「社会人教授」の大学論

宮武久佳 著

  • はてなブックマークに追加
  • LINEでシェア
  • Google+でシェア
「社会人教授」の大学論

定価2,200円(本体2,000円)

発売日2020年8月25日

ISBN978-4-7917-7305-3

会社員が大学教授に!
実務家教員の目に映る大学のリアル
「教員を募集しています。大学の国際化推進できる人」。ある日偶然見つけた公募に応募し、長年勤めた通信社を辞めて大学教授に転身した著者を待ち受けていたのは、奇妙で不可思議な「異文化世界」だった! 「純粋培養」学者の屈託、世界大学ランキングへの拘泥、勉強しない学生と苛烈な就職活動、そして新型コロナウイルス感染症とオンライン授業……。日本の大学はどこへ向かうのか? 社会人教授だからこそできる、未来への希望の提言。

line2.gif

[目次]

はじめに

序 章 社会人が教授になる
社会人教授の誕生/通信社とは何か/ワールドカップの報道官に/文芸誌『すばる』で連載/大学教員になる三つの条件/大学教員は一八万人。多い? 少ない?/ウェブサイトの教員公募/会社と大学は違う/社会人と大学の人/「世界大学ランキング」の恐怖/香港大学の肩書/社会人教授とは

第1章 社会人が大学で学び直す
「美学」生の就職活動/役に立つ? 音楽の美学/UCLAに留学/原子力工学科の学生と/「大学だけで通用する人間」とは/ハーバード大学に暮らす/理想的な学び直し/学生寮に日本人記者/『ある愛の詩』のように/オンラインの同窓会/裁判官、弁護士、弁理士と学ぶ/コラム1〈ハーバード大学の秘密〉

第2章 大学という「業界」
カタカナ語の世界/「大学設置基準」というルールブック/カタカナ学部のビッグバン/「先生」と呼ばないで/コラム2〈生徒と学生〉

第3章 志願者を増やせ
定員割れが怖い/人口は減るのに大学は増えた/短大が大学に生まれ変わる/ことぶき退社とクリスマスケーキ/コラム3〈「分かりやすい授業」の行き先は?〉

第4章 「インスタ映え」の時代に
卒業写真、どこで撮る?/「選ぶ」から「選ばれる」時代へ/高校、予備校への営業も/AO入試とは/面接が得意な高校生/伝統を支えるのは内部進学者/コラム4〈暗記型の学習、どこが悪い?〉

第5章 多様化に直面する大学
「誰でも大学生」の時代が来た/苦悩する大学教授/高校生と大学生/勉強しない大学生/コロナ禍で「学力の差」?/リメディアル教育の重要性/「成績通知書」が保護者に届く/保護者会で情報交換/「保護者会ランキング」/どうする、学生の「心の病」/誰かに相談する力を/生涯賃金の格差が五五〇〇万円/コラム5〈授業中の野球帽〉

第6章 忖度する大学生
小学生より少ない勉強時間/やりたいことが分からない/おとなしい人の出番/成果が出ない/就活でコミュ力が重視される理由/内弁慶? ダメでしょ/社交的な学生の「不都合な真実」/「だから、こう思う」がない文章/学生も子供も忖度する/「考えない」習慣/「お父さん、会社で意見言っている?」/金田一秀穂さんの方法/コラム6〈教室の幽体離脱〉

第7章 若者に幻を
海外特派員とイルカ飼育係/欲しい「生きたモデル」/若者は幻を見る/「あんな風に英語を話したい」/年収三億円の人を見たことがあるか/林真理子さんと山中伸弥さん、そしてポルシェ/今の大学教育では学生は変えられない?/「保身と出世」のイエスマン/「学生=貧困」の時代?/親元を離れた学生は貧困層?/ブラックバイトから抜け出せない/遅れている「教育の無償化」/私立に依存する日本の高等教育/学生による無償化プロジェクト/コラム7〈『約束のネバーランド』を読み解く〉

第8章 大学と社会
大学入試、本当は単純な話/忖度する大学/同僚はどこにいる?/大学は閉鎖的?/学会こそ活動の場/外国の同僚に助けられる/ごまかせない「同僚の目」/「主張しない」が大学流?/「教員は社会的に存在意義を失っている」/「面接があるので欠席します」/大学教育を台無しに?/就活が学生を育てる?/大学の授業はつまらない?/若手教員の困惑と不安/大学の耐えられない軽さ/コラム8〈「ハケンの品格」と大学〉

第9章 勉強させない国
「ミスター円」の証言/米国人が成績にこだわるわけ/勉強させない構造/大学と勉学はセットではない/設置基準に違反?/一日「八時間学習」が基本/卒業生の七割以上が就職/企業が学生に求めるもの/「今のうちに遊べ」/やがて悲しき大学生/「大学のレベルを上げるのは企業」/濃密な日本の親子関係/富裕層は知っている/日本から外れると活躍する若者/コラム9〈アクティブ・ラーニングの罪〉

第10章 人工知能と人生一〇〇年
ライフシフトとは/寺島実郎さんの「ジェロントロジー宣言」/「勉強なんかしてどうするんだ」/やっぱり「勉強させない国」/現代版「読み書きそろばん」/NC工作機械のインパクト/和文タイピストがいた時代/労働生産性が「教育機会」を増やす/オンライン授業ができますか/「アイボ」の葬式をどう考える?/人生の八割の時間は「学び」へ/『チボー家の人々』と『ブラームス全集』/ロボットを操作する人が一番?/コラム10〈オーケストラと大学〉

終 章 みんなの大学を
《提言1》在学期間一〇年を標準に――学びながら働き、自己実現と社会貢献を
《提言2》一七歳以下でも大学入学を――研究志向の人はどんどん先に進め
《提言3》社会人学生の特別枠を増やせ――「今から大学生になりたい人」歓迎します
《提言4》社会人に小中学校の教員養成プログラムを――教育への職種転換の道を開く
《提言5》地元・地域のカルチャー拠点に――地域通貨で大学の活性化を
《提言6》本気で地域間の連携を――ネットワーク空間と移動空間で生き延びる

おわりに

参考文献
索引

line2.gif

[著者]宮武久佳(みやたけ・ひさよし)

1957年大阪市生まれ。共同通信社記者・デスク(1984-2009年)、横浜国立大学教授(国際戦略コーディネーターを兼務。2009-12年)を経て、現在、東京理科大学教授。専門は知的財産論(著作権)、コミュニケーション論、メディア・ジャーナリズム論。共同通信在職中、IOC長野冬季オリンピック通信社(NAONA)「英語、フランス語、日本語チーム」デスク(1997-98年)、2002年FIFAワールドカップ日本組織委員会チーフ報道官(報道部長。2000-02年)などを歴任。ハーバード大学ニーマン(ジャーナリズム)フェロー(Fellow, Nieman Foundation for Journalism at Harvard University. 1995-96年)。著書に『知的財産と創造性』(みすず書房)、『正しいコピペのすすめ――模倣、創造、著作権と私たち』(岩波書店)、『わたしたちの英語――地球市民のコミュニケーション力』(青土社)など。日本音楽著作権協会(JASRAC)理事。日本記者クラブ会員。