定価1,980円(本体1,800円)
発売日2020年7月22日
ISBN978-4-7917-7290-2
車椅子の横に立つ人は、あなたでもある
なぜ車椅子の横に立つ人を、介助者と決めつけてしまうのか。既存の言葉からはみ出た日々をすくい取らない想像力は、生きにくさを生む。言葉が見つからないこと、言葉がまだないことこそ掘り起こさなくては、その正体はつかめない。消毒された詩原稿、病室で思いを受け止めたスケッチブック、路上にくりだした障害者――。自らの生きにくさを形にした人びとをめぐって、社会を問い返す。
[目次]
はじめに
1 言葉にできない生きにくさの前で
車椅子の横に立つ人
生と死の「情念的語り」
「わかりやすさ」への苛立ち
2 自覚なき悪意に息をうばわれる前に
生命と尊厳のために怒れるか
「殺意」の底を見据えること
憲法の断層――実存に響く言葉を求めて
3 都合のいい言葉を押し付けられる前に
「がんばる健気な障害者」はどこから来たのか?――日本文学の中の障害者たち
「一階六号室」の修羅場――『さようならCP』が映したもの
4 生きのびるための表現
情念の残り火――「心病む人」のアートを「観る/観せる」こと
名もなき言葉の断片たち――「〈こと〉としての文学」を読むために
アートへの〈希待〉――「丘の上病院」という試み
「自己表現障害者」たち
生き延びるための「障害」――「できないこと」を許さない社会
「存在しないもの」にされた人の言葉
あとがき
初出一覧
[著者]荒井裕樹(あらい・ゆうき)
1980年東京都生まれ。二松学舎大学文学部准教授。専門は障害者文化論、日本近現代文学。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。著書に『隔離の文学――ハンセン病療養所の自己表現史』(書肆アルス)、『障害と文学――「しののめ」から「青い芝の会」へ』(現代書館)、『生きていく絵――アートが人を〈癒す〉とき』(亜紀書房)、『障害者差別を問いなおす』(筑摩書房)などがある。