定価2,420円(本体2,200円)
発売日2020年10月23日
ISBN978-4-7917-7321-3
なぜ日本の家賃は高いのか。なぜ若者は実家に住み続けるのか。なぜ被災者は仮設住宅から出られないのか。
「仮住まい」から「定住」へ。賃貸から夢のマイホームへ――戦後日本が「標準」としてきたライフコースが、いま大きく揺らいでいる。単身世帯や困窮家庭の増大、進む高齢化、そしてたび重なる震災や豪雨災害。変化する社会のなかで、良質で手ごろな住宅をつくるにはどうすればよいのか。困難を生きる人びとの住まいに光を当てながら、住宅政策の歴史と現在を問いなおす。
[目次]
はじめに
第I部 「仮住まい」と住宅政策
第1章 住宅ローン時代の果てに
持ち家と借金人生 住まいを金融化する 金融化を市場化する ぐらつく「はしご」 ポストバブルの住宅ローン返済 アフター・ハウジング・インカム ハイリスク・ローン 住宅資産のデフレーション 住宅市場の時間/空間分裂 仮住まい/マイホームという枠組み
第2章 個人化/家族化する社会の住宅政策
「結婚・持ち家社会」は続くのか 成長後の時代の個人化/家族化 住宅政策のバイアス 世帯形成の「タテ・ヨコ」関係 無配偶者の住宅条件 有配偶者の持ち家取得 直系家族制の再発見 住まいとライフコース分岐
第3章 住宅資産所有の不平等
住宅所有のフロー/ストック 蓄積した住宅資産 持ち家と社会階層 偏在する住宅資産 ライフコースと住宅資産形成 ネガティヴ・エクイティ 家賃を得る/支払う 世襲される住宅資産 慎ましい資産所有――再開発、高経年マンション、空き家 出自を問う/問わない社会
第II部 実家住まい
第4章 親元にとどまる若者たち
人生の道筋と住まい 調査について 親との同居/別居と結婚意向 仕事、収入、資産 苦難の経験 相談相手と孤立リスク 住宅所有形態について 親に頼れる/頼れない 異様に重い住宅費負担 親の家の内/外 現在/将来の暮らし向き 住宅政策から社会持続へ
第5章 ジェンダーと住宅政策
「結婚・持ち家社会」の女性 住宅政策とライフコース形成 イデオロギーの役割 個人単位分析に向けて 親の家から出る 夫所有の家に住む 共働きで家を買う 離婚と住宅確保 持ち家を相続する ライフコース・ニュートラルの住宅政策を
第6章 「三世代同居促進」の住宅政策をどう読むか
“一億総活躍社会”と子育て支援 家族主義のイデオロギー 子育て世帯の住宅事情 同居と出生は増えるのか 政府は、誰を、助けるのか 実態から政策形成を
第III部 賃貸住まい
第7章 賃貸世代、その住まいの再商品化
持ち家の約束 持ち家/借家ディバイド 若年持ち家率の低下 賃貸住宅市場の変化 脱商品化の「パッチワーク」 再商品化する賃貸セクター 賃貸住宅の約束
第8章 超高齢社会の公共住宅団地をどう改善するか
社会資源としての公共住宅ストック 公共住宅政策の変遷 増える高齢単身者 プライバシー、ジェンダー、孤立 住民交流を増やす工夫を ある団地再生の事例から 公共住宅の再評価を
第9章 住宅セーフティネット政策を問いなおす
改革される住宅政策 住宅政策がたどった経路 経路と改革 住宅セーフティネットの限界 ネオリベラル社会 「カテゴリー」化について 処罰の段階 異様といってよいほどの圧縮 住宅政策の抜本的拡大を
第IV部 仮設住まい
第10章 被災した人たちが、ふたたび住む
住まいと生活再建 「土地・持ち家被災」という文脈 上空と地上 「プレハブ仮設」世帯の変化 「みなし仮設」世帯の特性 モーゲージ/アウトライト持ち家 土地被災と街づくり事業 どこにどう住むのか 持ち家支援の融資/補助 公営住宅から生活再建を 特別/一般の住宅政策 人生の立てなおしに向けて
第11章 火災の犠牲となった老人たちの住宅問題
燃える「終のすみか」 火災事例をみる 氷山の一角 住宅政策のどこが問題か 生活困窮者支援と住宅・施設 「住まいの質を上げてはならない」 社会基盤としての住宅政策を
おわりに
あとがき
註
引用文献
索引
[著者]平山洋介(ひらやま ようすけ)
1958 年生まれ。神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授。専門は住宅政策・都市計画。おもな著書に『マイホームの彼方に―住宅政策の戦後史をどう読むか』(筑摩書房、2020 年)、『都市の条件―住まい、人生、社会持続』(NTT 出版、2011 年)、『不完全都市―神戸・ニューヨーク・ベルリン』(学芸出版社、2003 年)、Housing in Post-Growth Society: Japan on the Edge of Social Transition(共著,Routledge, 2018)、Housing and Social Transition in Japan(共編著,Routledge, 2007)など。日本建築学会賞(論文)、東京市政調査会藤田賞ほか受賞。