーツをさぐる――系譜なき一家?
 4 信州の〝天皇〞佐兵衛――守り通した家長の座

第3章 婚外子がいっぱい 犬神佐兵衛の落とし種
 1 妾という存在――佐兵衛に「飼われた」女性たち
 2 正妻になり損ねた不幸?――青沼菊乃の悲哀
 3 犬神家の結婚と恋愛――日本の婚姻制度は柔軟か?
 4 「罪ある結合の罪なき果実」――婚外子の戸籍はこうなる
 5 横溝家の戸籍――悲劇の種は父の業?

第4章 養子たちの命運 日本ならではの「家族」
 1 ゆるやかな日本の養子制度――重んずるは血よりも家
 2 静馬の悲劇――つかみ損ねた当主の座
 3 婿養子たちの皮算用――縁組は吉と出たか?

第5章 戦争と個人の戸籍 事件捜査を左右したものは
 1 出征兵士と戸籍――幽霊は生きていた?
 2 戦争で麻痺した戸籍――事件捜査を妨げた原因
 

終章 犬神家の戸籍が映し出す「日本」 愛憎入り混じった一族の〝系譜〞 

注/あとがき/索引

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[著者]遠藤正敬(えんどう・まさたか)
1972年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。博士(政治学)。専門は政治学、日本政治史。現在、早稲田大学台湾研究所非常勤次席研究員。宇都宮大学、埼玉県立大学、東邦大学等で非常勤講師。著書に、第39回サントリー学芸賞を受賞した『戸籍と無戸籍――「日本人」の輪郭』(人文書院)のほか、『近代日本の植民地統治における国籍と戸籍――満洲・台湾・朝鮮』『戸籍と国籍の近現代史――民族・血統・日本人』(いずれも明石書店)、『天皇と戸籍――「日本」を映す鏡』(筑摩書房)などがある。