アメリカン・ミュージカルとその時代

日比野啓 著

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アメリカン・ミュージカルとその時代

定価2,420円(本体2,200円)

発売日2020年3月25日

ISBN978-4-7917-7261-2

ミュージカルはわたしたちに何を教えてくれるのか
『気儘時代』『雨に唄えば』『オクラホマ!』『マイ・フェア・レディ』『ウェストサイド物語』……黄金期のアメリカン・ミュージカルを映画・舞台の両方からつぶさに読み解き、そこにあらわされている社会と時代の意識を浮かび上がらせる。アメリカ文化史の良書にして、画期的なミュージカル分析。

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[目次]

序 章 アメリカン・ミュージカルとは何だったのか
    1 はじめに
    2 アメリカン・ミュージカルとは何だったか
    3 統合ミュージカルとは何だったか

第一部 映画ミュージカル
第一章 現実に立ち向かえ

    ――『気儘時代』(一九三八)における精神分析
    1 はじめに
    2 『気儘時代』における俗流フロイト主義
    3 『気儘時代』とスクリューボール・コメディ
    4 「現実に立ち向かえ」という呪文

第二章 起源への回帰と使い回し
    ――『雨に唄えば』(一九五二)における寓話的リアリティ
    1 はじめに
    2 捏造された「起源」
    3 一からのやり直しではなく、使い回し

第三章 暴力は統御可能である
    ――『掠奪された七人の花嫁』における冷戦的思考
    1 はじめに
    2 冷戦における政治的現実主義
    3 毀損する「男らしさ」とリアリズム
    4 伝説の「再神話化」が意味するもの
    5 おわりに

第二部 舞台から映画へ
第四章 Is Oklahoma! OK?

    ――『オクラホマ!』(一九四三/一九五五)における生政治
    1 はじめに
    2 消去された対立軸――『ライラックは緑に萌え』から舞台版『オクラホマ!』へ
    3 映画版『オクラホマ!』における窃視の欲望と生政治の発動
    4 個人の欲望を監視し、制御する共同体

第五章 象徴交換と死
    ――『南太平洋』(一九四九)における恋愛の不可能性
    1 はじめに
    2 「交換」の失敗
    3 象徴交換の結果としての死

第六章 報われない「労働」
    ――『マイ・フェア・レディ』における二種類の感情表現様式の切り替え
    1 はじめに――なぜ『マイ・フェア・レディ』は成功したのか
    2 「見せ消ち」にされる労働表象
    3 本当の気持ちを歌わないナンバー
    4 強い情動と弱い情動
    5 スイッチの切り替え――感情を持て余すのはなぜか

第七章 なぜプエルトリコの女たちは「アメリカにいたい」のか
    ――『ウェストサイド物語』(一九五七)における人種・民族の表象
    1 はじめに
    2 『ウェストサイド物語』における人種・民族問題の扱い
    3 抹消されるユダヤ性
    4 プエルトリコやその人々は正しく表象されているか
    5 一九五七年から一九六一年にかけてプエルトリコでは何が起きていたのか

あとがき
初出一覧
索引

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[著者] 日比野啓(ひびの・けい)

1967年福岡生まれ。成蹊大学文学部教授。ニューヨーク市立大学大学院演劇学科単位取得修了。東京大学大学院総合文化研究科助手、成蹊大学文学部講師、同准教授を経て現職。専門はアメリカ演劇・日本近現代演劇を中心とする演劇史・演劇批評。本書が初の単著となる。主な編著に『Facets of English――英語英米文学研究の現在』(風間書房、2019年)、『戦後ミュージカルの展開』(森話社、2017年)、『アメリカン・レイバー――合衆国における労働の文化表象』(彩流社、2017年)。主な共著に『文化現象としての恋愛とイデオロギー』(風間書房、2017年)、『演劇のジャポニスム』(森話社、2017年)。主な訳書にマイク・デイヴィス『要塞都市LA 増補新板』(青土社、2008年)。