日本語の勘

-作家たちの文章作法-

中村明 著

  • はてなブックマークに追加
  • LINEでシェア
  • Google+でシェア
日本語の勘

定価2,640円(本体2,400円)

発売日2020年12月23日

ISBN978-4-7917-7340-4

作家のくれた、書くヒント
武者小路実篤、堀口大學、里見弴、瀧井孝作、井伏鱒二、尾崎一雄、網野菊、小林秀雄、永井龍男、円地文子、大岡昇平、田宮虎彦、小島信夫、庄野潤三、吉行淳之介…… 日本語学の第一人者が、これまで出会い、交流を深めてきた数々の作家や詩人、評論家たち。そのさりげない日本語表現からみる、書くためのヒント。

line2.gif

[目次]

はしがき

1 人 柄 
執念の追跡 いづれ退院の折に 二度も三度も 落葉松の葉が黄金の粉となって

2 接 近 
落葉の下から水仙が まぜずしをどっさり 吉野坂の墓 あの頃は文学もありました 感涙に咽ぶ

3 具 体 
四万十川の鮎 はがきの運命 足柄山の熊

4 見 方
世の中が曲がっている 酒席を済ましてから 星空の彼方に

5 創 作 
芥川賞?誰が? 慎みのある躓き 無意識になるまで

6 批 評
文章が軽く感覚的に 面倒なものは虚礼 原稿の復活祭 往時の村田君

7 感 想 
冷汗をかく 返信はお気遣いなく 合わせる顔 言語の奥の文学

8 感 覚 
夕ぐれの時はよい時 如雨露に吸い込む水の音 秋の蠅

9 発 想 
鮎の進化 嘘発見器 何、思っているんだか

10 視 点 
斜めから見る 生きていたように思う 違和感を注入 あり難い瞬間

11 描 写
レコードが回り出す 言葉が弾け散らばる 町は低くなった

12 心 理 
褒める文章には感動がある 人のいない街の風景 心の中の音 無言の見舞

13 言 語 
生理的な語感 文字による抵抗 石膏色と夕焼け 接続詞をバネに いきなり接続詞 語りと象徴性 同じことばが出ると興ざめ

14 比 喩 
人生あくびのごとし 一陣の風 沈黙と死臭を孕む光の澱 嫁に行った娘 
東宝の正月映画 鉄瓶の口からじかに

15 象 徴 
道、紫、夜、雨、光 はかなさにいて永遠を夢みる

16 擬 音 
コト・コト、コロ・コロ、ギル・ギル ざりざりという蟻の音 ふかふか眠る

17 技 法
ごつごつした透明 解けるものは謎ではない 割勘で駈落ち 英雄的で馬鹿馬鹿しい 沈黙を言う 批判でお礼

18 種 別
随筆集の小説 文楽は小説、志ん生は随筆 女は小説向き? 「見る」ということ

19 構 想
あとは泣きながら 主人公に遭遇 うねりが高まる 不当ながら必然 ドラムを入れる 連作短編という長編

20 開 閉 
吾輩は猫である うしろの空に月がのぼって おのずと冒頭が 初夏の午後であった 下人の行方は誰も知らない 石橋に立つ小さな母の姿 おのずと終わる 寸法の合わないシャツ ギュッ、ふわっ

21 文 体
文体論の足場 文体研究の質感 文体こそ文学の魅力 文章で反撥 
話せば長いことながら

22 名 文
悪文風土説 櫓の上で 余白の意味 面白い文章 文章が邪魔にならない 平談俗語 大人の名文

23 諧 謔
江戸っ子の羊 戸黒博士によろしく ドナウ川のいびき 日本は終了しました 薄情だから お酒召し上がる? お前は死んだ筈 玄関で風呂

24 余 情
薬代わりの古本 行間からめらめらと 空白を読む 休止符のあとのふくらみ 書かずに書く 〈間〉の正体 沈黙のけはい 〈間〉の成熟 余情の広がり 余情の生成 余情の技術 余情の実際 はにかみの余情

めぐりあい記憶の航跡 ―ある文体研究者の自画像 
織りなす紋様 仲庵の行方 いきなり落ちこぼれ 疎開の夜景 贈 明の海 たえがたきをたえ 魔球 弟がいるらしい 背中から駅弁 中学初日の孤独 束の間の鶴岡高校 放送デビュー ひと夏の夜明けの師 名に秘められた夢 色は匂へど つむじ曲がりの正義感 早とちり 隙間絵 二階の窓から登校 作品のない「作者」 僧兵が行く 茶色のベレエ 初日からライオン おバカさん一代記 鼻息荒く読書会 にわか塾長 横道の天職 長靴と包帯 ピッツァと大衆通報 結婚スピーチ・コンテスト お手盛りの給料 タローとジロー ロイスへの詫び状 半世紀前への散歩 文鎮代わりの辞書 野球をしているはずがない 大損かけた電撃トレード 愛にしがみつく 南極の氷 まぼろしの名講義 貧相な学者 ただ同然のせせらぎ亭 わっしょい 大早稲田に貸し 奈良場所の大一番 思い出の鶴岡調査 作家訪問、黄金の日々 雑誌に載ったおしゃべり サガミの旦那 おかげさまで金曜日 名医との不思議な縁 優雅な公務員よさらば 成蹊も遠くなりにけり 縁は異なもの 当時の交流 窮余の語感 大隈さんの肩先 懐かしい徒労 新専攻の盛衰 講演じみた講義 学会の休憩時間 風さわぐ 一夜を共にする 本のとりもつ縁 忘られぬ偶然 アーサー王伝説異聞

line2.gif

[著者]中村 明(なかむら・あきら)

1935 年9 月9 日、山形県鶴岡市の生れ。国際基督教大学助手、国立国語研究所室長、成蹊大学教授を経て、母校の早稲田大学教授となり、現在は名誉教授。主著に『比喩表現の理論と分類』(秀英出版)、『日本語レトリックの体系』『日本語文体論』『笑いのセンス』『文の彩り』『吾輩はユーモアである』『語感トレーニング』『日本語のニュアンス練習帳』『日本の一文30 選』『日本語 語感の辞典』『日本の作家 名表現辞典』『日本語 笑いの技法辞典』『ユーモアの極意』(岩波書店)、『作家の文体』『名文』『悪文』『文章作法入門』『たのしい日本語学入門』『比喩表現の世界』『小津映画 粋な日本語』『人物表現辞典』(筑摩書房)、『文体論の展開』『日本語の美』『日本語の芸』(明治書院)、『文章をみがく』(NHK 出版)、『日本語のおかしみ』『美しい日本語』『日本語の作法』『五感にひびく日本語』(青土社)、『比喩表現辞典』(角川書店)、『感情表現辞典』『分類たとえことば表現辞典』『日本語の文体・レトリック辞典』『センスをみがく文章上達事典』『日本語 描写の辞典』『音の表現辞典』『文章表現のための辞典活用法』『文章を彩る 表現技法の辞典』『類語分類 感覚表現辞典』(東京堂出版)、『漢字を正しく使い分ける辞典』(集英社)、『新明解 類語辞典』『類語ニュアンス辞典(三省堂)など。『角川新国語辞典』『集英社国語辞典』編集委員。『日本語 文章・文体・表現事典』(朝倉書店)編集主幹。日本文体論学会代表理事(現在は顧問)、高校国語教科書(明治書院)統括委員などを歴任。