定価3,520円(本体3,200円)
発売日2020年1月25日
ISBN978-4-7917-7237-7
古事記、日本書紀、風土記から解き明かされる古代世界
本当に「ヤマト」は唯一の中心だったのか、出雲とはいったい何なのか、どのようにして歴史は描かれるのか。のこされたテクストを丁寧に読み解いたとき、これまでのイメージをくつがえす世界があらわれる。注目の気鋭による画期的著作。
[目次]
序章
第Ⅰ部 出雲世界――出雲国風土記を中心に
第一章 祭祀者としての出雲国造とその〈神話作り〉
1 出雲国風土記の成立および特徴
2 出雲国造はどのような存在だったのか
3 意宇郡の由来――国引き神話
4 巨人神のオミヅヌの命
5 「おゑ」とは何を意味するのか
第二章 杵築大社の成立――オホナムチをいつき祀る者たち
1 山が神体のオホナムチ
2 出雲西部の祭主、キヒサカミタカヒコ
3 出雲西部の祭主から出雲東部の祭主へ
4 アヂスキタカヒコにみる国造
5 杵築大社の成立
6 楯縫郡――カムムスヒと「天」
第三章 出雲国造の宇宙観――「天の下所造らしし大神」
1 天地開闢神としてのオホナムチ
2 いくつもの始原
3 「天の下」の創造神、オホナムチ
4 母理郷の条の解釈
5 出雲の国魂である国造
第四章 天皇と出雲の神々――「詔」・「勅」の分析から
1 出雲風土記における天皇
2 「詔」と「勅」について
3 和語の「のり・のる」について
4 出雲風土記にける「詔」
第五章 古事記と日本書紀――ヤマトからみたオホナムチと出雲
第一節 古事記にみるオホクニヌシ
1 国造り神としてのオホクニヌシ
2 「さやぐ」世界と荒ぶる神
3 葦原中国の言向け
4 オホクニヌシの国譲り
第二節 日本書紀にみるオホナムチ
第Ⅱ部 古事記を読み直す
第一章 荒ぶる異界と対面する――神武天皇にみる熊野とヤマト
第一節 熊野の村
1 イハレビコ、東へと向かう
2 タカクラジとその夢
3 タカクラにおける夢
4 熊野というトポス
第二節 「サヰ河」の音――神武天皇の結婚歌
1 「佐韋河」の表記とそれに関する歌の解釈
2 「狭井河」の表記とそれに関する歌の解釈
3 「サヰ河」に対する注文の分析
4 神武とオホモノヌシ
第三節 日本書紀における神武天皇
1 ヤマトを征伐する神武
2 神武による結婚
第二章 ヤマトの堺を決めていく――崇神天皇にみる国作りと神祭り
1 オホモノヌシの祭祀の制度化
2 日本書紀におけるオホモノヌシ
第三章 出雲を訪問する御子――垂神天皇にみる出雲大神の祭祀
1 出雲大神の祟り
2 ホムチワケによる出雲訪問
3 ヤマトと出雲
4 ヒナガヒメとの結婚
5 日本書紀における出雲
第四章 ヤマトタケル――景行天皇にみる〈建く荒き情〉の意義
1 ミコトを誤認するヤマトタケル
2 古事記におけるミコト
3 憑依する〈天皇霊〉
4 景行とタケル
5 日本書紀におけるヤマトタケル
第五章 気比の大神を祭る――応神天皇にみる新王朝の誕生
1 神託と仲哀天皇の死
2 神と名を変えるオホトモワケ
3 日本書紀における応神と気比の大神
終章
あとがき
注
参考文献一覧
Summary
索引
[著者] アンダソヴァ・マラル(Andassova Maral)
一九八二年、カザフスタン生まれ。二〇〇三年に名古屋大学日本語・日本文化研修コースを修了し、二〇〇四年にカザフ国際関係外国語大学(Kazakh University of International Relations and World Languages)を卒業。二〇一三年に佛教大学大学院文学研究科にて博士課程を修了、博士(文学)学位を取得。二〇一六年に国際日本文化研究センター外国人研究員として採択され、後に日本学術振興会外国人研究員として活躍。学習院大学非常勤講師、上智大学非常勤講師を経て現在はカザフ国際関係外国語大学講師、早稲田大学人間総合研究センター招聘研究員、国際日本文化研究センター海外研究員。古代神話における出雲とヤマトについて独自の視点から一貫して考究している。著書に『古事記 変貌する世界』(ミネルヴァ書房、二〇一四)がある。