「地方」と「努力」の現代史

-アイドルホースと戦後日本-

石岡学 著

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「地方」と「努力」の現代史

定価2,640円(本体2,400円)

発売日2020年6月24日

ISBN978-4-7917-7289-6

「昔は頑張れば努力が報われた……」と思うのはなぜ?
戦後日本に埋め込まれた不易のノスタルジアの “からくり” を描破する!
地方出身者が中央に出て、中央出身のエリートたちをばったばったとなぎ倒す——そのような「努力」と「立身出世」の神話は、どのように構築され、作用してきたのか? その実相に “からめ手” から迫る。戦後、〈アイドル〉に祭り上げられたユニークな3頭の競走馬をめぐる言説の変容を追い、日本社会に潜む「集合意識」の謎に迫る。

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[目次]

序 章 「地方出身者の夢を乗せて走った馬」という神話
「アイドルホース」という存在
定説としての立身出世ストーリー
「集合的記憶」とは何か
異色(?)のアイドルホース「ハルウララ」
「地方=田舎」というイメージ
ノスタルジアと現在への不満
本書の見取り図

 

第Ⅰ部 昭和時代――挫折する「夢」のゆくえ

第一章 「地方競馬」とは何なのか――公営ギャンブルが映し出す戦後社会
1 「地方競馬」とは何か
2 公営ギャンブルの社会的受容
3 公営ギャンブル批判の三パターン
4 「公営」であるがゆえの困難
5 戦後日本と公営ギャンブル

第二章 高度成長の終焉と夢のない時代――「哀れな馬」ハイセイコー
1 「怪物」の不敗神話
2 日本ダービーでの「まさか」の敗戦
3 ハイセイコーと「大衆」
4 「哀れな馬」「かわいそうな馬」とみられていたハイセイコー
5 「地方出身者の夢を乗せて走った」という神話

第三章 バブルの狂騒と翻弄――「酷使される馬」オグリキャップ
1 オグリキャップとはどんな馬だったか
2 「酷使される馬」としてのオグリキャップ
3 「オグリギャル」の表象
4 ハイセイコーとオグリキャップの対比をめぐる「語り」
5 「オグリキャップは地方出身者の夢を乗せて走った」という物語の定着

 

第Ⅱ部 平成時代――「努力」の自己目的化

第四章 「古き良き日本の象徴」としての地方競馬――一九九〇年代以降の公営ギャンブル冬の時代
1 「地方競馬出身」が前景化していったことの意味
2 一九九〇年代以降の「公営ギャンブルの危機」
3 地方競馬の廃止はなぜ大ごとになるのか
4 公営ギャンブルの文化的価値への注目

第五章 過去化される「地方」――「勝てない馬」ハルウララ
1 ハルウララブームの勃興、拡大、そして終息
2 「勝てない馬」への毀誉褒貶
3 「勝負」という評価軸への異議申し立て
4 「地方」と「過去」の重なり
5 自己完結したハルウララの「物語」

 

終 章 地方・努力・アイドル
「地方」とノスタルジア
立身出世主義・努力主義の虚構性
立身出世が幻想だからこそ、競走馬は「アイドル」となった
「地方競馬出身のアイドルホース」は再来するか

 

あとがき
参考文献

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[著者] 石岡学(いしおか・まなぶ)

1977年福島県生まれ。兵庫県出身。京都大学総合人間学部卒業、同大学院人間・環境学研究科博士課程修了。同志社大学文化情報学部助教などを経て、現在、京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。専門は教育の歴史社会学。近代日本を対象に、入試や就職といった教育と選抜をめぐる現象や、子ども・若者イメージの社会的構築などを研究している。『「教育」としての職業指導の成立——戦前日本の学校と移行問題』(勁草書房、2011年)で、第5回日本教育社会学会奨励賞(著書の部)を受賞。好きな馬のタイプは、気難しくて能力をもてあます馬(スイープトウショウ、オルフェーヴルなど)と、強いのにいまいち華のない馬(ダイワスカーレット、ジェンティルドンナなど)。