物的中国論

-歴史と物質から見る「大国」-

羽根次郎 著

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物的中国論

定価本体2600円+税

発売日2020年7月22日

ISBN978-4-7917-7296-4

その思想や政治の根底をなす「モノ」とは何か。
中華思想、国家主席、独裁、愛国教育、情報統制、サイバースペース、一帯一路、新型コロナウイルス……。自由や民主主義の極北として描かれる、現代中国についての型にはまった認識からは、「大国」の根底をなす原理を理解することはできない。中国語で考え、歴史に誠実に向き合い、その物質的次元から考える、気鋭による新しい現代中国論。

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I 物質としての空間 人びとのあいだを埋めるもの

1 「科学」的「占い」に抗う大衆動員の予防について
はじめに  リスク管理という「占い」の「科学」
商品化される「健康」と「科学」政治  商品化に抗うコロナウイルス
「人民戦争」の歴史記憶とメタファー  
中国における大衆動員における予防の記憶  おわりに

2 チャイバースペース(Chyberspace)の出現とネット空間の「南北問題」 

   ――中国の「サイバー主義」論の背景にあるもの

はじめに――「沖縄IT憲章」と新自由主義  国連ミレニアム問題
世界情報社会サミット  チャイバースペースの萌芽  
スノーデン事件  まとめ

3 尖閣問題に内在する法理的矛盾 ――「固有の領土」論の克服のために

はじめに  「固有の領土」の言説と脱歴史性  伝統中国における版図観
「日本人」と「琉球人」――台湾出兵における官人の対応
「分島改約」という主権の放棄  資源確保のための「分島」撤回
尖閣諸島の領有化  おわりに

4 「中国」という空間の定位と「天下」観念について
長城の意義をどう解釈するのか  「天下」のイメージと植民地主義
清朝の「天下」国家化について
一八世紀欧州における「タタール」の問題  まとめ

5 「中原」への回帰と乖離 ――中国社会の混淆性の問題について

はじめに  古代世界における「中原」  中原世界のクレオール化
おわりに――「漢民族」をどう考えるか

 

II 物質としての権力 支配の末端にあるもの

6 反帝・反植民地そして軍国主義としての「保釣運動」

7 中国において“国家主席”とは何か

「党の国家への指導」の下の国家主席  「三位一体」制における国家主席の地位
中国における権力の源泉  「三位一体」制の恒久化

8 現代中国を見つめる歴史的視座
   ――社会統合の位相より見る重慶騒動と指導者交代

重慶市と三峡ダムとの関係  西部開発と経緯
西部開発と統治の正統性  二〇〇〇年代の重慶をめぐる条件
人口流動性を強める都市における社会統合  「王」と「法」

9 「胡温政権」から「習李政権」への移行に何を見るべきか
習近平の党・軍の掌握  「胡温政権」の一〇年とは
指導者交代について  「胡温政権」における投機ブーム
国内のローカリティ喪失と「一帯一路」

 

III 物質としての線 海と陸の地政学

10 「ウイグル問題」をめぐるアイデンティティ・ポリティクス再考

   ――「陸」の世界の少数民族と貧困
はじめに  「新疆はウイグルの地」という言説  騒擾の偏在性
貧困のなかのウイグル経済  人口問題と農民工
ウイグル族農民工を包囲するアイデンティティ・ポリティクス
もう一つの視座――中央アジア五カ国概観  まとめにかえて

11 朝鮮半島の「南北対立」の二重奏 ――北が南で南が北で
はじめに  「離島化」の経緯と京義線という「橋」
七〇年代北朝鮮の二つの「顔」
北朝鮮の自立路線強化と日本のユーラシア外交  金大中「太陽政策」再考
まとめにかえて――今、何をどう考えるべきか

12 陸の位相における「ドイツ」と「中国」 ――「一帯一路」構想の地政学的意義の検討

無力化する日本と「痛みのナショナリズム」
シー・パワーにとっての勝敗  「一帯一路」の海外拠点について
「陸」の帝国の敗北?  「東方帝国」からEUへ  おわりに

13 「一帯一路」構想の経緯について
はじめに  夢のユーラシア横断鉄道
江沢民時代の中央アジアとエネルギー外交  西部大開発と隣国外交
「テロとの戦い」と「パイプライン外交」  「走出去」政策
南シナ海問題と「マラッカ・ジレンマ」  近年の動向  おわりに

14 「一帯一路」構想を考察する意義と歴史の回帰について
「援蒋」ルート  「北虜南倭」  ソ連と日本  
三線建設  「保守派」とは何だったのか
「海」と「陸」の格差  まとめにかえて

 

IV 物質としてのエクリチュール 日本/日本語で語るということ

15 現代中国語の文語にまつわる雑感

16 二つの「国学」から見えてくるもの
中国国学について  排満主義と近代的自我
「万葉仮名」成立の前史と「から」の回帰  
「世界を網羅する欲望」と「声=身体」現代中国の理解の可能性

17 明治における「近代」と「中国」

   ――吉野作造のルジャンドル忘却に隠された意味について
はじめに  厦門領事時代のルジャンドル
ルジャンドルの来日と派兵請願運動  「中国への言葉」
「話し相手」の転換  むすびにかえて

18 「心」と「こゝろ」

おわりに

初出一覧

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[著者]羽根次郎(はね・じろう)
1974年神奈川県横浜市生まれ。神奈川県立希望ケ丘高校、一橋大学社会学部を卒業後、同大学大学院言語社会研究科博士課程修了。天津外国語大学外国人教員、中国社会科学院近代史研究所ポストドクター研究員、愛知大学現代中国学部助教を経て、現在は明治大学政治経済学部准教授。これまで発表してきた論考は東西交流史、ヨーロッパ東洋学、清末台湾史、中国現代史、日中関係史、現代中国論など多岐にわたる。共訳書に、汪暉『世界史のなかの中国――文革・琉球・チベット』、銭理群『毛沢東と中国――ある知識人による中華人民共和国史』(上・下)(以上、青土社)、羅永生『誰も知らない 香港現代思想史』(共和国)など。