定価2,860円(本体2,600円)
発売日2021年9月15日
ISBN978-4-7917-7412-8
終わりなき感染症と人類の歴史、その1ページをひもとく
19世紀末、香港を致死性の感染症が襲った。その最前線にたち、ペスト菌を発見した細菌学者が北里柴三郎であった――。ひたすら学問にうちこんだ留学時代、権威にあらがい理念をつらぬきとおした日本での研究生活、その後の日本の医療に多大な功績をのこす人物を育て上げた教育者としての側面。人の生命をおびやかすのはもちろん、差別や偏見といった人の内面までもむしばむ感染症とわたしたちはどのように対峙すればいいのか。厖大な資料を詳細に調査し「感染症学の巨星」の足跡と実像をあきらかにするとともに、いまの時代にも通じるその思想までも抽出せんとした評伝ノンフィクションの決定版。
[目次]
プロローグ
感染症学の巨星・北里柴三郎を追って
第一章 ペスト菌発見
香港で疫病流行
ペスト菌発見の第一報
真の発見者は北里かエルサンか
ペストとネズミと猫
第二章 医道論と衛生学
「医者にだけはならない」と言い放った少年
微生物学の都・ベルリンにて
幻の「脚気菌」発見論争
鷗外森林太郎との激論
第三章 コッホの下で
亀の子シャーレを持った男
ノーベル賞に値する感染症治療の先駆
結核に罹った漱石と鷗外
ドイツ留学再延期願い
第四章 伝染病研究所
母国日本で四面楚歌
福澤諭吉との対面
愛宕町移転反対運動
日本初の免疫血清療法
第五章 文部省移管事件
青山胤通の暗闘
大隈重信に毒殺される
有り金をはたいて興した北里研究所
その後の緒方正規と森鷗外
第六章 衣鉢を継ぐ人
北里の右腕になった北島多一
赤痢菌を発見した志賀潔
サルバルサンを創製した秦佐八郎
黄熱病の研究に捧げた野口英世
第七章 隠れた功績
ハンセン病との闘い
福澤諭吉の御恩に報いるために
日本医師会初代会長に
永訣の日
エピローグ
コッホ・北里神社に眠る
あとがき
北里柴三郎と感染症年表
主な参考文献
索引
[著者]上山明博(うえやま・あきひろ)
1955年10月8日岐阜県生まれ。小説家・ノンフィクション作家。日本文藝家協会正会員、日本科学史学会正会員。1999年特許庁産業財産権教育用副読本策定普及委員会委員、2004年同委員会オブザーバーなどを務める一方、文学と科学の融合をめざし、徹底した文献収集と関係者への取材にもとづく執筆活動を展開。主な著書に、小説として『白いツツジ――「乾電池王」屋井先蔵の生涯』(PHP研究所、2009年)、『「うま味」を発見した男―─小説・池田菊苗』(PHP研究所、2011年)、『関東大震災を予知した二人の男―─大森房吉と今村明恒』(産経新聞出版、2013年)、またノンフィクションとして『プロパテント・ウォーズ―─国際特許戦争の舞台裏』文春新書、2000年)、『発明立国ニッポンの肖像』(文春新書、2004年)、『ニッポン天才伝―─知られざる発明・発見の父たち』(朝日選書、2007年)、『技術者という生き方―─発見!しごと偉人伝』(ぺりかん社、2012年)、『地震学をつくった男・大森房吉――幻の地震予知と関東大震災の真実』(青土社、2018年)などがある。公式サイトhttp://aueyama.wixsite.com/home