「国語の時間」と対話する

-教室から考える-

五味渕典嗣 著

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「国語の時間」と対話する

定価2,420円(本体2,200円)

発売日2021年3月26日

ISBN978-4-7917-7370-1

「国語」って、どんな時間?
国語は「対話する」時間である。教科書と生徒で。生徒同士で。先生と生徒で。教室でともに読むことは、一方通行の学びをも解体する可能性を秘めている。しかし現場の営為は見落とされ、「実用性」重視の改革に舵を取ろうとしている。新学習指導要領、教科書、そして教室での実践を読み解き、改革の矛盾と国語科教育を問い直す。

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[目次]

はじめに――「教室」に向かって

第1章 翻弄される教室――高校国語「改革」をめぐって
1 ずさんな二項対立
2 国語教科書とポストモダニズム
3 「現代の国語」「言語文化」の思想
4 「論理国語」「文学国語」と教室への想像力
5 「新しい国語科」とどう向き合うか

第2章 未来は誰のものか?――新学習指導要領のイデオロギー
1 ある教室の風景から
2 「Society 5.0」と解体される社会
3 コンピテンシー・ゲーム?
4 カリキュラム・マネジメントと書類仕事の憂鬱
5 ことばを取り返すために

コラム マウンティング言説としての「学力低下」論

第3章 精読・多読・表現――教員の行為者性(エージェンシー)をめぐって
1 実践から考える
2 思想としての「課題図書」
3 現代の言語政策と権力の代理人(エージェント)
4 「希望」を語るために

 コラム 教科書と検定

第4章 教室の小説/小説の教室――『羅生門』『こころ』再読
1 「定番教材」の役割
2 境界の物語としての『羅生門』
3 『こころ』を読む困難
4 聞かない聞き手の語り
5 研究と教室のあいだ

第5章  「評論文」をどう読むか――「「である」ことと「する」こと」再読
1 批評としての編集
2 教材化の戦略
3 データベース型教材
4 「「である」ことと「する」こと」の思考

コラム 定番教材いま、むかし

第6章  文学の貧困――「実用文」を読んでみる
1 書類と統制
2 「新しい国語科」の隠れたカリキュラム
3 「文学国語」の中の「文学」
4 文学の貧困

コラム 著者は正答ができない?

第7章  表現と検閲――「文学国語」への授業提案
1 授業のねらい
2 日本近代文学と「検閲」
3 「検閲」を意識する
4 「文学」の役割

あとがき 

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[著者]五味渕典嗣(ごみぶち・のりつぐ)

1973年、栃木県生まれ。早稲田大学教育・総合科学学術院教授。慶應義塾大学大学院文学研究科国文学専攻博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。専門は、近現代日本語文学・文化研究。単著に、『プロパガンダの文学――日中戦争下の表現者たち』(共和国、2018)、『言葉を食べる――谷崎潤一郎、1920~1931』(世織書房、2009)、共編著に『ちくま評論文の論点21』(筑摩書房、2020)、『漱石辞典』(翰林書房、2017)、『谷崎潤一郎読本』(翰林書房、2016)などがある。筑摩書房版高校国語教科書の編集委員も務める。