靖国神社論

岩田重則 著

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靖国神社論

定価4,840円(本体4,400円)

発売日2020年8月1日

ISBN978-4-7917-7294-0

近現代がつくりだした鎮魂の起源と思想の源流をもとめて
神道でありながら、死者を祀るという鎮魂のありかたを誕生させた「靖国神社」。これまでにない祭祀のかたちはどこからきて、そして、どのように錬磨されていったのか。楠正成、水戸学、吉田松陰、奇兵隊、明治維新……。その起源をめぐる旅は、まさに近現代日本の動乱と、そこに生きた人びとの足跡をたどるものとなった。史料をとことんまで精査、圧倒的な現地調査から導き出される、あたらしい近現代日本精神史。

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[目次]

 

序――靖国神社解明の課題と部分史の方法

 

第一部 「七生報国」の誕生―甦る楠正成と別格官幣社第一号湊川神社

Ⅰ 「忠臣」楠正成とその復活

1 近現代「七生報国」の場面
2 「智仁勇」の「忠臣」楠正成
3 「忠臣」楠正成の復活
4 後期水戸学の尊王攘夷思想  

Ⅱ 吉田松陰と真木和泉による「忠臣」楠正成の反復
1 神となった「七生報国」 吉田松陰
2 真木和泉「祭楠公」から尊王攘夷派楠正成祭祀への拡大
3 神となった「勇々敷割腹之仕方」真木和泉と尊王攘夷派  

Ⅲ 明治政府の楠正成独占
1 薩摩藩・尾張藩の「楠公社」政治利用
2 別格官幣社第一号湊川神社

 

第二部 招魂場の誕生―原点としての長州藩諸隊招魂場「神霊」碑

Ⅳ 靖国神社の原点
1 靖国神社の公式見解
2 戦死者霊魂を招く招魂場
3 靖国神社の後発性  

Ⅴ 奇兵隊招魂場の誕生
1 尊王攘夷派長州藩奇兵隊の招魂場
2 対幕府武力防衛長州藩奇兵隊の招魂場
3 奇兵隊招魂場「神祭」と初代靖国神社宮司青山清

Ⅵ 奇兵隊招魂場の戦死者祭祀
1 第二次長州戦争と招魂場祭祀
2 奇兵隊の高杉晋作神葬祭  

 

第三部 靖国神社の誕生―戦死者の独占と招魂場の回収

Ⅶ 諸隊招魂場の明治維新
1 「官軍」奇兵隊の「神霊」
2 諸隊解体と招魂場の回収
3 諸隊招魂場の継続と陸軍墓地・海軍墓地への展開

Ⅷ 霊山官祭招魂社と東京招魂社
1 墓のある霊山官祭招魂社
2 東京招魂社から靖国神社への再措定

 

結――文化装置と政治装置としての靖国神社

 

参考文献/あとがき/索引

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[著者]岩田重則(いわた・しげのり)

1961年静岡県生まれ。専攻は歴史学/民俗学。1994年早稲田大学大学院文学研究科史学(日本史)専攻博士後期課程、課程修了退学。2006年博士(社会学。慶応義塾大学社会学研究科)。東京学芸大学教授を経て、現在、中央大学総合政策学部教授。著書に『ムラの若者・くにの若者――民俗と国民統合』(未來社、1996)、『戦死者霊魂のゆくえ――戦争と民俗』(吉川弘文館、2003)、『墓の民俗学』(吉川弘文館、2003)、『「お墓」の誕生――死者祭祀の民俗誌』(岩波新書、2006)、『〈いのち〉をめぐる近代史――堕胎から人工妊娠中絶へ』(吉川弘文館、2009)、『宮本常一――逸脱の民俗学者』(河出書房新社、2013)、『天皇墓の政治民俗史』(有志舎、2017)、『日本鎮魂考』(青土社、2018)、『火葬と両墓制の仏教民俗学』(2018、勉誠出版)など