定価1,650円(本体1,500円)
発売日2021年4月27日
ISBN978-4-7917-1414-8
世界を覆う危険なイマジネーション
アメリカ大統領選をめぐる騒動で注目を集めた「Qアノン」を筆頭に、陰謀論のインパクトが全世界的にかつてなく高まりつつあるなか、いま私たちに可能な、そして必要な向き合い方とはいかなるものか。本特集では現代社会のさまざまな領域に潜む陰謀論的思考のありようを炙り出すとともに、その歴史を改めて紐解くことを通じて、私たちの信と知をゆるがす深淵へと肉薄したい。
【目次】
特集*「陰謀論」の時代
【大国に渦巻くもの】
現代アメリカ社会における〈陰謀〉のイマジネーション / 井上弘貴+渡辺靖
Qアノン、代替現実、ゲーミフィケーション / 木澤佐登志
ジョン・バーチ協会と「共産主義の第五列」 /井上弘貴
【深淵を覗く】
陰謀論へのイントロダクション / 辻隆太朗
陰謀論と円盤をめぐる、二、三の事柄 / 吉永進一
日本の「ユダヤ陰謀論」の源流を探る――四王天延孝を中心に / 臼杵陽
革命理論としての陰謀論――陰謀論的スピリチュアリティにおける太田竜の問題系 / 栗田英彦
「石化する快楽」としての「陰謀論」――林郁夫『オウムと私』を手がかりに /橋迫瑞穂
長崎とフリーメイソンと原爆――陰謀論と史実のはざまから / 中尾麻伊香
【猜疑のポリティクス】
歴史修正主義の中の陰謀論――その流通の背景をめぐって / 倉橋耕平
陰謀論者の「不安」 / 石戸諭
右も左も「陰謀論」だらけ?――左派における陰謀論受容のメカニズム / 秦正樹
党は「媒介者」なのか? / 羽根次郎
【マジョリティは何を恐れるのか】
男性復権運動のサラ・コナーたち――英語圏の陰謀論的反フェミニズム言説と女性 / 海妻径子
ポストトゥルース、トランス排除と『マトリックス』の反革命――もしくは、ひとつしかない人生を選択することについて / 河野真太郎
【物語とその影】
文字が構築する壮大な筋書き/陰謀 / 仁木稔
〈作業〉は永遠に存在する――公安小説論序説 / 熊木淳
【虚実の乱闘空間】
フェイクニュースと情報生態系の進化 / 笹原和俊
科学否定論とフェイクの不安――リスク社会の科学とメディア / 松村一志
【言葉を見つめ直す】
陰謀論はコミュニケーションに何をもたらすのか / 三木那由他
陰謀論の合理性を分節化する / 朱喜哲
【連載●科学者の散歩道●第七七回】
「統一科学」の八〇年後――マッハの初心とは? / 佐藤文隆
【連載●「戦後知」の超克●第九回】
鶴見俊輔の「期待」と「回想」 中・3――『戦後日本の大衆文化史』 / 成田龍一
【連載●ポスト・ヒューマニティーズへの百年●第一六回】
種を超えて思考する――グラント・続 / 浅沼光樹
【連載●タイミングの社会学●第七回】
共同生活 中――身体を変える/生活を変える / 石岡丈昇
【研究手帖】
「悪いカネ」でリスペクトを稼ぐ / 荒木健哉