定価2,200円(本体2,000円)
発売日2021年4月24日
ISBN978-4-7917-7375-6
真理は我々が立つ大地であり、我々の上に広がる天空である。
オルタナ・ファクト、フェイクニュース、公文書改竄、統計不正、破綻した国会答弁、歴史修正主義、陰謀論……。異なる現実を語り、異なる世界を生きる人々とどう向き合えばいいのか。真実をめぐって分断された現代を読み解くには、時代と対峙しつづけたハンナ・アーレントの思想が手がかりになる。絶えず変化する社会に飛び込み、他者とともに「活動」を始めるための思想。
[目次]
序章 真理の危機、政治の危機
1 ポスト真実の出現
2 ポスト真実は新しい現象なのか?
3 〈世界〉のすれ違い
4 アーレントの「政治における嘘」論を手がかりに
5 本書の構成
第1章 現実の書き換え
1 公文書問題と民主主義の危機
2 統計不正と近代国家の放棄
3 世界を破壊する嘘
4 「イメージづくり」のための嘘
5 首尾一貫した虚構
6 〈真実への信〉の崩壊
第2章 真理と政治の緊張関係
1 ブルシットな政治状況
2 ポスト真実とポストモダン
3 真理と政治の長い抗争
4 事実の真理の脆さ
5 事実の真理の堅固性
6 真理は大地であり天空である
第3章 活動と嘘
1 世界を変革するための嘘
2 独立宣言文における「嘘」
3 自らが範例となること
4 村山談話という範例
5 活動の危険性
6 嘘を制限するもの
第4章 言語の破壊
1 議論の空転化
2 言語の破壊とともに失われるもの
3 フェイクニュース!
4 活動と言論
5 決まり文句と悪の凡庸さ
第5章 共通世界の喪失
1 サイバーカスケード現象
2 公共空間における出会い
3 活動のための空間
4 世界疎外
5 世界のリアリティ
第6章 ポスト真実に抗う「公共物」
1 公共物をめぐる政治
2 政治の外部
3 中立的なものの政治性
4 共通感覚の崩壊
5 活動を支える仕事
終章 真理と政治を取り戻すために
1 モッブの暴動と陰謀論
2 あたかも別々の世界を生きているかのように
3 共通世界の再構築のために
4 世界を人間的なものとすること
5 ソクラテス的対話
6 嘘と分断の時代を超えて
注
「嘘と政治」を読み解くためのブックガイド
あとがき
参考文献
索引
[著者] 百木 漠(ももき・ばく)
1982 年生まれ。政治思想史専攻。関西大学法学部准教授。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。単著に『アーレントのマルクス――労働と全体主義』(人文書院)、共著に『漂泊のアーレント 戦場のヨナス――ふたりの二〇世紀 ふたつの旅路』(戸谷洋志との共著、慶應義塾大学出版会)、『アーレント読本』(日本アーレント研究会編、法政大学出版局)、共訳書に『アメリカ批判理論――新自由主義への応答』(マーティン・ジェイ/日暮雅夫編著、晃洋書房)などがある。
【お詫びと訂正】
本書第1刷におきまして、以下の誤りがございました。お詫びして訂正いたします。
・24頁2行目 「真理と嘘」→「真理と政治」
・25頁3行目 牧野 二〇一八 → 牧野 二〇一九
・26頁17行目 一九六四年 → 一九六七年
・31頁4行目 『判断と責任』 → 『責任と判断』
・32頁3行目 (小山 二〇二〇:一一一頁) → (小山 二〇二〇:一一三頁)
・77頁14行目 (倉橋 二〇一九:八六頁以下) → (倉橋 二〇一八:八六頁以下)
・258頁2行目 Yasemin Sari → Sari, Yasemin
・参考文献一覧に下記を追加
倉橋耕平 二〇一八、『歴史修正主義とサブカルチャー——九〇年代保守言説のメディア文化』、青弓社。
ホックシールド、A.R.、二〇一八『壁の向こうの住人たち』布施由紀子訳、岩波書店。
Zerilli, ByLinda M. G., 2019, “Rethinking the Politics of Post-Truth With Hannah Arendt”, Political Phenomenology, pp.152-165