定価2,640円(本体2,400円)
発売日2020年1月24日
ISBN978-4-7917-7241-4
手に入れ、書き込み、送り、受けとり、見つめ、所有する。
行き来する身ぶりの近代史。近代の視覚技術を集大成したメディアとしての絵はがき。その誕生から、旅行と蒐集、消印と投函、ピンポンとの意外な関係、爆発的日本ブームまで。手彩色、透かし絵、3Dなど稀少品の数々を紹介しながら世界の絵はがき史をふりかえり、メディアと身体との関係に新たな光を投げかける。新たに「キルヒナーの女たち」を増補した、待望の新版。
[目次]
漏らすメディア
祈りと封じ はがき――折りと封じのない手紙の誕生 読まずに読む 絵はがきの登場
日本絵はがきの始まり 日露戦争と絵はがきの流行 絵はがき屋という商売 肉筆と印刷のあいだ
封書の温かさ・はがきの冷たさ
絵はがきの中へ
温泉と海 「ここにいます」 絵はがきの中の卑小なわたし スケール・エラー
旅する絵はがき
消印を求めて タンス 絵はがきを探して
アルプスからの挨拶
ルソーとアルプス 手紙の距離 ジュリというアルプス ソシュールのアルプス空間
世界の国からこんにちは 山を眺める山 旅との距離
あらかじめ失われる旅
ロンドンの登頂 パリの登頂 記念のとまどい コレクターの出現 感傷なき郵便 旅の先取り
わたしのいない場所
宛先人の不在 筆談の視線 書くという贈与
透かしは黄昏れる
透かし絵はがき 透かし絵はがきの種類 光と影の劇場 都市の透かし絵
セルロイドエイジ
セルロイド絵はがき セルロイドの誕生 セルロイド感覚 ピンポンは廃(すた)り絵はがきは流行る
絵はがきの招待状 サーブのように絵はがきを 長すぎたサーブ
一枚の中の二枚
ステレオグラムの登場と立体写真 フリスの風景写真 ステレオ・リテラシーの向上
見世物としての訪問販売 立体写真絵はがきの登場 日本でも製造されたステレオカード
カードとディスプレイ
個人の展示空間 展示用品の進化
ミカドとゲイシャの国
日本人コスプレ感覚 扇のはためき 日露戦争と絵はがきブーム おとぎの国の青春
カール・ルイスの手紙
カール・ルイス発ロンドン行き カール・ルイスと初日カバー カール・ルイスの絵はがき時代
初日カバー時代
シカゴみやげ
万博からの挨拶 アメリカにおける絵はがきの始まり シカゴ博の日本館 その後の鳳凰殿
洪水と余白
街路を写す水害絵はがき 写真絵はがきの画質 水害の進行と絵はがきの速報性 ことばを待つ空白
大洪水と「修善寺の大患」 空白に書き継ぐ
色彩と痕跡
写真絵はがきの歴史 彩色という痕跡 彩色をたどって
画鋲の穴
記念スタンプへの熱狂 画鋲のあと 絵はがきの束 絵はがき帖 痕跡と行為
増補 キルヒナーの女たち
あとがき/ 増補新版へのあとがき
[著者] 細馬宏通(ほそま・ひろみち)
1960年生まれ。京都大学大学院理学研究科博士課程修了(動物学)。現在、早稲田大学文学学術院教授。ことばと身体動作の時間構造、視聴覚メディア史を研究している。著書に、『浅草十二階』『二つの「この世界の片隅に」』(青土社)、『うたのしくみ』(ぴあ)、『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか』(新潮社)、『介護するからだ』(医学書院)などがある。