定価1,760円(本体1,600円)
発売日2021年4月21日
ISBN978-4-7917-7374-9
「世の中は無意味なもので満ちている。当然だろう。」
稀代の精神科医が無意味の欠片を寄せ集め、無意味に形を与えていく。意味をなさないものを取り巻く断片集。
【すかしかしぱん】 Astriclypeus manni
ウニの一種であるが、形が平たい円盤状で、とげが短くて密生しており、ビスケットに似ているところからカシパンの名、さらに円盤の5ヵ所に透かし穴があるので、この名がつけられた。全体が黄かっ色(ただし死骸では白色)で、円盤の直径は12cmくらいになる。本州中部から九州までの浅い砂地の海に住む。日本の特産で、6月ころに卵をうむ。形が奇妙なので人の注意をひくが、とくに利用の道はない。 ――『世界大百科事典 第12巻』
[目次]
スカシカシパン考――無意味を分類する
I 無意味の断章
世界の断片としてのエッセイ
雲丹の味と安楽椅子探偵――別役実の犯罪論再考
コレクターの精神構造――ささやかだけど切実な病理
耳をそばだてる楽しみ
ラブドールと占い師
浄土と南極
II 自己愛の断章
重心としての自己愛
いざこざと人生
「パターン」という武器
自己愛社会の力学
「志」なき時代の中で
III わかりやすさの断章
わかりやすい子・わかりにくい子
「ガッツ」の意味と構造
「チャレンジ不要の時代」に生きる子どもたち
牧場の眺めと音楽室、そして陰口
感謝されてこその精神科医療、といった図式が成立しない難儀さについて
IV 孤独の断章
救いのない孤独と趣味としての孤独
「居場所がない」という感覚とは何か
自己救済としての家作り
快気祝いと絶好調
ヒマにも二種類ありまして
ときたま患者さんから「人生に意味はあるのでしょうか。」という質問を突きつけられます
ユメナマコ考――無意味を言祝ぐ
[著者]春日武彦(かすが・たけひこ)
1951年京都生まれ。日本医科大学卒業。精神科医。都立松沢病院精神科部長、都立墨東病院神経科部長、多摩中央病院院長などを経て、現在も臨床に携わる。主な著書に『私家版 精神医学事典』(河出書房新社)、『無意味なものと不気味なもの』(文藝春秋)、『幸福論』(講談社現代新書)、『天才だもの。』(青土社)、『鬱屈精神科医、占いにすがる』(太田出版)、『猫と偶然』(作品社)、『援助者必携 初めての精神科・第3版』(医学書院)など、多数。