フーコーの風向き

-近代国家の系譜学-

重田園江 著

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フーコーの風向き

定価3,520円(本体3,200円)

発売日2020年8月25日

ISBN978-4-7917-7303-9

現代思想の風向計。
生命、健康、安全などを理由として立ち現れ、その相貌を自在に変えてきた近代国家。人びとの生や死に巧みに介入し、私たちの思考を知らぬ間に取り囲む権力の所作を、フーコーはいかに描き出したのか。知と権力、認識と実践、法と規律、リスク、戦争の政治言説、統治性、新自由主義。主要な諸概念を手がかりに、歴史や論理に深く分け入り、時代の逆風に立ち向かった思想家の軌跡を追う。

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序章 風向きを読む

I 権力分析の方法

第1章 ミシェル・フーコーにおける知と権力
はじめに
1 社会学とフーコー
2 フーコーと「知識社会学」
3 「知」から権力へ
おわりに

コラム1 認識と実践

第2章 「生のポリティクス」の新しい権利

はじめに
1 生政治――対象として「人口」
2 正常な社会と正常な個人
3 権力の法モデル批判
4 ノルムとしての法
5 生-権力の時代における死の問題
6 正常/異常の区別と自己決定
おわりに

コラム2 生権力

第3章 近代権力の複層性 ミシェル・フーコー『監獄の誕生』の歴史像
はじめに
1 身体刑から刑罰改革へ――法の再調整
2 規律権力――新たな秩序問題への応答
3 法的権力と規律権力――近代権力の複層性

コラム3 ベンサム問題

第4章 一九世紀の社会統制における「社会防衛」と「リスク」
はじめに
1 「殺人偏狭」
2 「変質」「社会防衛」「リスク」
3 統計学的秩序
おわりに

コラム4 福祉国家の危機


II 近代国家の系譜学

第5章 戦争としての政治 一九七六年講義
はじめに
1 「恐怖する人」の法言説
2 「戦う人」の歴史言説
3 「交換する人」の経済言説
4 商業、文明と政治
5 情念を飼いならす

コラム5 徳vs欲望

第6章 戦争・法・社会構造 古来の国制と『フランコガリア』をめぐって
はじめに
1 政治思想史の流行と七六年講義
2 古来の国制の「フランス的」序曲
3 コモンローと議会
4 封建制と庶民院
5 オトマンのフランス史
6 法の正統性から種族の戦争へ
7 ガリア、ローマ、フランク
8 ポーコックの歴史とフーコーの歴史

コラム6 政治思想史とフーコー

第7章 ミシェル・フーコーの統治性研究
はじめに
1 統治性研究の前史――『監獄の誕生』から『知への意志』へ
2 統治性研究の概要
3 国家理性とポリス
4 自由主義
5 法-規律-統治――近代権力の多層性
おわりに

コラム7 フーコ講義の資料

第8章 戦争から統治へ コレージュ・ド・フランス講義
はじめに
1 七六年講義――講義プランの推測
2 誰のための権力分析か
3 諸人種の戦争と闘争
4 戦争の言説からの離脱
5 生権力と自由主義の統治
6 自由主義における個と全体
7 自由主義が不問に付すもの

コラム8 七〇年代後半のフーコー


III 新自由主義の統治性

第9章 自由主義の統治能力 ミシェル・フーコーのオルド自由主義論
はじめに
1 統治性研究におけるオルド自由主義の位置づけ
2 統治性研究の視角――政治学批判
3 オルド自由主義概観
4 オルド派のラディカルさ――経済による国家の基礎づけ
5 計画化の時代
6 独占と大衆化
7 オルド派の経済政策
8 オルド派の社会政策
9 オルド派の法治国家論
10 オルド自由主義における政治
おわりに

第10章 「その後」のネオリベラリズム
はじめに
1 オルド自由主義と戦中戦後の連続説
2 民主主義の統治能力
3 アメリカ新自由主義
4 フーコー以降の新自由主義論
おわりに

コラム9 新自由主義とフーコー


あとがき

参考文献
初出一覧

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[著者] 重田園江(おもだ・そのえ)
1968年兵庫県西宮市生まれ。早稲田大学政治経済学部、日本開発銀行を経て、東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。現在、明治大学政治経済学部教授。専門は、現代思想・政治思想史。著書に、『フーコーの穴――統計学と統治の現在』(木鐸社)、『ミシェル・フーコー――近代を裏から読む』『社会契約論――ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ』(ちくま新書)、『連帯の哲学――フランス社会連帯主義』『統治の抗争史――フーコー講義1978-79』(勁草書房)、『隔たりと政治――統治と連帯の思想』(青土社)、訳書にイアン・ハッキング『偶然を飼いならす――統計学と第二次科学革命』(共訳、木鐸社)など。