人間本性を哲学する

-生得主義と経験主義の論争史-

次田瞬 著

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人間本性を哲学する

定価2,860円(本体2,600円)

発売日2021年8月25日

ISBN978-4-7917-7410-4

「生まれつき」は存在するか? 哲学史上もっとも危険かつ複雑な論争のゆくえ
人間の合理的な営みの根源を成す、知能や言語能力、推論や数学の知識は、生まれつきのものなのか、それとも環境によって書き込まれたものなのか。複雑かつ神秘的な人間の心の仕組みをめぐって、ときに政治や道徳を巻き込みながら激しく交わされた論争の歴史を丁寧に解きほぐし、「人間本性」という哲学史上の壮大な謎に迫る、俊英による挑戦の書。

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[目次]

はじめに

第1章 人間本性の科学史 ――ダーウィンからディープラーニングまで
 1 ダーウィンの進化理論
 2 猛威をふるった優生学
 3 環境の影響を重視する思想
 4 生得主義と遺伝仮説の復権
 5 経験主義への福音:ニューラルネットの研究
 6 イデオロギーにどこまで中立を保てるか
 文献案内
 コラム ダーウィンから見たゴルトン


第2章 知能 ――遺伝か環境か、それとも……
 1 はじめに
 2 知能研究、入門一歩前
 3 量的遺伝学、入門一歩前
 4 知能の遺伝・環境構造
 5 人種とIQ
 6 人類の知能は向上しているのか:フリン効果をめぐって
 7 知能研究とわれわれの社会の未来
 8 個人差の原因が何であろうと……
 文献案内
 コラム ファルコナーの公式を導出する


第3章 言語 ――文法能力は本能か、習慣か
 1 はじめに
 2 生得主義の主張を理解する
 3 刺激の貧困論法を検討する
 4 自然言語に共通する普遍的特徴はあるのか
 5 生得主義を支持するその他の観察:知能からの独立性と臨界期効果
 6 言語の起源を求めて
 7 プラトンの『メノン』:古代に見出された刺激の貧困論法
 文献案内
 コラム チョムスキー階層とゴールドの定理


第4章 数学 ――アプリオリな知識はいかにして可能か、あるいは不可能か 
 1 はじめに
 2 認識論、入門一歩前
 3 合理主義の伝統
 4 規約主義
 5 意味理解からアプリオリな知識へ
 6 急進的なアポステリオリ主義:ミルの数学論
 7 洗練されたアポステリオリ主義:クワインと確証の全体論
 8 確証の全体論への批判
 9 アプリオリとアポステリオリの区別は表層的か
 文献案内
 コラム アプリオリな真理・分析的真理・必然的真理

おわりに 

注 
あとがき 
参考文献 
索引

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[著者] 次田 瞬(つぎた・しゅん)

1984 年神奈川県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻博士課程満期退学。博士(文学)。現在、名古屋大学大学院情報学研究科特任助教。専門は心の哲学。主な論文に「自然主義的意味論の研究」(博士論文)など、訳書に『予測する心』(共訳、勁草書房)がある。